「夫婦同日V」へあと1打…。小祝さくら、夫・桂川有人とそれぞれの18番で魅せた劇的パットと完全復活【国内女子ツアー】 (1/2)
愛知県で開催された「バンテリン東海クラシック」で、夫の桂川有人が通算12アンダーで逆転優勝を飾った11月1日。時を同じくして、埼玉県の武蔵丘GCで行われた「樋口久子 三菱電機レディス」では、妻の小祝さくらが最終日最終組で優勝争いを演じていた。日本ゴルフ界が固唾をのんで見守った歴史的な「夫婦同日優勝」の快挙。小祝は最終日も「69」と伸ばしたものの、通算14アンダーの単独2位。偉業達成にはあと1打及ばなかった。だが、3日間すべて60台(65-68-69)を揃えたのは、優勝した佐久間朱莉と小祝のわずか2人のみ。今季試行錯誤を続けてきた小祝にとって、この単独2位は2026年シーズンの自己最高順位(ベストフィニッシュ)であり、完全復活を強烈に印象づける価値ある戦いとなった。
優勝には一打届かなかったが、完全復活を予感させる活躍を見せた小祝さくら
首位を追いかける展開となった最終日。中盤以降は「ショットのミスも多くて、実力が足りなかっただけ」と振り返る通り、思うようにスコアを伸ばしきれない我慢の時間帯が続いた。
それでも、ホールアウトした小祝の表情に悲壮感はない。
「とにかく悔しい気持ちしかないですけど、最後まで全力でプレーできたので悔いはないかなと思います」
結果に対する無念さを率直に認めつつも、プロとして全力を出し切った清々しいメンタリティがそこにあった。
3日間連続で18番バーディー――佐久間を追い詰めた執念の一打
その「悔いなき戦い」を象徴するのが、最終18番(パー5)のマネジメントだ。
追いつくためにはバーディが絶対条件の最終ホール。しかし、小祝は状況を極めて冷静に見極めていた。
「本当は2オンを狙ってグリーン周りからチャンスを作りたかったですが、アゲンストだったので3打目勝負に切り替えました」
風を的確に計算し、無謀なギャンブルを避けて確実なルートを選択。そして迎えたグリーン上、ピン左約3.5メートルのバーディーパットが残った。
「本当に微妙なラインだったのでキャディさんとも迷いましたが、決め打ちで打とうと決めました」
迷いを断ち切って放たれたボールは、見事にカップへと吸い込まれた。
「それが結果的に入ってくれてすごく嬉しかったです」
見事なマネジメントで最終18番をバーディで締めた
初日、2日目に続き、3日間すべて18番で奪った意地のバーディ。先にパットをねじ込んで通算14アンダーとし、土壇場で首位の佐久間に並びかけた。後ろで見ていた佐久間が「シンプルにさすがだな、上手だなと思った。絶対に入れ返して優勝を決めるんだと集中した」と振り返った通り、夫婦同日Vの夢を背負い、大会覇者を最後の1打まで極限に追い詰めた執念の一撃だった。
自立したトッププロとして――それぞれの18番で放った輝き
「夫婦同日優勝」の快挙こそ持ち越されたものの、遠く離れた愛知と埼玉の地で、同じ日の最終18番でそれぞれが風と傾斜を読み切り、自らを信じて劇的なバーディパットを沈めてみせた。
「ここからさらに優勝を目指して戦える状態に持っていけるよう頑張りたいです」
小祝さくらはすでに前を向いている。互いに自立したトッププロとして、それぞれの戦場で重圧と真っ向から向き合う2人の姿は、感情論を抜きにしたプロゴルファーとしての確かな強さと誇りに満ちている。
写真/有原裕晶
桂川の劇的バーディパットはこちら
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日本ゴルフツアー機構(JGTO)選手会主催大会として開催された「2026フォーティネットプレーヤーズカップ」(千葉・成田ヒルズカントリークラブ)。今年で2回目の本大会をスポンサードするフォーティネットジャパン合同会社の社長執行役員、与沢和紀氏に話を聞いた。
企業カラーの赤いトロフィー。試合前には日本法人である与沢社長の手元にあったが、表彰式ではアジア太平洋地域(APAC)担当シニアバイスプレジデントLuca Simonelli(ルカ・シモネッリ)氏から勝者に手渡された(写真/岩本芳弘)
――そもそもゴルフトーナメントをスポンサードされた理由はどこにあるのでしょうか。
与沢氏:弊社の日本におけるプレゼンスを向上するということが最大の目的です。いろいろと営業活動で回っているなかで、「フォーティネット」という会社名を知らない経営幹部の方々も結構いらっしゃると感じていました。まずは社名を覚えていただきたい、そして次に、何をやっている会社かを知っていただければと思いました。トーナメントを支援することが、取引先の会社に訪問したときの会話につながる“トリガー”になるであろうと考えています。
ゴルフというスポーツは、経営層の方々をはじめ、幅広い世代や立場の方々に愛されていますから、そこでプレゼンスが上がるということはビジネスにつながると思っています。やはり、ビジネスを考えてやらないといけませんからね。それに、ラグビー、バレーボール、バスケットボールなど試合を見て楽しむスポーツは多々ありますが、試合を見ることはもちろん、自らも参加して楽しむということになると、やはりゴルフということになると思います。
フォーティネットジャパン合同会社の社長執行役員、与沢和紀氏
――与沢さんがお考えになるゴルフの魅力は何でしょうか?
与沢氏:思った通りにいかないところが魅力ですね。たとえばどんなに練習してもその通りにいかない。練習場では9割方成功するのに本番になると5割しか成功しない……。しかし、こういった悔しさが次につながるのですね。ゴルフを始めた頃は思っていました。「なぜ皆、こんなことに真剣になるのか、たいしてスコアは伸びないのに」と。しかし、微妙に上手くいったりすることもありますから、「次回はこうしよう」とチャレンジの気持ちがどんどん湧いてくるので、「これでやめた」とはならないのです。
また、ゴルフはいろいろな方と交流ができます。ラウンドするとお昼を挟んで短くても5時間くらいはご一緒しますよね。これはもう、人間性が見えます。こちらも向こうも隠せない(笑)。そこで好かれる関係性を作ることができることが非常に重要だと思います。ビジネスで考えたとき、会社を訪問しても30分~1時間がいいところで、“人間”まで知るということはあまりないですから。ソリューション、サービスなどの話以前に、日本ではやはり人間関係の構築が重要です。
――さて、本大会は、プロアマ戦で選手たちのトークショーを取り入れたり、今年から出場選手のレッスン会を開催したり、多くの新しい取り組みを行っています。
与沢氏:プロアマ戦のときは風が強かったけれど、皆さん楽しんでくださったようです。参加者の皆さんとプロの皆さんが和気あいあいと楽しめることが非常に重要です。トークショーなども、倉本(昌弘)さんや(堀川)未来夢さんのキャラクターもいいですし、JGTOのメンバーを見ても、皆さん、スポーツとしてもしっかり取り組んでいるけれど、きちんとエンターテインメントができる方ばかりです。トーナメント本戦は、それぞれの戦いがあると思いますが、プロアマ戦でのプロの皆さんは見事に心意気が違います。
――倉本昌弘副会長が「第5のメジャーにしたい」と言っているそうですね。
与沢氏:最初から倉本さんはそうおっしゃっていたので、そうであるならばサポートしていきたいと感じますよね。
会場風景。サイバーセキュリティ企業であるフォーティネット。本社(アメリカ)は、今年からLPGAのツアースポンサー(フォーティネット・ファウンダーズカップ)を始めた
――本大会は、ローピングを近くしてギャラリーの方がより近くで見られるようにしたり、18歳未満と65歳以上の方、そして地元千葉県栄町在住・在勤の方は入場料無料にしたりしています。
与沢氏:そうですね、特に地域貢献、地域を盛り上げようという気持ちは非常に重要です。やはり、単に一過性の企業としてのイベントを超えたものを目指していきたいですね。また、小学生の皆さんがプロの試合を間近で見て、どんなことを感じてくれるのか楽しみにしていたのですが、目を輝かせて楽しんでいる姿を見て、とてもうれしく思いました。この経験をきっかけに、将来プロを目指す子どもが出てきてくれたら、こんなに素晴らしいことはありません。
――今さらですが、与沢さんのゴルフ歴を教えてください。
与沢氏:30年くらいです。ハンディキャップは持っていなくて平均スコアは93、94でベストは81。その程度です(笑)。でもゴルフは好きですね。実は始めた頃は、義務的に先輩上司から言われて嫌々やっていました。「他にやりたいこといっぱいあるのだけどなあ」とか、15ホール目くらいから「早く終わらないかな」と思うようなゴルファーでした(笑)。でも今となれば、友人・知人・先輩、かつての同級生・同窓生、多くの気心が知れている皆と一緒に回ることが楽しい。実力も似たようなものですしね。不思議なんですよね、ゴルフって。毎週のようにやっていて、決してスコアがよくなっていくようなものでもないのに、なぜか続けてしまう。ゴルフを通じて、社員がお客様やパートナーとの接点を広げてくれたらうれしいと思っています。当社は、600人を超えたので、チームごとで社内コンペは行っています。お客さんやパートナーさんにはゴルフをされている方は当然多いので、そのためにもうちに入社したらゴルフをやってほしいなと思います。
大会後の阿久津会長のあいさつ。「少しでも選手との距離が近いということを目標に、いろいろな施策をしてこの大会に臨みました。また来年もより盛り上がるように、考えていきたいです」(写真/岩本芳弘)
――社長ご自身も“ゴルフ好き”だと知ることができて嬉しいです。今後、この大会がどのようになるとよいとお考えですか?
与沢氏:来年も継続していきたいと考えています。弊社は他のスポーツのサポートも行ってはいますが、この規模で行うのは男子ゴルフだけです。男子プロの魅力は、まず迫力があること。ずば抜けた技量で、飛距離にせよ正確性にせよ、アマチュアゴルファーの1.5倍から2倍くらいの技量でしょう。もちろん、テレビで見ても楽しいのですが、現場で見ると「おおーっ!」となる。このボールの高さで、この正確さで見事に着地して……と。ですからやはり、ファンの方が来場したくなるためにはどのように盛り上げていくのかを考えていくことは重要だと思います。
今年の新しい試み、出場選手(篠優希と嘉数光倫)によるレッスン会の1コマ
軌道をイメージしやすいよう、地面に2本のティーを等間隔に立てる
スタンス幅の説明をする嘉数
今年の新しい試み、出場選手(篠優希と嘉数光倫)によるレッスン会の1コマ。 「フェードを打ちたい。フックが出るので」という男性に、「いいドローを打っている」と2人。極端な“フック球”が出ないようにレッスン。 軌道をイメージできるように2本のティーを等間隔に2本立てる。 「ティーを刺して視覚でイメージする。球に合わせていくと外(アウト)にクラブが出やすいんですけど、体の回転なりに振り抜くとクラブの収まりがいい。インに振るためにティーの方向にクラブを振り抜いてください」(篠) すると引っかからないドローボールで飛距離も出た。
「あとはスタンス。狭くしたほうが回りやすいとか気持ちいい感じだったら全部狭めていい。スタンスが広いと、左右に動きやすくなるので、狭くして体の中心の軸を意識して。一本の棒が通ってると思って打ってください」(嘉数)
取材・文/吉竹鎮代
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メキシコのビダンタ・バジャルタ(7337ヤード・パー71)で開催されたPGAツアー・フェデックスカップ・フォール「ビダンタワールド・メキシコオープン」最終日。2日目から首位に立ったアンドリュー・ノバク(米国)が、最終日も「69」でまとめて通算25アンダー(259ストローク)で逃げ切った。2位に5打差をつけるこのスコアは、従来の大会記録を塗り替える72ホール最少ストローク記録。2位との「5打差」は大会史上最大差勝利(従来の最大は2023年トニー・フィナウの3打差)であり、今季PGAツアー全体でも4位タイの差をつける歴史的な圧勝劇となった。2025年の「チューリッヒ・クラシック」でのペア戦優勝はあるものの、31歳にしてこれが悲願の個人戦初タイトルとなった。
2日目の「61」、3日目の「62」と爆発的なスコアで独走態勢を築いたノバク。この圧勝劇を語る上で欠かせないのが、ショットとパットの完璧な噛み合いだ。
公式スタッツにおけるパット貢献度(SG: Putting)は「8.191」で堂々の全体1位。沈めたパットの総距離は「456フィート(約139メートル)」に達し、こちらも出場選手中トップ。10フィート(約3メートル)以内のパットは58回中53回(成功率約91.4%)を決め切った。
特筆すべきは、ノバクが今季、パット貢献度でツアー158位(平均-0.492)と極度の不振に苦しんでいた点だ。「世界で最もパットが下手な1人」と自嘲し、解析機器の「完璧なストローク数値」と「入らない現実」のギャップに悩み抜いた男が、グリーン上で見事な大逆襲を演じた。
さらに、この快進撃はパット単体の力にとどまらない。アイアンショットでピンに寄せる精度を示す「Proximity on Approach(ピンまでの平均残距離)」でも27フィート2インチ(約8.27m)を記録し、フィールド全体1位に君臨。切れ味鋭いショットでピンに絡め、それを10フィート以内のパットで確実に沈めるという完璧な相乗効果が、異次元のビッグスコアを生み出した。
14番の勝負パットと、相棒キャディへの感謝
最終日のターニングポイントとなったのが14番ホールだ。中盤スコアが足踏みし、追撃グループと4打差の緊張感が続く中、ノバクはこの14番で値千金のバーディパットを沈めて後続に引導を渡した。
【動画】ノバク自身が「ターニングポイント」と語った14番バーディパット【PGAツアー公式X】
44 feet for his third birdie in a row! Andrew Novak leads by SIX as he looks for his first solo victory on Tour at the VidantaWorld Mexico Open.
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x.comデータ主義を脱し、クローゼットで眠っていた「錆びた古いパター(TPミルド カスタム)」を握り直したことでゾーンに入ったノバク。
「(2日目と3日目は)これまでの人生で最高の36ホールだった。カップがとても大きく見えたよ。今年は望んだようなシーズンではなかったけれど、最高の締めくくりになった」
PGAツアー2勝目を圧勝で飾ったアンドリュー・ノバクとキャディのジェフ・ハムリー
そう語るノバクの傍らには、8年もの間苦楽をともにしてきたキャディのジェフの姿があった。
「彼は僕にずっと寄り添い、いつも信じてくれた。今週も最高の仕事をしてくれたから、この勝利は本当に彼にふさわしいものだ」
2028年シード獲得と、父としての素顔
フェデックスカップ・フォールのポイントランキングは89位から53位へと一気に跳ね上がり、来季のシグネチャーイベント(格上げ大会)出場権に大きく前進。さらに、2028年シーズン(それも最上位の「PGAツアー・チャンピオンシップシリーズ」!)までの長期シードという絶大な果実を手に入れた。
「スコッティやローリーでない限り、ゴルフで何度も勝つことはできない。だからこの機会は本当に大きい。そして来週は娘のレイニーが1歳になるんだ。家に帰って誕生日パーティーを楽しむよ」
一人の父親としての優しい笑顔を見せた31歳。データという呪縛を自らの感覚で打ち破り、新たな扉を開いたノバクの未来は、メキシコの太陽のように明るく照らされている。
なお、決勝ラウンドまで進んだ平田憲聖は通算17アンダーの11位タイ、中島啓太は通算13アンダーの23位タイで終えている。