米国債の好調際立つ1-3月期、トランプ大統領の貿易戦争激化
世界的な貿易戦争の激化で米経済が急減速するリスクが高まりつつあり、投資家のポートフォリオに大きく影響している。
トランプ米大統領による相次ぐ関税発動を受け、今年1-3月期に株・債券相場はいずれも波乱の展開が続いている。だが、こうした状況で一つ明らかになってきたのは、ドルの安全資産としての座が揺らぐ中でも債券の方が株式より有望視されていることだ。
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米国債の今四半期のリターンはプラス2%強と、株式をアウトパフォーム。S&P500種株価指数は約5%下落している。3カ月間に株式が下落し債券相場が上昇するのは新型コロナウイルス禍が始まった2020年3月以来となる。
アジェイ・ラジャディアクシャ氏率いるバークレイズのストラテジストらは先週、政策の不透明さが経済成長に「下振れ」リスクをもたらすとして、数四半期ぶりに資産配分見通しを世界株式よりも債券を有望視する形に転換した。
トランプ大統領が大幅な関税強化策の一環として4月2日に貿易相手国への相互関税発動を計画しているため、米株式市場の時価総額は2月下旬以降に5兆ドル(約748兆円)余り吹き飛んだ。トランプ政権はまた、米国の製造業と雇用の支援を目的に、自動車や工業用金属などの分野も標的にしている。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「株式市場が値下がりすれば、金融状況は引き締まる。それは債券にとって良いことだ。軟調な場面で買い手になるのが得策だ」と指摘した。
関税に加えて投資家は4月4日発表の米雇用統計にも注目している。エコノミストの間では給与の伸び鈍化と失業率の安定が予想されている。
ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者スバドラ・ラジャッパ氏は28日のリポートで「雇用統計が期待外れであれば、利回りのリスクは下方に偏るだろう」と予想した。
「実質リターン」
株式と債券の伝統的な相関関係が一時的に復活したことは、投資家にとって朗報だ。結局のところ、これは株式に6割、債券に4割を配分する「60/40」ポートフォリオの要だからだ。この戦略は、22年にコロナ禍後のインフレ高進が株式と債券の両方を同時に直撃して以来、ほとんど機能していなかった。
BMOグローバル・アセット・マネジメントの債券部門責任者アール・デイビス氏はブルームバーグテレビジョンに対し、債券は現在、利回りがインフレ率を上回り「実質リターン」を投資家に提供しているため、「ポートフォリオ全体における配分を増やすには理想的な状況だ」と指摘。債券は「リスク資産が大幅に下落した場合」の下支えにもなると付け加えた。
原題:Treasuries Are the Standout Play as Trump’s Trade War Heats Up(抜粋)