求愛を邪魔し、交尾相手を食べることも、外来種の“繁殖干渉”とは
ニュージーランドでは、南アフリカ原産のカマキリのメスが、在来種のオスをおびき寄せて食べている可能性がある。(CAVAN IMAGES, ALAMY)
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在来種にさまざまな害をなす侵略的外来種だが、求愛の鳴き声をかき消したり、ときには交尾の相手を食べたりして、在来種の繁殖を妨げることがある。「外来種がそこにいるだけで、在来種の繁殖が妨げられることもあります」と話すのは、その隠れた脅威について調べたレビュー論文を、2025年9月に学術誌「Trends in Ecology & Evolution」に発表した筆頭著者のモレリア・カマチョ・セルバンテス氏だ。
この現象は「繁殖干渉」と呼ばれている。研究チームは、論文のなかで6つの生物グループのなかから11の独立した繁殖干渉の例を特定した。これらは実験的または観測的に実証されたわずかな例にすぎず、実際に野生ではもっと多くの外来種による繁殖干渉が起こっている可能性があると、メキシコ国立自治大学の生物学者のカマチョ・セルバンテス氏は言う。脅威にさらされている在来種の数が減少している一因となっているのかもしれない。
「保護という観点からは、少し心配です。私たちの研究は、外来種が在来種に影響を与えていることを示していますが、そのメカニズムがほとんど研究されていないのです。検討すらされていないケースもあります」
下手なプロポーズが嫌がらせに
カマチョ・セルバンテス氏が初めてこの現象に興味を持ったのは、メキシコで魚の研究をしているときだった。
南米とカリブ諸島の一部が原産のグッピー(Poecilia reticulata)は、今やメキシコを含む世界中に広がっている。ペットとして飼われていたものや、蚊を駆除するために輸入されたものが、現地の河川系にすみついてしまっている。
グッピーは、淡水魚のなかでは世界で最も分布域を広げた外来種のひとつだ。(MORELIA CAMACHO-CERVANTES)
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中央メキシコ高原では、急速に増えたグッピーが在来種に取って代わるほどになった。特に、大きさがほぼ同じグーデア科胎生魚のスキッフィア・ビリネアタ(Skiffia bilineata、Neotoca bilineataとも)という魚に対しては、グッピーの下手な交尾がこの外来種に有利に働いている可能性がある。(参考記事:「胎児を産むのは哺乳類だけではない、いろいろある動物の出産」)
オスのグッピーはメスのスキッフィア・ビリネアタに対して、キラキラした虹色の体色を見せびらかしたり、前置きを省略していきなり交尾しようとしたりするが、この試みはたいてい失敗に終わる。
だが、この行動はスキッフィア・ビリネアタの貴重な交尾の機会を奪うことになりかねない。繁殖力の高いグッピーと違って、グーデア科の魚は一年のうち限られた時期にしか繁殖しないためだ。
それだけならまだしも、最悪の場合、興奮したグッピーがメスのスキッフィア・ビリネアタを傷つけたり、死なせたりしてしまうこともあると、カマチョ・セルバンテス氏は言う。そのため、「メスの方はグッピーに見つからないように常に移動し続けなければならなくなります」
それはつまり、同じ種と繁殖できる時間が減り、子どもを産めなくなり、個体数の減少につながるということだ。そうでなくても、固有種はすでに環境汚染や開発の脅威にさらされている。一部のメキシコ固有のグーデア科は絶滅危惧種または危急種に指定され、過去数十年の間に絶滅してしまった種もある。
死に至る愛
メスのカマキリは、交尾後にオスを食べることで知られている。産卵に必要なエネルギーを得るために、交尾が終わったとたんにメスが食べてしまうこともある。オスのカマキリにとって、交尾はまさに命懸けだ。(参考記事:「実はすごい、知られざるカマキリの秘密」)
ニュージーランド唯一の在来カマキリであるニュージーランドカマキリ(Orthodera novaezealandiae)には、そのような習性がない。ところが研究によると、ニュージーランドカマキリのオスは、南アフリカからの外来種であるスプリングボックカマキリ(Miomantis caffra)のメスが出す化学信号に惑わされるのか、まんまとおびき寄せられて餌にされてしまうという。自分の命がどんな危険にさらされているのか、最後まで気付くことはない。
「論文には、最悪の結果が赤裸々に描かれています」と、カマチョ・セルバンテス氏は言う。