Synologyの社内見学会に参加して「他社ブランドのストレージを制限した件」について質問をぶつけた結果が公開される
大手NASメーカーのSynologyは、自社製NASに他社ブランドのストレージを組み込むことを制限しています。そんなSynologyの社内見学会にNAS関連メディアのNAS Comparesが参加し、ストレージの制限施策に関する質問を社員に直接ぶつけました。
I went to Synology HQ and Asked About Hard Drives… – NAS Compares
https://nascompares.com/2025/06/02/i-went-to-synology-hq-and-asked-about-hard-drives/ NASはネットワーク上に配置できるストレージデバイスで、NASを導入すれば複数のPCやスマートフォンのデータを1カ所にまとめてバックアップしたり、外部へのファイル転送に利用したりできます。ほとんどのNASには複数のストレージを搭載可能で、容量増量や故障対応のためにストレージを簡単に交換できるようになっています。NASの多くは複数のブランドのストレージを混在させられるのですが、Synologyは2025年4月から個人向けNASに対しても「Synology以外のブランドのストレージを制限する」という施策を導入しており、ユーザーから反発を受けています。Synologyから「他社製ストレージを制限するNAS」が発売されるもネット上では「Synologyから他社製NASに乗り換える」というユーザーが圧倒的多数 - GIGAZINE
他社ブランドのストレージに対する制限の内容は多岐に渡り、他社ブランドHDDを装着した状態ではSynology製NASの基本管理システムである「DiskStation Manager(DSM)」すらインストールできず実質的に利用不可なレベルの制限を課されていることが報告されています。
そんなSynologyが2025年5月に開催された電子機器見本市「COMPUTEX TAIPEI 2025」の開催に合わせて、台湾にある本社の見学会を実施しました。この見学会にNAS Comparesが参加し、Synology社員に対してストレージ制限に関する質問をぶつけた結果を公開しています。 見学会の様子はこんな感じ。
Synologyの社内にはこれまでに発売したNASの負荷試験エリアが設けられており、最新のDSMとの互換性テストなどが実施されていたとのこと。テストされているNASには2010年代初頭に発売されたものも含められており、案内スタッフは「非常に多くのレガシーデバイスをテスト対象に含めていることは、Synologyがソフトウェアの寿命の長さと世代を越えたハードウェアサポートに重点をいていることを示している」と説明したそうです。
見学会の中には、販売ディレクターのZP Kao氏とイギリスおよびドイツの地域マネージャを務めるChad Chiang氏による質疑応答の時間も設けられました。そこで、NAS Comparesはストレージのブランド制限に関する複数の質問を投じて、回答を得ました。質問と回答の内容は以下の通り。
質問:
SynologyのNASで使用可能なドライブの検証プロセスはどのように変更されましたか?Western DigitalとSeagateのドライブの中で、現在サポート検証を実施中の製品はありますか?Synologyの回答:
Synologyは「人々がNASを選択する基準」を常に考えています。その答えは、安全で信頼性が高く、手間のかからないデータドライブを求めているということです。これまでのサポート履歴を分析すると、Synologyブランドのドライブを用いたシステムはサードパーティーブランドのドライブを使用しているシステムと比較して問題の発生率が40%低いという明確なデータが得られました。この結果は、徹底的にテストされたドライブを用いることの重要性を強調しています。どのサードパーティーベンダーのドライブをテストしているかについては、詳細を開示することはできません。質問:
ユーザーは、以前のSynology製NASで使用していたドライブを2025年以降に登場したNASに付け替えた場合、他社製ドライブであってもDSMを使用することができます。しかし、この場合でもRAIDリカバリやRAIDの拡張、ホットスペアといった機能は使えません。これはなぜですか?Synologyの回答:
RAIDリカバリやRAIDの拡張、ホットスペアといった高度な操作は、不整合が発生した際のデータ損失の危険性が高くなります。Synologyの検証プロセスで検証されていないドライブは、高負荷時に予期しない動作をし、安定性やパフォーマンスに影響を与える可能性があります。このため、データの保護やシステムの長期的な信頼性を確保するための予防措置として、それらの機能は検証済みドライブに限定されています。なお、SynologyはCOMPUTEX TAIPEI 2025の開催に際して「サードパーティーのHDDを互換性リストに追加予定で、各ベンダーに検証プログラムへの参加を呼びかけている」と明かしました。Synologyによると、サードパーティーブランドのHDDが互換性リストに記載されるには、7000時間以上のテストとベンチマーク基準を満たす必要があるとのこと。NAS Comparesは「今後数カ月以内にWestern DigitalとSeagate、東芝といったメーカーのHDDが互換性リストに追加されることはほぼ確実です。では、Synologyのブランド制限は何のためにあったのでしょう?」と述べ、Synologyのこれまでの決定を非難しています。
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