『紅の砂漠』レビュー 荒削りだが、200時間プレイしても底の見えない圧倒的ボリュームの冒険とスローライフが待つ欲張りなオープンワールド

『紅の砂漠』は、複数の勢力が覇権を争う「ファイウェル大陸」を舞台としたオープンワールドアクションアドベンチャーだ。物語は、主人公のクリフが所属する傭兵組織「灰色たてがみ」が敵対組織「黒い熊」に襲撃されて、仲間と大切な居場所を奪われる衝撃的なシーンから始まる。

本作の世界はおどろくほど広大だ。見渡す限りの農耕地から、美しい花が咲き誇る神秘的な森まで、そのロケーションは実に豊か。タイトルと同じ地名の「紅い砂漠」は、文字通り地平線の先まで果てしなく続いている。

いくつかの謎解きで詰まってしまったため、クリアには130時間ほどかかったが、200時間以上プレイしてもなお未踏の地は多い。「次はどんな景色に出会えるのか」と新たな地に足を踏み入れるたびに心が躍り、まだまだ遊び足りないと冒険がやめられない。

レビューの執筆にあたっては、発売前にPearl Abyssより提供を受けたPC版をDualSenseでプレイしている。

パーティを組めるが灰色たてがみの再建はほぼひとり旅

クリフの目的は、消息がわからなくなった仲間を集めながら、灰色たてがみの再建とパイルーンを復興していくことだ。プレイヤーが操作できるのは、以下の3キャラクター。

  • 主人公のクリフ 「灰色たてがみ」の全員から厚く信頼されている実力者で、メインストーリーでは主に彼を操作することになる。近接武器は片手剣、槍、両手剣、二刀流、拳。遠距離武器は弓
  • オークのウンカ 彼も「灰色たてがみ」の中心人物。オーク部族の出身で、巨大な斧を自由自在に振り回す。近接武器は両手斧、両手ハンマー、二刀流
  • 貴族の女性デミアン 一族は滅亡し幼くしてすべてを失った貴族の女性。師匠の行方を追いながら「灰色たてがみ」に身を寄せることになる。近接攻撃はレイピア、両手剣、槍、二刀流

武器や体格が違うことで使える技の違いはあるものの、巨体だから動きが特別遅いということもなく、同じような感覚で使い分けることができる。

仲間の追尾性能は悪く、移動の際にはワープも頻発するが、馬に乗っても追いかけてくるし、ファストトラベルをしてもパーティは解除されない。その状態のまま、操作キャラクターを変更することも可能だ。

3人でパーティを組んでサブクエストを攻略したり、隠れ潜む強敵の退治に挑むこともできる。だが残念ながら、仲間をメインストーリーに連れて行くことはできないし、ストーリー上でも仲間たちが絡んだり共闘するような場面はごくわずかだ。せっかく3人でパーティを組んで戦う楽しさがあるだけに、ストーリー上でも仲間と行動をする展開が欲しかったところだ。

プレイヤーが行える主な要素は以下のとおり。メインストーリーを進めるうえで重要と感じたものは太字で強調してある。

  • 仲間集め
  • 灰色たてがみの運営
  • パイルーンの復興
  • アビスの謎解き
  • 地上の遺跡の謎解き
  • 指名手配犯の捕獲(比較的手軽な資金稼ぎ)
  • 世界に隠れ潜む凶悪なモンスター退治
  • 狩り、釣り、採集などの資源集め
  • ロボット作り
  • ハウジング
  • 馬車に荷物を載せて行商の旅
  • 犬や猫などペット収集
  • 素手決闘や弓術大会など16種類のミニゲーム

遊べるゲーム要素はとても多く、サブクエストだけでも軽く500を超える。戦闘からスローライフまで楽しめる、あらゆるゲームを詰め込んだ欲張りゲームのような作品だ。

追跡や潜入クエストなど内容のバリエーションが豊富なメインクエスト

プレイヤーが最初になぞることになるメインクエストは、会話イベントが軸となるものの、隠れて聞き耳を立てて情報を探りながら組織を探すといった変化もある。不審者の痕跡を追跡するクエストや、どこかへ行く際も警備の目などを欺いて進む潜入クエストを織り交ぜたりと、飽きさせない構成がよかった。

グラフィックは美しく、クエスト間の移動時も背景を眺めるだけで癒されることも多かった。

戦闘が主体のクエストも、賊退治のような単調なものだけではなく、砦の制圧や大規模な戦争など、バリエーションが豊かでテンポよく進行する。筆者のお気に入りは潜入系のクエストだ。敵の配置は「METAL GEAR」シリーズほど緻密ではないし、見つかっても力押しで解決できてしまうが、適度な緊張感の中で目的地を目指すプロセスは純粋に楽しい。

しゃがむことで敵が見ている方向や、こちらに対する認識具合をミニマップで感知することができる。 ミニマップをうまく活用することで、野を越え山を越え、敵に発見されずに要塞裏口から侵入して、雑魚をスキップしてボスに直接挑むことができたクエストもあった。

砦の奪還が目的となるクエストもあり、一定数の敵を倒せば占拠となるのが基本だ。正面突破で派手な戦闘を楽しむのもいいし、キャラが貧弱な序盤なら裏口から回り込んで安全な場所を確保するなど、攻略ルートを練る楽しさがある。なかには標的を即座に仕留めて制圧できるパターンもあるのだが、標的がやたらと強く、周囲の敵を残していたせいで大苦戦を強いられて泣きを見ることもあった。

メインストーリーの流れはとてもいいのだが、唯一の欠点はメインストーリーだけを楽しむことができないことだ。メインストーリーだけを進めようとするとキャラクターの強化とインベントリ容量(鞄)の双方が不足してしまい、どうしても寄り道が必要になってしまうのだ。特にレビュービルドは当初インベントリが小さかったため、かなり苦労した。

多くのサブクエストで、インベントリを3枠増加させるクリア報酬があるので、インベントリの問題はコツコツサブクエストをクリアしていけば問題は簡単に解決する。また、発売後のアップデートによって個人倉庫が実装され、この問題は緩和している。ただし、キャラクター強化のためには、ある程度のサブクエストをこなす必要があると思っておいたほうがよいだろう。

多数の敵を相手にしても気持ちよく戦える戦闘システム

戦闘システムは優秀で、スキルのつながりが自然なので動かしやすく、殺陣を演じているかのようにかっこよく戦いやすい。攻撃の基本はR1の弱、R2の強というふたつの近接攻撃。武器による近接攻撃のスキルは、クリフの場合は「突き」と「回転割り」の使い勝手がよく、どちらも溜めてからの威力の高い攻撃が可能だ。

本作は人型の相手との戦闘がメインで、ボス戦を含めて投げやデバフなどの搦め手(からめて)による妨害が有効だ。投げやシールドバッシュで翻弄し、敵を手玉に取りながら切り伏せていくプロセスは実におもしろい。回転割りはフィニッシュに使いやすく、突きは間合いを詰めたいときや、逆に突き抜けて間合いを広げたいときにも便利だ。

盾を構えた状態で、敵に密着してR2ボタンを押すと盾で後方への投げができたり、ダウンした相手を串刺しにできるなど説明にない小技も多い。

盾を構えた状態からの投げなど動きのつながりが自然で、イメージ通りキャラクターを動かしやすい。

数多くの敵と戦う乱戦では、R1またはR2の長押し(連打も可)で発動する連続攻撃が重宝する。特にクリフは、相手を転がしたり間合いの調整をしたりといったことをスキルだけで完結でき、とどめを刺すタイミングになると自動で技が変化して、とどめを刺しつつ周囲の敵を大きくひるませることができる。ひとりひとりを確実に、そして次々と滅殺していく独特のフィニッシュ演出は迫力があり、思わずやみつきになる。

さらに武器を使わないアクションも多彩だ。ラリアット、ドロップキック、ボディプレスといったプロレス技は、一撃ごとの手応えが心地よく、武器とは一味違う爽快感に溢れている。

紅一点のデミアンはボディプレスはできないが、多彩な蹴りのほか、足で首をつかんで投げる首投げができるなど足技が多い。

ほかにも本作には、敵のスキルを見て覚えるラーニングシステムがある。スキルの習得には「アビスアーティファクト」というアイテム(詳しくは後述)が必要なのだが、ラーニングだと不要なのでお得感がある。だが、戦闘中に画面が切り替わってしまうのが痛い。ラーニングをするとスキルの説明画面が表示されるので、敵の動きを完全に見失ってしまい、戦闘画面に復帰した際にボスの攻撃を回避するのが極めて困難になるのだ。

対処としてはガードするのが安全だが、攻撃の威力が高いほどガードするのに気力(スタミナ)の消耗が大きくなり、気力が残っていないとやはりダメージを受けてしまう。

節約になるのでスキルを覚えるのはうれしいのだが、素早いスキルだと高確率でダメージを受けてしまう。

そのほか、弓や銃による遠距離攻撃に加え、精神力(MP)を介した自己強化や敵にかけるデバフなど、補助アクションも用意されている。火や雷といった魔法関係のアクションも存在するが、習得には特別なアイテムが必要なので、筆者はアイテム探索を余り熱心にしなかったこともあって魔法については習得することができなかった。

動きが素早く猛烈な攻撃で死にゲーと化すボスとの激戦

攻撃モーションには変な癖がなく、戦いやすいのでゲーム序盤はパワープレイでサクサクと進行できる。もしやヌルゲーなのではと思い始めた頃に、突如ボスの攻撃と動きが激しくなりまるで死にゲーのような一面が「コンニチワー」と挨拶してくる。ボスは動きが素早く攻撃も苛烈で、何もしなければ1~2秒で瞬殺されるほど殺意の高いボスも多い。

本格的にボスが強くなってきたと感じたのは5章と7章のボス。素早いうえに、逃げに徹しても回避しきるのが困難な攻撃や、一撃で半分以上削られる強力な攻撃が目立つようになる。離脱できるスキルがないとはめ殺しの連続攻撃で全快から瞬殺されることもあったので、育成も計画的にする必要があった。攻撃を当てるのも難しくなるので、パターンを覚えるまでは回復アイテムをがぶ飲みして耐え凌ぐ日々だった。

救いなのは、攻撃を受けながらも回復をがぶ飲みして回復できる点。限度はあるが、数さえ揃えればアクションが苦手な方でもある程度回復でゴリ押しできる。回復アイテムは料理なのだが、店だけで揃えようとすると材料不足で回復量の多い料理は2~3個ほどしか作れず、十分な量の回復アイテムを揃えようとするとそれなりの時間が必要だ。

筆者の場合は「材料集めに時間をかけるぐらいなら体で覚えてクリアしたほうが楽しいし早い」と考え、最低限の回復でリトライを繰り返していた。この回復アイテムの数が十分でないと死にゲーのようなバランスとなるが、回復を潤沢に用意できるようになると、あまりリトライはせずにクリアできるようになると思う。後述するスローライフの要素が充実すると回復を確保しやすくなるので、アクションが苦手な方はスローライフの満喫が攻略の鍵となりそうだ。

また、一部のステージでは環境を使った戦い方もできた。気の力を使って重たい物を持ち上げる「リフト」と呼ばれるスキルでは、木や柱を持ち上げて敵をぶん殴ることで極大のダメージを与えることができる。

相手がボスだと壁際に投げるなど隙を突かないと当てるのが難しいのだが、何十回と攻撃を当てないと倒せない堅いボスでも、柱なら3~4回ぶん殴れば倒せるほどの大ダメージを与えることができるので、見た目にも気分爽快だった。

少しわかりづらいが、拡大表示したボスの体力ゲージの青い部分が残りの体力で、ピンク色が柱の攻撃で与えたダメージ量。その右の暗い赤が5回攻撃して与えていたダメージ量だ。

キャラクターの強化と装備の強化は貴重なアイテムを使用するので悩ましい

キャラクターの強化には、強敵の撃破や遺跡「アビス」の謎解きなどで入手する「アビスアーティファクト(以下、アーティファクト)」を使用する。生命力(HP)、精神力(MP)、気力(スタミナ)といった基礎能力の向上、戦闘や探索で使うスキルの習得、さらには装備の強化に至るまで、あらゆる強化でこのアーティファクトが必要となる。

敵が強すぎると感じたら、攻撃スキルや基礎能力を底上げするのが得策だ。ただし、基礎能力の強化は段階的に必要なアーティファクトが増えていくので、一度に大きく伸ばすのは難しい。筆者の場合は、基礎能力の強化を必要最低限にしつつ、回避と攻撃の威力を上げるスキルをバランスを見ながら強化していた。

キャラクターの強化画面。スキルは個別に覚えさせる必要があるものの、生命力や気力などの基礎能力の強化状態は仲間の3人で共通だ。

装備品は最大でLV10までの強化が可能で、LV4以降は装備にもアーティファクトが必要になる。特に攻撃力が足りないと感じることが多くなるので、ボスとの戦いで不足を感じたら装備品の強化で補ってバランスを取っていた。

本作で入手できる装備品は、基本性能の差が少ない。装備選びが決定的な差になると感じたことはなく、見た目を重視して選びやすいのも特徴と言える。

画像はラスボスと同等の攻撃力を誇る敵からの通常攻撃を受けた際のダメージ量。上が防御力70、下が防御力60で攻撃を受けたものだが、その差は本当にごくわずか。ラインを引いて見比べてようやく微妙な差が見て取れる程度の違いしかない。

また装備品には、属性を付与したりスキルを使えるようになったりするアビスギアを装着するためのスロットがある。このアビスギアはFF7のマテリアのように付け替えもできるので、アビスギアでもステータスや補助能力を調整できる。入手した武器に最初から付いていたアビスギアを取り外し、お気に入りの武器に装着させるといったことも可能だ。筆者は試せなかったが、強化を重ねれば初期装備でもラスボスを倒すことが現実的に十分可能だろう。

装備の強化はLV3までは金属や革などの素材だけで強化できるが、LV4以降はアーティファクトが必要になり、最大強化時にはさらにレアなアイテムが必要になる。

ただ、装備品の強化は貴重なアーティファクトを大量に消費するため、一度鍛え上げた装備からはなかなか乗り換えにくいというデメリットを抱えているとも言える。

アーティファクトはかなり限定的ながら店でも高価で購入できるため、最終的には自由な強化を楽しめると思われる。ただ、終盤になるほど装備変更のハードルが上がってしまうため、強化をリセットしてアーティファクトだけでも回収できる仕組みが欲しかった。

また、装備の強化には大量の素材が必要なので、素材を集めながら冒険がしたい。だが先述したようにインベントリの容量不足が問題になる。初期の空きは50個ほどだが、本作で入手するアイテム数は膨大なので簡単に埋まってしまう。大半のサブクエストのクリア報酬がインベントリの空きを増やすものとなっているので、サブクエストをするモチベーションにつながってはいるのだが、初期の容量不足のデメリットのほうが勝っている。

最初こそ面倒だが、便利に感じることが多い独特の操作

本作はシステムに独特なところがあり、それを頭に入れておくと冒険が楽になる。まず本作は、いろいろなところでボタンの長押しを使う。先述したように戦闘では攻撃ボタンを長押しすることで自動で連続攻撃をしてくれるが、メニューの呼び出しでもボタンの長押しを使用する。

オプションボタンを長押しするとメニューリストが表示され、方向キーの上下で地図やクエストリストなどの項目を選択可能だ。長押しを介さずにポンと素早く押すと直前に開いた項目や情報更新のあった項目など、アクセスの重要度が高い情報が表示される。ちょっと注意したいのは、直前のメニューを素早く表示しても、メニューに切り替わってから世界が完全に停止するまで1~2秒程度のラグがある点。そのため、ボス戦などでインベントリなどを開く必要がある場合は注意が必要だ。

遺跡やファストトラベルなど何かしらのギミックを探す場合に、L1ボタンで明かりを付けたランタンで注目したり、L1+R1の武器を使った光を集める操作を行うと、ギミックの場所が明るく光って反応する。直線的に障害物がなければ、ずっと遠くにある遺跡や上空のアビスですら反応する。探索時にはファストトラベルを探す手助けになるし、後述する遺跡ではギミックを探す手助けにもなってくれるので覚えておこう。

地上でランタンで調べると、障害物がなければかなり遠くに離れた場所のギミックにも反応する。

ほかにも装備品の付け替えのホイール画面や、アイテムのショートカット登録のホイール画面などを呼び出す際もボタンの長押しを使う。長押しが多用されることに最初は面倒に感じたが、今は便利に感じることのほうが多い。複数のアイテムは□を長押ししながら歩くだけで拾えるし、セーブの長押しは誤セーブ防止につながっているので安心感もある。唯一の不満は、会話をしたりアイテムを拾う際に、□ボタンの長押しをし損ねて時折ジャンプをしてしまうことぐらいだ。

パズル要素は仕組みを教える下地作りが不十分

この世界では戦いだけではなく、さまざまな冒険も待っている。そのひとつが、ストーリーにも深く関わる「アビス」と呼ばれる場所だ。アビスは『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の空島を思わせる巨大な空中遺跡だ。地上からはアビスは一切見えないが、アビスから下をのぞき込むと地上が広がっており、飛び降りることでそのまま地上へと戻ることができる。

アビスは空中に浮いており飛び降りれば地上へ行けるので、簡易的なファストトラベルとしても利用することができる。

アビスは40種類が存在しており、各アビスには何らかのパズル要素がある。その謎を解くことで別のアビスへ移動できるようになったり、報酬としてアーティファクトを得ることができる。なかには強力なアビスギアや、強化をリセットするための「色褪せたアビスアーティファクト」などのお宝が隠されているアビスも存在するので、複雑な形状のアビスであれば探索するのもおもしろい。

アビスの謎解きでやることは施設の復旧だ。簡単にいえば、アビスは電源が落ちている状態にあり、場所によっては電線が切れていたりもする。なのでブレーカーを入れたり、電線を接続し直すようなことをすることでアビス全体に電気が流れるようになる。あとはメインスイッチを押すことで謎解きのクリアだ。

画面左の丸い装置がアビスを起動させるスイッチになっている。パイプラインが青く輝いているということは通電している証拠だ。 装置が死んでいると青く光らず、通電していないパイプは黄色い細い線が光る。パイプの先には何らかの仕掛けがあるので、その仕掛けを動かしたり組み立てたりすることでパズルを解いていく。

パズルを解く過程では、衝撃で回転する扉を抜けたり、外れたバッテリーのようなものを接続し直したりと、ひとつひとつ仕掛けを動かしていく必要がある。仕組みを理解できるとおもしろいパズルだと感じるし、クリア報酬のアーティファクトが育成に不可欠なため、攻略へのモチベーションも自然と高まる。

各ギミックの法則さえ掴めれば難易度はそれほど高くない。しかし、いかんせんヒントが少なかったり、そもそもヒントがわかりづらいものもあるため、初見では「理不尽で難しい」と感じやすい。 ギミックとして反応するオブジェクトは決まっているのだが、最初はそのルールの判断ができないので、謎を解くためのスタート地点に立つのが難しくなっている。もちろんいろいろと試行錯誤することも謎解きの楽しみ方だとは思うが、アビスはパズルを楽しませるための下地が不十分に感じた。

この場所はスポットライトで中央が照らされている。ただ初見だと、ライトがギミックなのか中央に何かあるのかがわかりづらい。

灰色たてがみの拠点となるキャンプ運営

拠点となる灰色たてがみのキャンプは、仲間を集めることで徐々に施設が増えていく。馬には木造の小屋が用意される一方で、人間はいつまでもテント暮らしという点に少し違和感を覚えるが、規模が大きくなっていく過程を眺めるのは純粋に楽しいものだ。

一応、ハウジングを楽しめる家は用意されているが、キャンプ地から離れた場所にあり、正直なところ使いづらい。外観もそれほど豪華ではなく、内装を飾るモチベーションがわかなかったのが本音だ。

拠点としては雑然としすぎているので、せめて発展に合わせてキャンプの配置を整えてたり、余計な草木も取り除いてほしかった。

灰色たてがみは、傭兵(何でも屋)として任務派遣を行っており、その報酬でキャンプを維持するためのお金や食糧を得ることになる。何もしなくても破産したり飢え死にしたりすることはないが、派遣業務で稼いだお金や資材があれば、キャンプで使う馬車を作ることができたり、ロボットの生産も可能になる。

この派遣業だけでもかなりのボリュームがあるので、クリア後のエンドコンテンツのひとつとしてじっくり楽しめそうだ。

狩猟や釣りに、畜産や農業で生産し、行商までも楽しめるスローライフも完備

本作はスローライフ要素も充実しており、狩猟や釣りのほかにも家畜の飼育や農業など生産業の体験も可能だ。

ゲームとして本格的に楽しめるのは釣りで、食材集めになるし大物を釣れれば金策にもつながるオススメ要素のひとつだ。針を垂らして魚が掛かった際、激しく水しぶきが上がっている最中に無理に巻き上げると、簡単に糸が切れてしまう。なので竿を動かして魚の体力を削り、おとなしくなったところで巻き上げると魚が釣れる。操作は簡単ながらも、手応えのあるフィッシングだ。

岩に引っかかっても糸が切れてしまうため、釣りのポイントを見極めたり、注意深く魚を誘導したりする必要がある。

家畜に関しては、当初はヒヨコしか購入できないが、関連NPCとの親密度を上げることでリストが拡張されていく。野生動物の子供を捕獲して育てることも可能だが、筆者が試した限りでは、ウシやイノシシの子供を連れ帰っても登録ができなかった。飼育自体は可能なはずなので、野生個体の登録には特殊な条件があるようだ。筆者が確認できたのはヤギのみで、苦労して運んで失敗すると徒労に終わるので、対象となる種類はあらかじめリスト化してほしかった。そして育てた家畜は、ずっと飼い続けてもいいし、販売したり、食肉加工して食材とすることも可能だ。

農業では、畑を耕すなどの基本管理は仲間が担ってくれる。プレイヤーの役割は種まきと収穫のみという簡易的なものだが、家畜の糞を肥料にしたり、収穫した作物を餌に回したりと、農業と畜産のサイクルがちゃんと構築されているのはおもしろい。

今回は試しにリンゴを植えてみた。 牧場エリアは結構広く、最大で20匹まで管理できるようだ。 時間の経過とともに家畜は成長して新しいヒヨコも生まれていた。繁殖を期待して捕まえてきた2匹のヤギは、悲しいことにどちらもオスだった……。

そして、灰色たてがみの派遣業で得られたアイテムや、キャンプ生産された食糧や木材などの物資は、梱包して馬車に乗せて、ファンタジー小説『狼と香辛料』のように行商の旅に出ることもできる。道中は盗賊も多いので、安全のためにも仲間に同行してもらうのもいいと思ったのだが、残念ながら馬車だと仲間は追尾してくれなかった。

パーティーの解除はされないものの、仲間が馬に乗って付いてくることはなかった。

大空の散歩を楽しませてくれるドラゴンだが、1日に1回しか呼べない制限あり

乗り物のラインアップも充実している。定番の馬をはじめ、牛や熊といった動物から、果てはロボットやドラゴンにも乗ることができる。ロボットは物語の進行に合わせて一時的に操作でき、周囲に放電したり牽制攻撃もできる高性能なもので、戦闘ではR1の射撃攻撃と、R2のロケットでの攻撃が操作もシンプルで使いやすかった。とあるクエストをクリアすると小さなロボットを作れるようになるのだが、未知の場所の散策やクエストのクリアなどやりたいことが多く、200時間プレイした今もまだ本格的に手をつけられてはいない。

可愛い見た目とは裏腹にとても高性能。

乗り物の目玉はやはりドラゴンだ。ドラゴンは、カメラを向けている方向に飛ぶので、純粋に乗り物としてとても操作がしやすい。だが空から地上を眺めようとカメラを下に向けるとドラゴンも下降してしまうので、上空からじっくりと地上の背景を眺められないのは惜しいところだ。

さらに残念なことにドラゴンはゲーム内の1日に1度しか呼び出すことができない。背に乗って空の散歩を楽しみ、気になった川辺に降りて釣りをする……といった優雅な遊び方をしようにも、ドラゴンから降りると一定時間でドラゴンが帰ってしまう。のんびりとした再騎乗しての移動がほとんど不可能なのだ。せめてプレイヤーが近くにいる限りは、その場に留まる仕様にしてほしかった。

また、街の上空など飛行禁止エリアとの境界が視覚的に判別できず、唐突に強制的に下ろされるケースが多々発生する。これでは、せっかくの爽快な空中散歩も水を差されてしまう。特定のエリアでは低空飛行ができないだとか、火を吐けないぐらいの制限にするべきだと思う。

世界は緻密に作られているが、PCでの動作は思いのほか軽快

本作の景色は目を見張る出来で、長距離を馬で移動する際は背景を眺めるのも楽しみのひとつだった。適当に選んだ何の変哲もない場所でも美しく、光と影のコントラストも秀逸で、世界のどこを切り取っても絶景ポイントになる。

本作では、人々や動物は時間帯に合わせてしっかりと生活しており、世界が生きている実感を散策の端々で味わえる。潜入クエスト中に息を潜めて進んでいたところ、突如として隣の木が倒れ、木こりが姿を現したのにはおどろかされた。世界がリアルなだけに、雨が降っても人々の動きに変化がない点に多少の違和感を覚えるが、そこまでの作り込みを求めるのは酷というものだろう。

このクラスの大作になると当たり前になりつつあるが、雨上がりの街の表情もリアルだ。 適当に選んだ何の変哲もない場所でも絶景になる。
  • CPU Intel Core i7-12700
  • GPU NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti
  • メモリ DDR4 32GB
  • ストレージ M.2 SSD PCIe Gen 4x4 7400MB/s
  • 設定
    • モデル品質、テクスチャ品質、影品質はシネマティック(最高設定)
    • 上記以外の設定はウルトラ(シネマティックの一段下)

グラフィックは極めて高精細だが、最適化が進んでいるためか動作は驚くほど軽い。筆者の環境ではWQHD(2560x1440)の最高品質に近い設定でも、DLSSなしで60~80fpsを安定して維持できた。DLSSを有効にすれば100fpsを余裕で超えるが、筆者のPC環境では110fpsあたりで頭打ちとなる。試しにすべて最高設定にした際は40~70fpsで十分遊べる範囲だったし、幅広いスペックのPCで快適に遊べそうだ。

「ウィッチャー」や「ゼルダの伝説」に並ぶポテンシャルがあるものの、惜しいが多い

広大な世界はどこを取っても絶景と言えるほど緻密で、戦闘だけではなく、パズル要素やスローライフなどコンテンツのバリエーションも豊富。質量ともに文句の付けようがなく、お世辞抜きで「ウィッチャー」や「ゼルダの伝説」に並ぶポテンシャルを感じさせた。しかしながら、部分的に理想と言える作品と肩を並べているからこそ、それらと真正面から比較してしまい、細かな「惜しさ」が際立って見えてしまうのも事実である。

ストーリーに目を向けると、敵側には魅力的なキャラクターが揃っており土台はいい。息子をも喰らう冷酷無比な美しき魔女「ヘッサ・マリー」や、圧倒的な武力で頂点へと上り詰めた狂将「バスティアー」など、筆者好みの狂気を孕んだ人物が多く、彼らの振る舞いを眺めているだけでも実におもしろかった。

バスティアーは戦いっぷりもかっこよく、ボスキャラクターとしても魅力のある狂戦士だ。お祝いとして怪物を贈りつけた張本人で、彼のクライマックスもつなげるとその狂人っぷりが凄いが、そのつながりが劇中で薄いので気づきにくい。

こうしたキャラクターたちのエピソードを単独で見ると迫力はあるが、主要人物たちの行動理由や人物像のバックストーリーなどが描写不足となってしまっている。せっかく力強いキャラクターが揃っていながら使い捨て感もあり、ストーリーはまるでドラマの総集編を見ているような物足りなさがある。

魔女ヘッサ・マリー関連のエピソードは見応えがあるものの、盛り上がってきたあたりで出番がなくなるので消化不良気味。

膨大なボリュームゆえに断腸の思いでカットした場面もあるのかもしれないが、物語の描き込みについては、あともう一押し欲しかったというのが正直なところだ。

パズルの説明不足、空の自由度が制限されたドラゴン、メインストーリーの戦闘時には共闘感の薄い仲間たち……。こうした「惜しい」ポイントは多岐にわたるが、細かな不満点を凌駕する濃密なゲーム体験が、プレイヤーを広大な世界へと引き込んでくれる。

『紅の砂漠』は、圧倒的なグラフィックと膨大なコンテンツを誇る、ポテンシャルの高いオープンワールドアドベンチャーだ。手応えのある戦闘や、パズル要素のある空中遺跡、そして行商や畜産といったスローライフまで、遊べる要素は多岐にわたる。ストーリーの描写不足やシステムの不便さなどから「惜しい」と感じる部分が多くあるものの、それらを補って余りある未知の体験がこの世界には詰まっている。誰もが遊びやすいとは言いがたいが一筋縄ではいかない「欲張りな旅」を楽しみたい人におすすめの一作だ。

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