1917年に沈んだ米海軍の潜水艦、初めての高画質画像撮影に成功

Image: Zoe Daheron/Woods Hole Oceanographic Institution

100年間、海の底に眠り続ける潜水艦。

1917年12月17日、アメリカ海軍の潜水艦USS F-1がサンディエゴ沖で衝突事故を起こしました。1世紀以上が経過した今、ウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究チームが、この沈没船の高解像度の映像を初めてカメラに収めました。

100年経った姿は?

今年初めに行なわれた7回の潜航調査の中で、研究チームは有人深海探査艇「アルビン」と自律型無人潜水機「セントリー」を使用し、潜水艦の接写映像を撮影。USS F-1は1917年の事故以来、約400mの深さで海底に横たわっていて、今回の撮影は1970年代に海軍の無人潜水艇が偶然発見して以来、初めての詳細な記録となります。

Image: Bruce Strickrott/Woods Hole Oceanographic Institution

19人が死亡する事故

USS F-1は1901年に建造が始まり、1911年に進水。第一次世界大戦中だった1917年に起こった事故は訓練中にUSS F-1が別の潜水艦と衝突し、わずか数秒で沈没してしまいました。乗組員19人が命を落としましたが、5人は脱出して生き延びました。

「高度な海洋技術とチームワークがこの映像の成功に大きく貢献しました」と、ウッズホール海洋研究所のブルース・ストリックロット氏は声明で述べています。「残骸を確認し、潜航が安全であると判断した後は、これまで見たことのない視点から潜水艦を撮影することができました」と語っています。

ほとんど原型のまま

まずチームは、研究船アトランティスとセントリーに搭載されたマルチビームソナーを使って、USS F-1とその周辺の地形をマッピング。その後、アルビンに搭載された高解像度カメラで写真とビデオを撮影しました。撮った画像をつなぎ合わせて、詳細な3Dフォトグラメトリーモデルが完成したのです。USS F-1は海底で右舷を下にして北西を向いており、「驚くほど原形を保っている」とストリックロット氏はLive Scienceの取材に対して語っています。

Image: Bruce Strickrott/Woods Hole Oceanographic Institution

研究チームは、戦争の墓地であるその場所を状態を保ち、遺産に対して敬意を表するために手をつけずに残したとのこと。また、この潜航中に1950年に近くで墜落した海軍の魚雷爆撃機の調査もあわせて行なわれました。

Image: Bruce Strickrott/Woods Hole Oceanographic Institution

潜水調査は、アルビンの操縦士に潜水艦の操作や深海映像技術の使用経験を積ませるための訓練と工学ミッションの一環として行なわれました。この研究は、アメリカ合衆国の国立科学財団(NSF)、大学-国立海洋研究所システム(UNOLS)、およびアメリカ海軍の海軍研究事務所(ONR)と海軍歴史遺産司令部(NHHC)との共同作業で実施されました。

潜水調査後、研究者たちはアトランティス号で追悼式を行ない、USS F-1の事故で命を落とした19人の乗組員一人ひとりのためにベルを19回鳴らしました。「アメリカ海軍の退役軍人として、アルビン号に乗ってUSS F-1の残骸を訪れることは非常に名誉なことでした」と、ストリックロット氏は声明で述べています。

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