トランプ関税が中国にもたらす「絶好の機会」、対米で各国と結束狙う
トランプ米大統領がほぼ全ての国・地域に高水準の関税を課す決定を下したことは、中国経済に打撃を与える。だが同時に、習近平国家主席にとっては、米国の主要同盟国と関係強化を図るというまたとない機会が到来している。
トランプ氏の関税発表後、中国当局者はすぐさま他国との連携を図る姿勢を鮮明にした。
財政省の廖岷次官は3日、ロンドン証券取引所で開催された中国初のソブリン環境債発行イベントで、今回の発行は「中国が国際市場との統合深化に取り組んでいることの証し」だと主張。「保護主義は機能しない。解決策にはならない」とし、「中国と英国は、強固な協力関係が基盤となっているグローバル化の恩恵を理解している」と述べた。同次官は第1次トランプ政権下の貿易戦争で中国側の交渉担当者の一人。
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「絶好の機会」
リヨン経営大学院上海校のフランク・ツァイ非常勤教授は「(トランプ氏の言う)解放の日は米国を世界から孤立させるものだ。米国以外の国・地域が米国を避けて互いに貿易を行うインセンティブを生み出している」と指摘。「中国は今、米国の手法を利用して逆に米国を打ち負かすという絶好の機会を手にしている」と述べた。
習主席は不動産危機やデフレ圧力に直面する中国経済に配慮し、第1次トランプ政権時代に比べて米国の関税措置に対して慎重な対応を取ってきた。今回の相互関税で対中関税率は平均65%以上に引き上げられており、中国政府は報復を示唆している。選択肢としてはアップルなど米主要企業を標的にする、重要鉱物の対米輸出を制限するといった対応が考えられる。
南京大学国際関係学院の朱鋒執行院長、朱鋒氏によれば、中国当局は他国の反応を見極めた上で動く可能性が高い。
中国にとっては「世界がどう反応するか」が問題であり、「中国は報復措置を急ぐつもりはない」と同氏は述べた。
習主席は今月、今回の相互関税で大きな打撃を受けるカンボジアとベトナムに加え、マレーシアを訪問する予定だと伝えられている。トランプ氏の政界復帰後初の外遊先で、地域での影響力をさらに拡大する機会となる。
中国への懐疑論も
中国を専門とする調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの中国調査担当副ディレクター、クリストファー・ベドー氏は、中国を信頼できるパートナーとして売り込む試みは欧州の一部で懐疑的に受け止められる可能性が高いとみている。
「その主張がどれだけ効果を持つかは、まだ評価が定まっていないと」とベドー氏は指摘。「欧州の当局者は、たとえトランプ氏と意見が対立していても、中国の経済政策に対して深刻な懸念を抱いていることを非公式な場で率直に語ることが多い」と述べた。
穏健派として知られるスペインのサンチェス首相は、来週中国とベトナムを訪問する予定だ。
また、中国政府は新興市場国との関係構築でも慎重な対応が求められる。一部の国では中国製品の大量流入によって、縫製などの産業で自国の雇用が奪われているとの懸念が根強いためだ。しかし、世界が米国との貿易戦争への対応に追われる中、中国に新たな関税を課す動機は低下している。
北京にある政策調査グループ、全球化智庫(CCG)を創設した王輝耀氏は、トランプ氏の関税政策は最終的に、米国が犠牲になる形で他の貿易相手国を結束させることになると指摘する。
「トランプ氏の動きは、世界の人口または経済の8割が相互貿易を増やす流れを生み出し、米国を孤立させることになる」と王氏。「長期的には、各国間の協力関係を加速させる結果を招く」と語った。
原題:Trump Gives China’s Xi a Chance to Win Over World Hit by Tariffs(抜粋)