Googleの折りたたみスマホ「Pixel 10 Pro Fold」の残念なポイントとは?
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Googleの「Pixel 10 Pro Fold」は、閉じると6.4型、広げると8型の画面になる、フォルダブルのAndroidスマートフォンだ。Pixelファミリの1モデルとしてすっかり定着したこの「Fold」シリーズ、1年ぶりのモデルチェンジとなる本製品は、どのような点が進化したのだろうか。メーカーから機材を借用したので、電子書籍ユースを中心に、試用レポートをお届けする。
なお一般的な用途におけるレビューについては、すでに平澤氏による記事が公開されているので、そちらを参照いただきたい。
まずは従来モデルであるPixel 9 Pro Foldとの比較から。なお本稿は電子書籍ユースが前提であることから、サイズなどは原則として画面を開いた状態の値を用いている。
この表からも分かるように、従来モデルとはマイナーチェンジといっていい違いしかない。筐体サイズは最大で0.2mm差で、重量もわずか1g差。メタルフレームだった外装をアルミニウム製フレームに置き換えたことで生じた違いがそのまま反映された結果、と見てよさそうだ。
細かい違いとしては、IPX8だった防水防塵機能がIP68へと進化したほか、バッテリ容量が1割ほどアップし、従来は24時間以上とされていた駆動時間は30時間以上と、2割以上伸びた形になっている。
この表にない違いとしては、最大輝度が1,600cd/平方mから1,800cd/平方m、さらにピーク輝度が2,700cd/平方mから3,000cd/平方mへと上がっていることが挙げられる。またワイヤレス充電は新たにQi2規格へと対応し、マグネットによる充電器への吸着が可能になっている。
実売価格は26万7,500円からと、従来よりも1万円アップしているが、SoCがTensor G4からG5へと進化している半面、メモリおよびストレージの容量は変わっていないことを考慮すると、プラス1万円というのは妥当な値上げ幅といった印象だ。直近1年の物価の値上がりからすると、むしろ良心的な部類に入るかもしれない。
セットアップの手順は、従来までと大きく変わっておらず、特に気になるフローはない。プリインストールアプリについても、NotebookLMなどの新興アプリが新たに追加されているものの、基本的には同一だ。なお電子書籍系のアプリはインストールされていない。
さて筆者は同じPixel 10シリーズのフラグシップモデルである6.9型の「Pixel 10 Pro XL」を日常で使用しているが、本製品はそれと比べて画面の広さこそインパクトがあるものの、天地サイズはむしろ窮屈に感じる。昨今の大画面スマホを使っている人は、皆近い感想を抱くのではないだろうか。
一方で、薄さと軽さは特筆ものだ。話題のApple「iPhone Air(厚み5.64mm)」と比べても、画面を広げた状態での本製品の薄さ(5.2mm)は際立っている。前述の「Pixel 10 Pro XL」をはじめとする同社のストレートタイプは、厚さはまるでお構いなしの設計なので、本製品の薄さは余計に際立つ。いずれそちらにフィードバックされることを願わずにはいられない。
また重量についても258gと、8型クラスのタブレットとして見た時には非常に軽量。スマホとしてはむしろ重量級なのだが、広げた状態では、薄さとの相乗効果で非常に軽く感じるのが面白い。ただしフォルダブルスマホとしては、本製品より一足先に発売された「Galaxy Z Fold7」が厚みわずか4.2mm、重量215gとはるか先を行っており、インパクトは薄れてしまっているのは残念なところだ。
これ以外では、「Pixel 10 Pro XL」と違って電源ボタンと一体化した指紋認証については、使い勝手も良好でストレスがない。また黎明期のフォルダブルスマホと違って、閉じた状態では隙間もない。本体自体が滑りやすいという問題はあるものの、開閉もスムーズで、全体的に完成度は高い。
ベンチマークは、Google Octane 2.0で測定した限り、従来モデルにあたる「Pixel 9 Pro Fold」に比べて約40.7%のアップ。SoCがアップグレードされているのでスコアが伸びること自体は妥当だが、思いのほか差があって驚かされる。
では電子書籍ユースについて見ていこう。サンプルには、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」を使用している。
解像度は373ppiと従来モデルと同等で、同時発表のPixel 10 Pro XL(486ppi)よりは控えめだが、電子書籍を表示するには十分過ぎる解像度だ。同じ8型クラスのタブレットの代表格であるiPad miniは326ppiなので、それよりも上ということになる。
画面は中央に折れ目こそあるものの、左右がつながっていることから、見開きのページが真ん中で分割されることがなく、テキストの行が折り目の部分にかかってもきちんと読める。また1行あたりの文字数が多すぎることもなく、適度な長さに感じられる。文庫本を読んでいる感覚に近く、テキストコンテンツとの相性は良好といっていいだろう。
コミックについてはどうだろうか。こうしたフォルダブルスマホに期待されるのは、やはり見開き表示だろう。本製品は開いた状態では横長ではなく微妙に縦長なのだが、従来モデルでは設定画面の中に「アスペクト比(試験運用版)」なる項目があり、アプリ側の最適化が不完全であっても、強制的に向きを固定し、見開きで表示することが可能だった。
この「アスペクト比」という項目、本製品では試験運用版の但し書きが取れて正式版へと進化しているのだが、困ったことにKindleアプリについては以前と挙動が異なっており、「アプリのデフォルト」「全画面表示」「3:2」「画面半分のみ表示」という4つの選択肢のいずれを選んでも見開き表示にならない。以前は「全画面表示」を選ぶと見開き表示になっていたのが、選択肢自体が失われてしまった格好だ。
これが本製品側の問題なのか、Kindleアプリ側の問題なのかは分からないが、そのためKindleアプリで見開き表示を行なうには、本体を90度回転させて持つ必要がある。この状態では本製品のたたみ方とページのノドの向きが異なっているため、軽く曲げた状態で表示すると違和感が激しい。また音量ボタンを使ったページめくりは難しくなる。
この「見開き表示では90度回転」をどう評価するかはユーザー次第だが、本製品を購入したついでにたまたま電子書籍アプリを試すといったライトな使い方ではなく、電子書籍を主目的にフォルダブルである本製品を選んだという熱の入ったユーザーにとっては、見開き表示は必須条件と考えられるので、90度回転させるという原始的な方法でしか対処できないのは、正直期待外れといえる。
もっともその一方で、Kindle以外のアプリについては、筆者が今回試した中では同様の問題があるアプリは見つからなかった。具体名を挙げておくと、ebookjapan、DMMブックス、ブックライブ、楽天Kobo、BOOK☆WALKER、Kinoppyと試したが、上下の余白が黒帯か否かといった違いこそあれ、いずれも見開き表示は可能だった。
さらにブラウザで表示可能なコミック配信サイトでも、少年ジャンプ+、ヤンマガWeb、となりのヤングジャンプ、コミックDAYS、くらげバンチ、カドコミ、ヤングアニマルWeb、サンデーうぇぶりと(専用アプリではなくChrome上ではあるが)ざっとチェックしたが、いずれも本体の向きを維持したままでの見開き表示を実現している。
つまりKindleだけがおかしいわけで、これはKindleを常用しているユーザーにとっては少々つらい。もしかすると何らかのユーティリティや裏技を用いれば見開き表示に変更できるのかもしれないが、今回の試用期間のうちには発見できなかった。Kindleユーザーにとっては、こうした何らかの対策が見つかるまでは、基本「待ち」でよいかもしれない、というのが筆者の感想だ。
以上のように、全体的な使い勝手はまったく悪くないのだが、通常の向きのままコミックの見開き表示ができないアプリの中に、よりによってKindleが含まれている(正確には筆者が確認できたのはKindleだけ)のが困りものだ。しかも以前から非対応だったのではなく、少なくとも従来モデルの発売時点では可能だったのができなくなっているのだから始末に悪い。ましてや20万円半ばという高額な品である。
ただし、それ以外の電子書籍アプリを使うのであれば、ここで取り上げているような問題はないわけで、電子書籍ユースとしても十分におすすめできる。最近は単ページ表示を意識したコミックも増えているので、ふだんはそれらを単ページ表示で読み、必要な場合のみ見開き表示に切り替えるといった使い分けもできる。それだけにやはり、シェアの高いKindleでそうした使い分けができないのは大きなデメリットだ。
一方で本製品はQi2に対応し、MagSafeと互換性のあるスマホバンドを取り付け可能になるなど、従来になかったメリットもある。長時間の読書にあたってはこうしたアクセサリが使えることは大きなプラスで、こうした付加価値も含め、電子書籍ユースには極めて適した製品であることは間違いない。これらをまとめると、現時点では「Kindleを使わないユーザーにはおすすめできる製品」という評価になりそうだ。