トランプ、プーチン両大統領が会談か……それでもおそらくウクライナでの戦争はすぐには終わらない
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ラウラ・ゴッツィ(BBCニュース記者)、ヴィタリー・シェフチェンコ(BBCモニタリング・ロシア編集長)
2022年2月にロシアがウクライナの全面侵攻を開始して以降、戦争が終わる兆しはまったく見えていない。
ウクライナ東部では、ロシアが激しい消耗戦を続け、じりじりと進み続けている。ウクライナ各地では夜ごとの空爆で大勢が死傷している。他方、ロシアの製油所やエネルギー施設は、キーウのドローンに頻繁に攻撃されている。
こうした状況の中、クレムリン(ロシア大統領府)はドナルド・トランプ米大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領の会談の準備が進められ、近く開催される見通しだと明らかにした。トランプ氏は6日、「(この戦争を)終わらせるためにここにいる」と述べた。
トランプ氏の要請を受け、今年5月から7月にかけてはロシアとウクライナの間で代表団の協議が3回行われた。しかし、和平への進展はなかった。トランプ氏は自分が和平交渉に直接介入することで、いよいよ停戦が実現すると期待しているかもしれない。
しかし、ウクライナとロシアの両政府の隔たりはあまりにも大きい。たとえトランプ氏の仲介があっても、その溝を埋めるのは難しい可能性がある。
ロシアは6月、ウクライナへの覚書の中で、紛争の「最終的な解決」に向けた最大限の要求を示した。そこには、クリミア、ドネツク、ルハンシク、ザポリッジャ、ヘルソンの各地域でのロシアの主権承認、ウクライナの非武装化、中立化、外国軍の不介入、新たな選挙の実施などが含まれていた。
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ロシアの政治アナリスト、タティアナ・スタノヴァヤ氏は、「ロシア側はこれをさまざまな形で表現し、自分たちは譲歩や真剣な交渉に応じる姿勢があると、そういう印象を作り出すことができる」と指摘したうえで、「しかし、(ロシアの)根本的な立場は変わっていない。ロシアはウクライナに降伏を求めているのだ」と書いた。
プーチン氏とスティーヴ・ウィトコフ米大統領特使がモスクワで会談した後、マルコ・ルビオ米国務長官は6日、ロシアがどのような条件下なら戦争終結に応じる可能性があるか、アメリカ政府は前より理解したと発言した。
ロシア側の条件が変化したかどうかは分からない。しかし、プーチン氏は先週、おそらく上述の覚書を踏まえて、ロシアは6月にすでに目標を明示しており、その目標は変わっていないと強調したばかりだ。
そのため、クレムリンがトランプ氏との首脳会談に同意したところで、ロシアが厳しい前提条件を緩める用意があるなどと考える理由はない。
では、なぜプーチン氏はこの段階で会談に応じるのか。
可能性のひとつには、トランプ氏が8日にもロシアへの追加制裁として、ロシアの貿易相手国に2次関税を発動すると警告していることがある。クレムリンは、首脳会談に応じることでこれを回避しようとしているのかもしれない。加えてクレムリンは、自分たちが掲げる戦争終結のための条件が正当だと、トランプ氏を説得できると考えている可能性もある。
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しかしトランプ氏は4月末には、プーチン氏が自分を「あしらっている」だけだなどと、いら立ちを示すようになった。ただし、プーチン氏が停戦に向かう用意があると、自分にうそをついていたのかについては、トランプ氏は明言を避けている。
個人的な親近感や価値観の一致によるものか、トランプ氏はプーチン氏の行動を全面的に非難することを避けてきた。大統領1期目の2018年にヘルシンキで会談した際には、2016年米大統領選へのロシア介入疑惑について、米連邦捜査局(FBI)をはじめとする複数の米情報機関の見解ではなく、それを否定するクレムリン側に同調した。さらに、米ロ関係の悪化は、ロシアだけでなくアメリカ側にも責任があると発言した。その姿勢は大勢に衝撃を与えた。
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こうした経緯があるだけに、トランプ氏がプーチン氏に影響される可能性を警戒してのことか、ウクライナ政府はどのような停戦交渉にも自分たちが参加する必要があると強調している。
トランプ氏はウィトコフ特使を通じて、プーチン氏とゼレンスキー氏による三者会談の開催も提案している。しかしプーチン氏は、会談の条件はまだ整っていないとしてこれを退けた。
ウクライナでは現在、トランプ・プーチン会談がアメリカ大統領による譲歩につながるのではないかとの懸念が広がっている。
ウクライナのイリーナ・ヘラシチェンコ国会議員は、ウクライナに領土譲歩が要求される見通しがはっきりしつつあると指摘。交渉の場にウクライナが参加しない状態は、ウクライナにとって「非常に危険」なものになると述べた。
ゼレンスキー氏は7日にソーシャルメディア「X」で、「ウクライナはどのような会談も恐れていないし、同じように勇敢な姿勢をロシア側にも期待する」と書いた。
たとえクレムリンが三者会談に応じたとしても、ロシアの停戦条件はあまりに強硬だ。それだけに、ゼレンスキー氏とプーチン氏が直接対面したところで、何が得られるのかは不透明だ。