性犯罪の逮捕状発効当日に拉致を装い失踪した男、13年を経て逮捕 米
逮捕後に撮影されたアンソニー・レノン容疑者の顔写真/Moore Police Department
(CNN) 2012年3月のある月曜日、米オクラホマ州ムーアの警察署員らが、事件現場となったモーテル「スーパー8」に呼び出された。
夜明け前に現場へ到着した刑事たちは、階段の下に広がる血だまりと、製氷機の方へと続く血の付いた足跡を発見した。
階段の手すりの下には、まるで争っていたときに外れたかのように、スーパー8の従業員名札が表向きで落ちていた。
警察によれば、名札はアンソニー・レノンという男のものだった。
そして、その事実が現場全体に「不審な気配」を漂わせていたと、当局者らは後にCNNに語った。
レノン容疑者は姿を消していた。この数日前には児童ポルノ所持に関する8件の罪で訴追されていたという。
レノン容疑者は襲撃され拉致されたのか? それとも、誘拐されたふりをして闇に消えたのか?
真実の解明に向けて開始された捜索は、13年に及ぶことになる。
「テレビドラマのような」現場
ムーア警察の刑事ジェイソン・ランドラム氏は、午前4時に呼び出され、スーパー8へ急行したときのことを今でも覚えている。
現場に到着したとき、警察は強盗と誘拐の可能性がある事件として扱っていた。しかし現場を調べて回るうちに、ランドラム氏は「しっくりこない」ものを感じたという。
まず、証拠の配置が不自然だった。名札は表を向き、レノンという名前がはっきり見えるようになっていたし、足跡も、足跡に付いた血液も不審だった。
現場の血痕も、犯罪現場の捜査に熟練した刑事たちには目に付いた。床で発見された血の広がり方は明らかに普通ではなかったというのだ。
ただし、その後の検査で、血液は確かにレノン容疑者のものであることが確認された。
モーテルの事務室ではテレビがついたままで、テーブルにはレノン容疑者の夕食と思われるサンドイッチとポテトチップスが置かれていた。レジは開けられたままで、書類は散乱していた。
凶悪な強盗と拉致を示すような痕跡。しかしランドラム氏はそのタイミングに「不自然さ」を感じていた。
レノン容疑者が児童ポルノ所持の罪で訴追されるのはこのときが初めてではなかった。
2010年、当時29歳だったレノン容疑者は児童性的虐待物所持の罪で有罪になり、性犯罪者登録を命じられていたのだ。
その後12年に再び児童性的虐待物所持の重罪で訴追されたが、当局によると、10万ドル(約1500万円)相当の重罪に対する逮捕状が発効した当日にレノン容疑者は姿を消した。
「ずいぶん偶然すぎると感じた」とランドラム氏は語る。