南米コロンビア、米軍が攻撃した船に自国民が乗っていたと発表 ホワイトハウスは反論

画像提供, Truth Social/@realDonaldTrump

画像説明, アメリカが攻撃したという船舶を撮影した動画のスクリーンショット。ドナルド・トランプ米大統領が3日、ソーシャルメディアに投稿した

南米コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は9日、アメリカが最近、カリブ海で爆撃した船舶について、「コロンビアの船で、船内にはコロンビア国民がいた」と述べた。これに対し、ホワイトハウスは「根拠がない」と反論している。

アメリカは過去数週間で、カリブ海で少なくとも4隻の船を攻撃。合わせて21人が殺されている。アメリカ政府は、国際水域でのこれらの攻撃は「麻薬密売人」を標的としたものだと説明している。

しかし、アメリカ側は、船に誰が乗っていたのか、あるいは何が積まれていたのかについての証拠や詳細を示していない。そのため一連の攻撃は国際法違反だとの懸念があり、地域諸国からは非難の声が上がっている。

米連邦議会上院は8日、ドナルド・トランプ大統領が船に対して軍事力を行使することを禁じる法案を否決した。

野党・民主党のアダム・シフ上院議員(カリフォルニア州選出)はソーシャルメディア「X」で、議会で一部議員が軍の使用に異議を唱える中、自分はカリブ海での船舶攻撃を阻止するため法案を支持すると投稿していた。

これに対してコロンビアのペトロ大統領は、「新しい戦争のシナリオ開始だ。カリブ海で」とコメントを投稿。「一番最近爆撃された船はコロンビアの船で、船内にはコロンビア国民がいた様子だ」と書いた。

さらに大統領は、「遺族が名乗り出て、報告してくれることを願っている。密輸に対する戦争など存在しない。これは石油をめぐる戦争で、世界が止めなければならない。この攻撃は、ラテンアメリカとカリブ海全域に対するものだ」と主張した。

ペトロ大統領は、船に乗っていたとされる人物の身元について、詳細を明らかにしていない。アメリカ側も、攻撃で死亡した人物の身元についてコメントしていない。

ホワイトハウスは声明で、「ペトロ大統領が根拠のない、非難すべき発言を公に撤回することを期待している」と述べた。

また、両国間には「政策上の相違」があるものの、アメリカは「地域の安全保障と安定を含む、共通の優先事項について、緊密な協力関係に今後も注力する」つもりだとした。

ペトロ大統領は9日、ブリュッセルで開催された「欧州連合(EU)グローバル・ゲートウェイ・フォーラム」で演説し、今回の攻撃を受けて、カリブ海諸国の外相による会合を要請したと明らかにした。

アメリカは、9月2日から開始した一連の攻撃について、ヴェネズエラ沖の船舶を標的としたもので、標的にした船は違法薬物を積載していたと主張している。

8日に米連邦上院で審議された法案は、トランプ大統領に対し、攻撃の実施にあたって議会の承認を得ることを義務付ける内容だったが、48対51で否決された。

この法案は、民主党のシフ議員とティム・ケイン議員(ヴァージニア州選出)が提出したもの。投票結果は、主に党派に沿った形で分かれた。

今月初めに議会に送付された流出メモには、アメリカが現在、自国が「非国際的武力紛争」の状態にあると位置づけていることが書かれていた。

現状を進行中の武力紛争と位置づけることで、アメリカ政府は戦時権限の行使を正当化する可能性がある。それには、たとえ相手が暴力を伴う脅威でなくても、その相手を「敵性戦闘員」として殺害することの正当化も、含まれるかもしれない。

トランプ大統領はすでに、メキシコ、エクアドル、ヴェネズエラなどを拠点とする複数の麻薬カルテルをテロ組織に指定している。この指定に基づきアメリカ当局は、麻薬カルテルに対してこれまでより多くの権限を行使できるようになっている。

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