警察官に「代わって」訴えたが…N党・立花氏襲撃、容疑者確保の一般男性も巻き添えでケガ
政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が14日に街頭活動中、ナタで襲撃された事件から2週間余りが過ぎた。犯行直後の宮西詩音容疑者=殺人未遂、銃刀法違反の疑いで逮捕=は民間人が取り押さえ、立花氏は九死に一生を得た形となった。一方、宮西容疑者を確保した正志さん(37、名字は非公表)も宮西容疑者が振ったナタが足に当たり、ケガを負う事態となった。産経新聞の取材に応じ、当時を振り返った。
「何もしてこなかった」
14日午後5時過ぎ。立花氏は東京・霞が関の経済産業省前で支援者らと順々に記念撮影に応じていた。正志さんが立花氏の街頭活動を訪れたのは2回目。撮影を終え、立ち去ろうとすると後方で大声がした。立花氏に宮西容疑者が襲い掛かっており、正志さんはとっさに抱きかかえるように宮西容疑者を抑えに行った。
ナタで切り付けたことに気付かず、素手で襲っていたと思ったという。
宮西容疑者を確保して1、2分過ぎた頃か。足元に冷たさを感じた。ふくらはぎが血でぬれており、近くにナタが落ちていた。
「当初は恐怖とかなかったが、気が付いたら血がそこそこ出ていて、血が自分のだと分かってからやばいなと思った」
正志さんはもう1人、NHK党関係者と一緒に宮西容疑者を立ったまま抑えていた。
「次動いたら倒してやろうと思ったが、びっくりするくらい何もしてこなかった。自分もほとんど力を入れていなかった」
「ナタ、拾いました?」
宮西容疑者は「あー失敗しちゃったな」とつぶやき、周囲に「ナタ、拾いました?」と尋ねていたという。
正志さんは、宮西容疑者の言動に違和感を覚えた。
「何が何でも命を奪ってやろうと思ったら、自分を突き飛ばしてでも、(立花氏を)追いかけるはず。襲うこと以外に目的があったのか、本当はやりたくないのにやらされていたのか」
現行犯逮捕された宮西詩音容疑者(右)=14日午後5時過ぎ、東京・霞が関(目撃者提供)制服姿の警察官も数人、駆け付けていた。
正志さんは「すいません、代わってもらえませんか」と訴えたが、お茶を濁されてしまったといい、「仕方なく、ずっと抑え続けた」。
その後、私服の警察官に宮西容疑者を引き渡し、ようやく正志さんは救急隊員の介抱を受け、病院に搬送された。
「天罰」叫ぶアンチ
一連の警察の対応には、SNSなどで疑問視する声が上がっている。一方、立花氏本人は産経新聞の取材に「適切だ」との見方を示す。
周囲には当時、立花氏らに批判的な「アンチ」が集結していた。立花氏は「(宮西容疑者が)単独犯かどうか断定できる状況ではなく、(警察は)第2撃に備えた合理的な対応」と理解を示した。
正志さんも、「共犯がいる可能性は確かにあった。周りで叫んでいるアンチの方はすごく多く、撮影している人や、犯人に詰め寄っている人もいて、制御された状況ではなかった」と振り返る。
アンチは「お前らはカルト宗教だ」と支援者にも罵声を浴びせ、立花氏への襲撃については「天罰だ」と叫んでいたという。
立花氏「感謝しかない」
立花氏を巡っては自死した地方議員がSNSで誹謗中傷されていたことで、立花氏の言動が原因になったと断定調で報じる論調もメディアの一部にある。
宮西容疑者は警視庁の捜査に対し、「他の議員を自殺に追い込むような奴だからやった」と供述しているという。
正志さんは、宮西容疑者が立花氏を襲撃した背景を巡って、「テレビの立花氏たたきが理由だったら、間接的に自分のケガもテレビが原因かと思う所がある。その辺はテレビの人たちも考えてほしい」と訴える。宮西容疑者と同じ雰囲気を感じてしまうテレビ番組も一部あるという。
NHKから国民を守る党の立花孝志党首(左)と面会する正志さん=28日午後、国会内立花氏は28日の記者会見で、正志さんらの行動について「ケガもされて。周りの支援者にまで危害が及ぶことを考えれば、反対者が多い中での演説は控えなければいけなかった」と述べ、「命がけで守っていただいた方には、とにかく感謝しかない」と謝意を述べた。(奥原慎平)