〔アングル〕日本車メーカーに再編の波、日産とホンダ協議で2陣営に
<提携を後押した「警戒感」>
日産とホンダが業務提携に向けた話し合いを始めたのは今年3月。8月1日に覚書を結び、電気自動車(EV)向けの電池や駆動装置、ソフトウエアなどで「提携」することを発表したが、関係者の1人によると、さらに踏み込んだ協力関係をその前から考えていたという。
事情を知る別の関係者は「ホンダも日産も、市場の変化に警戒感を互いに持っていて、協議を進めて早くまとめたいという意向があった」と説明する。「自社だけで、単独で、この先行けるとは思っていない」と語る。
<メーカーの多さ、世界で競うには不利に>
自動車を経済成長のエンジンとしてきた日本は、1967年に国内の生産台数が西ドイツを抜いて世界2位になった。もう一つの柱だった電機産業が1990年代ごろから凋落しても、自動車は日本の基幹産業であり続け、燃費性能などを武器に北米、中国、東南アジア市場などで高いシェアを握った。
自動車政策に詳しい日本の政府関係者は「電動化や知能化を含めて自動車産業が大きく変わっている上、中国勢も台頭してきており、国内に自動車メーカーが8社もあるのは多すぎて日本の産業競争力上、難しい」と話す。
さらにもう一方の陣営として「ホンダと日産を一緒にしたいという考えはずっとあった」と前出の政府関係者は話す。
「自動車国内市場が縮小する中で、ホンダと日産が統合することで世界的な競争力をさらに高めていってほしい」と経済産業省出身で、自民党の鈴木英敬衆議院議員は語る。ホンダが運営する鈴鹿製作所や鈴鹿サーキットがある三重県の知事でもあった鈴木氏は、「自動車産業は日本経済の雇用にとっても重要だ」と話す。
<問われるスピード感>
中国でも北米でも苦戦する日産は生産能力を20%削減し、年間販売350万台レベルで配当や成長投資を継続可能な収益構造にすることを目指しているが、達成時期は2026年度だ。ホンダはハイブリッド車の販売が好調な北米市場で稼げているものの、現地メーカーとの競争に直面する中国市場は販売が低迷している。
「中国勢はスピードが全然違う」と伊藤忠総研の深尾三四郎エグゼクティブ・フェローは指摘する。「今までの1000万台クラブなど、規模の経済性で利益を出してそれを投資して稼いでいくという5年くらいかかるような再編スピード感でやるという時代ではもうない」と語る。
(竹本能文、久保信博、白木真紀 取材協力:小宮貫太郎、杉山健太郎、浦中美穂 編集:田中志保)
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