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デンマークのオーフスにある世界最大の精子バンク(2016年12月15日撮影、資料写真)。(c)Henning Bagger/AFP

【12月11日 AFP】がんリスクを高めるTP53がん抑制遺伝子変異を有するが無症状の男性の精子が、世界中で約200人の誕生に使われていたことが明らかになった。デンマークの公共放送DRが10日、報じた。

この男性の精子は2006~2022年、14か国にある67のクリニックに販売された。デンマークだけでも、この男性の精子によって99人の子どもが誕生した。

DRは、「精子バンクが深刻な遺伝的異常を発見する前に、ケルという偽名のデンマーク人ドナーの精子によって、少なくとも197人の子どもが誕生した」と報じた。

DRによると、世界最大級の精子バンク「欧州精子バンク(ESB)」は2020年4月、精子提供によって誕生した子どもががんと診断され、TP53がん抑制遺伝子変異を有していることが判明したという報告を受けた。

これを受け、ESBは問題のドナーの精子の販売を一時停止し、サンプルを検査した。

だが、まれなTP53がん抑制遺伝子変異は検出されなかったことから、販売を再開した。

3年後、ESBは、問題のドナーの精子を使って生まれた子どものうちさらに1人以上がTP53がん抑制遺伝子変異を有しているとの報告を受けた。

ESBが改めて複数のサンプルを検査すると、ドナーは健康であったにもかかわらず、TP53がん抑制遺伝子変異を有していることが判明。2023年10月下旬に、このドナーの精子の使用を停止した。

■「まれな」変異

デンマーク患者安全局はAFPに対し、問題のドナーの精子から99人の子どもが生まれたと説明。

「問題のドナーの精子を使用していたとされるデンマークのすべての不妊治療クリニックを対象とした調査によると、(問題のドナーの精子を使って)デンマーク在住の女性に49人の子どもが、国外在住の女性に50人の子どもが生まれた」と述べた。

ESBは声明で、「この特定の変異は、まれで過去の時点では発見されていなかったTP53がん抑制遺伝子変異で、ドナー自身は影響を受けていない上、精子細胞のごく一部にのみ見られ、体の他の部分には見られない」と説明。

この変異は事前の遺伝子検査で検出できず、ドナーの精子から生まれたすべての子どもがこの変異を有するわけではないと強調した。

ESBは、20年以上にわたり世界中で7万人以上の子どもの誕生に関わってきたと述べている。

多くの欧州諸国が1人の精子提供者から生まれる子どもの数に上限を設けているが、国境を越えた精子提供の上限を設定する国際的な規則はない。

ESBは2022年末、1人のドナーが精子を提供できるのは75家族までという上限を定めた。(c)AFP

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