インドネシアで続く抗議、女性たちがピンクの服でほうき手に参加 大統領は中国の式典に
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ジョエル・ギント記者、ギャヴィン・バトラー記者(BBCニュース)、レスティア・ケルトパティ記者(BBCインドネシア)
インドネシアの首都ジャカルタで3日、ピンク色の服を着てほうきを手にした数百人の女性たちが議会に向けて行進し、警察による暴力行為と政府の浪費に抗議した。
ジャカルタをはじめとする主要都市では、生活費の高騰や議会議員への過剰な特権に対する怒りを背景にした抗議活動が2週目に突入している。
8月28日に首都のデモ現場近くで、バイクタクシー運転手のアファン・クルニアワン氏(21)が、警察車両にひかれて死亡したことを受け、抗議は激化した。
そうしたなか、プラボウォ・スビアント大統領は、中国の戦勝記念式典への出席を中止すると発表していた。しかし、同大統領は3日、習近平国家主席やロシアのウラジーミル・プーチン大統領と並び、記念撮影に臨む姿が確認されている。
プラボウォ大統領は先週末、中国訪問に先立ち、抗議者らの主要な不満の一つである国会議員への特権を撤廃する方針を示していた。
3日の集会では、インドネシア女性同盟(IWA)に所属する女性たちがピンク色の服をまとい、ほうきを掲げながら行進した。ほうきは、「国家の汚れ、軍国主義、警察による弾圧を一掃したい」という思いを象徴しているという。
抗議者たちは、「警察を改革せよ」と書かれたプラカードも掲げた。
抗議に参加したムティアラ・イカ氏はBBCインドネシア語に対し、「抗議は犯罪ではなく、すべての市民に本来備わっている民主的権利だ」と語った。
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IWAは、90の女性団体や活動グループに加え、労働組合、人権団体、先住民族コミュニティーといった市民社会組織で構成される政治団体。
インドネシアにおける女性運動は、これまでにも政権に対抗してきた歴史を持ち、過去の抗議活動の波において重要な役割を果たしてきた。1998年の改革運動に至るまでの過程でも、女性たちがスハルト政権の権威主義に立ち向かった。
IWAは、ピンク色を選んだ理由について、「勇気の象徴」だと説明している。
また、アッファン氏が所属していた配車サービス企業の制服の色である緑を身に着け、連帯の意思を示している抗議参加者もいる。
インターネット上では、これらの色を「英雄の緑」、「勇気のピンク」と呼ぶ動きが広がっており、多くの人々が自身のソーシャルメディア・アカウントで、プロフィール画像にそれらの色調のフィルターを施している。
国連の人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、ジャカルタでの抗議活動に対する人権侵害の疑惑について、「迅速かつ徹底的で透明性のある調査」を求めている。
人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル・インドネシアのウスマン・ハミド事務局長は、「さらに犠牲が出る前に、政府は直ちに抗議活動中の市民の要求すべてに応えるべきだ」と述べた。
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インドネシア法律扶助財団のデータによると、8月末からの一連の抗議活動により、少なくとも10人が死亡しており、その一部は警察による暴力が原因とされている。また、全国で少なくとも1042人が病院に搬送されたという。
国家人権委員会のアニス・ヒダヤ委員長は、現在の状況について、特に当局による暴力が続いているとし、深刻な懸念を示した。
ヒダヤ委員長は2日、ジャカルタで開かれた記者会見で、「こうした行為は、対話の場が極めて限られていることの表れだ。人々が自らの問題や困難を訴えようとしても、その場は存在しているように見えて、実際には容易にアクセスできない」と述べた。
プラボウォ大統領は8月31日、全国的な抗議の沈静化を図るため、議員に支給されている国家予算による特権の一部、特に手当の規模について見直す方針を発表した。
この措置は抗議者から一定の評価を受けたが、十分ではないとの声も上がっている。
インドネシア全学生連合の元中央調整官であるヘリアント氏はBBCに対し、「問題は一つではなく、長年にわたる不平等、統治、説明責任に対する懸念が背景にある」と語った。
「象徴的な変化も重要だが、人々はより深い改革を求めている。特に農業政策、教育、公平な経済機会といった一般市民に直接影響する分野だ」
「最終的な目標は、より説明責任があり、透明性が高く、市民中心の統治を実現することにある」