イギリス、選挙権年齢を18歳から16歳に引き下げへ 次の総選挙から

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ベッキー・モートン政治記者、アダム・スミス記者、ジョネル・アウォモイ記者(BBCニュース)

イギリス政府は17日、次回の総選挙から選挙権が得られる年齢を18歳から16歳に引き下げる方針を発表した。新しい選挙法案の一環として成立を目指し、導入する方針。

16歳と17歳が投票できるようになるこの法案には、選挙制度の近代化を目的とした複数の改革が盛り込まれており、イギリス発行の銀行カードを有権者IDとして認めることや、有権者登録の自動化に向けた措置、外国勢力による干渉を防ぐための政治献金規制の強化などが含まれている。

スコットランドおよびウェールズでは現在、地方議会選挙やスコットランド議会、ウェールズ議会の選挙において、すでに16歳から投票できるようになっている。

一方、イングランドの地方選挙や北アイルランドのすべての選挙、ならびにイギリス議会(下院)選挙では依然として、投票できるのは18歳以上。

法案が成立し、選挙権の年齢を全国で16歳に引き下げることになれば、1969年に21歳から18歳へと引き下げられて以来、最大規模の有権者層拡大となる見通しだ。

次回の総選挙は2029年までに実施される予定だが、それ以前に実施される可能性もある。政府は、それまでに制度を整備し、16歳と17歳の若者が投票できるようにする見通しだ。

アンジェラ・レイナー副首相はBBCの取材に対し、「私は16歳で母親になった。16歳で働くことも納税することもできる。だから、16歳で投票できるようになるべきだと思う」と述べた。

一方、最大野党・保守党のポール・ホームズ影の閣外相は、政府の方針には「まったく一貫性がない」と批判した。

ホームズ氏は下院で、「なぜこの政府は、16歳に投票を認めながら、宝くじの購入や酒類の購入、婚姻、軍への入隊、さらには立候補すら認めないのか」と批判した。

また、若年層が左派政党を支持する傾向があることから、労働党に有利に働く可能性があるとの批判も出ている。

しかし世論調査によると、労働党の若年支持層は、緑の党や自由民主党、リフォームUKなど他の政党に徐々に奪われつつあるとされている。

イギリスでは、16歳および17歳は16歳以上の人口のうち約3%に過ぎない。また、若年層の投票率が低い傾向にあることから、研究者らは、全体の得票率に与える影響は限定的だと指摘している。

政府は、今回の制度変更が労働党に有利になるとの見方を否定している。

レイナー副首相は、「これは特定政党に有利になるよう票を操作するためのものではない。民主主義のためで、若者に発言の機会を与えることが目的だ」と述べた。

今回の選挙制度改革ではこのほか、全国で利用できる有権者IDの対象を拡大し、イギリスで発行された銀行カードを新たに認める。

労働党は、2023年に保守党政権下で導入された有権者ID制度に反対していたが、2024年の選挙公約では、制度の全面撤廃ではなく、「正当な有権者が投票できない原因となっている」規則の「不整合を是正する」としていた。

選挙管理委員会によると、昨年の総選挙で投票しなかった人のうち約4%が、有権者ID制度を理由に挙げている。

一方の保守党は、銀行カードを有権者IDとして認めることは「投票箱の安全性を損なう可能性がある」と懸念を示している。

政府はまた、今後数年をかけて、有権者登録の自動化を目指す方針も明らかにした。有権者が登録状況を把握できるようにする仕組みや、希望者が登録を解除できる選択肢を設けるとしている。

イギリスでは現在、投票するには事前に有権者登録を行う必要があり、オンラインまたは紙の申請書での手続きが必要だ。

選挙管理委員会は、800万人近くが選挙人名簿に誤って登録されているか、まったく登録されていないと推計している。特に民間の賃貸住宅に住む人や、若年層が、ことさらにこの影響を受けているという。

同委員会は2023年報告書で、パスポート発行局などの機関が有権者登録官に対し、投票資格のある人の氏名や住所を提供することで、自動登録制度を実現できる可能性があると提言していた。

政府は今回の制度改革により、政府機関間でのデータ共有を強化することで、投票資格のある人々を選挙人名簿に直接登録できるようにするとしている。

ただし、具体的な運用方法についてはまだ明らかにされておらず、政府は今後さまざまな手法を試験的に導入する方針を示している。

全国学生連合(NUS)は、選挙権年齢の引き下げは「若者にとって大きな勝利だ」と評価した。

同連合は政府に対し、有権者ID制度の撤廃、自動有権者登録の導入、学校や大学における政治リテラシー教育の推進を通じて、16歳と17歳が投票しやすい環境を整備するよう求めている。

政府は、政治献金に関する規則の見直しにより、外国勢力による政治介入の防止を図る方針を示した。

政治献金に関する現行制度では、イギリスの選挙人名簿に登録された個人、またはイギリス国内で事業を行っている登録企業からのみ受け取ることが認められている。

しかし、外国籍の個人が、イギリスに登録された外国企業を通じて献金することで、この規則を回避できるとの懸念が指摘されてきた。

この問題は昨年末、アメリカの富豪イーロン・マスク氏が、自身のソーシャルメディア企業「X」のイギリス法人を通じて、リフォームUKに献金する可能性が報じられたことで注目を集めた。

政府の新方針では、政治献金を受け取る政党に対し、献金元の企業を審査するよう義務付ける。また、企業が献金を行うには、イギリスまたはアイルランドで十分な収益を上げている必要があることになる。

現行制度では、新規登録されて1日しか活動していない企業でも、所有者が誰だろうと政治献金が可能となっている。このため政府は、こうした抜け穴を新制度でふさぐつもりだとしている。

野党・自由民主党は、16歳から投票できるようにするのは「当然のことだ」と歓迎する一方で、「外国の新興財閥によるイギリス政治への介入を防ぐため、政府はさらに踏み込んだ対策を講じるべきだ」と主張している。

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