ミーム株復活も熱狂広がらず、個人投資家の投機姿勢に変化
かつてはウォール街のエスタブリッシュメント(既得権益層)に対する反逆の象徴だったミーム株だが、今では市場の日常の一部と化している。
その点がはっきりとしたのが今週の相場だ。不動産売買のオンラインプラットフォーム、オープンドアの株価は1日で43%急騰。ドーナツ店チェーンのクリスピー・クリームは数時間で39%上昇した。ウエアラブルカメラメーカーのゴープロは一時73%の急伸。オンライン掲示板レディットには再びロケットの絵文字と強気なコールオプションの投稿が相次いだ。
だが、今回注目すべきは急騰の規模ではなく、それに対する市場の無関心だった。投機の行き過ぎに対するおなじみの警告も、今や聞き流されている。かつては地震のような衝撃だったが、今では日常の一部に過ぎない。米国の金融システムでは個人主導の投機的な動きは日常化し、予想通りの現象として驚かれなくなっている。
週末にかけて一連の急騰は落ち着きを見せ、主要株価指数も記録更新後は小幅な動きにとどまった。一方で、かつて金融業界への抵抗運動とされた暗号資産(仮想通貨)は着実に主流化が進んでいる。今週はバンク・オブ・ニューヨーク・メロンやゴールドマン・サックス・グループなどが関与するブロックチェーン関連の新プロジェクトが発表されたほか、暗号資産ファンドは4週間累計資金流入が過去最大を記録。マイケル・セイラー氏率いるストラテジーは追加のビットコイン購入に向け、資本市場で28億ドルの調達を決めた。
こうした動きを総合すると、今の投機的な個人投資家行動は、もはや世代的な不安や新型コロナウイルス禍後のひずみではなく、現サイクルにおける定着した現象となっている。短期のオプション取引は個人投資家のツールの一つとなり、取引プラットフォームではスポーツベッティングから複雑な株式戦略まで対応。熱狂的な動きはほとんど説明を必要とせずに生じている。
ウィリアム・アンド・メアリー大学で個人投資家の動向を研究するピーター・アトウォーター非常勤教授は、現在の動きは市場心理と投資ツールの変化を反映していると分析。ミーム株の取引はもはや目新しさを失っていると述べ、「ミーム化は常態化した。今では退屈にさえ見える」と語った。
アトウォーター氏によれば、最も積極的な投資家層はすでにミーム株から、暗号資産やレバレッジ型上場投資信託(ETF)などリスクの高い分野へと移行している。ミーム株は文化的な再演の域を出ないものとなっており、「30代の人が、かつて20代で盛り上がった音楽で踊っているようなものだ」と同氏は語った。
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