日産次期社長、ホンダなどとの協業「オープン」-国内市場てこ入れも
日産自動車のイバン・エスピノーサ次期社長兼最高経営責任者(CEO)は共同持ち株会社設立の計画が頓挫したホンダを含め他社との協業について前向きな姿勢を示した。
現在はチーフ・プランニング・オフィサーを務めるエスピノーサ氏は神奈川県厚木市にある研究開発拠点、日産テクニカルセンターで25日に行った説明会後に記者団に対し、ホンダとの協議は2月に破談したものの、現在も多くのプロジェクトで協力をしていると語った。その上で、自社の事業目的に沿うのであれば同社やその他の企業との協業に「私はオープンな姿勢だ」と述べた。
エスピノーサ氏は、自動車業界の未来は人工知能(AI)やセンサーなどを搭載して運転支援や安全性向上を図る「インテリジェントカー(知能化されたクルマ)」にかかっているとの見方を示し、「開発には多くの作業と投資が必要となり、おそらくパートナーが必要になる」と語った。
規模やパワートレイン技術、車載電池向けの投資などで相乗効果が見込める「伝統的な完成車メーカーをパートナーに選ぶという選択肢もある」一方で、知能化を推進するために自動車業界以外のパートナーとの提携を視野に入れる必要があると語った。
ホンダとの共同持ち株会社設立を巡る交渉がわずか1カ月余りで破談したことを受け、日産は米国などの先端テクノロジー企業との次世代車の開発も視野に入れた提携も模索している。
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日産では立て直しに向け11月に発表したリストラ計画の着実な実行に加え、高齢化している商品ラインアップの刷新や自動車業界で重要性を増す電気自動車(EV)やソフトウエア技術の開発で協力するパートナー探しが急務となっており、46歳と異例の若さで経営トップに立つことになるエスピノーサ氏の手腕が試されることになる。
情報発信も改善
新型車の投入遅れで商品ラインアップが高齢化していることが販売不振につながっており、商品企画などを担当してきたエスピノーサ氏も迅速な商品開発を進められなかったことを「後悔している」と述べた上で、今後は改善を図っていく考えを示した。日産は開発着手から生産開始までの期間をこれまでの50-52カ月から30-37カ月に短縮する目標を掲げている。
日産は今回、投入を予定する商品について従来よりも詳細な計画も公表。北米向けでは小型セダン「セントラ」の新型を今年後半に発表するほか、米ミシシッピ州キャントン工場で27年度後半から小型スポーツ用多目的車(SUV)の新型EVの生産を開始する。欧州ではSUV「ジューク」のEVを26年度にラインアップに追加する。
エスピノーサ氏はスポーツ車「フェアレディZ」やSUV「パトロール」など日産を象徴する5-6車種を「可能な限り全ての市場に展開する」考えも示した。
日本市場については、エスピノーサ氏は自社のラインアップが「低価格帯に偏りすぎている」として高価格帯商品の投入で改善を図っていく方針だ。パトロールの導入については「問題は日本でそれが可能かどうかという点」とした上で、「おそらく可能だろう」と続けた。北米や中国などで展開している日産の高級車ブランド「インフィニティ」の日本導入についても決まったわけではないが、「選択肢としてはある」と語った。
米国で需要が高まるハイブリッド車(HV)についても説明。日産独自のHV「e-POWER」の第3世代について、25年度後半に欧州で発売するSUV「キャシュカイ」に搭載するのを皮切りに26年度に北米で主力SUV「ローグ」、日本市場向けの大型ミニバンにも搭載を予定していることも明らかにした。ローグに関してはプラグインハイブリッド車も投入するという。
エスピノーサ氏は、業績回復に加え、低下する社内の士気や社外に対する情報発信の改善など取り組むべき課題は山積しているとみている。最近まで日産に関する報道はネガティブな内容がほとんどであり、自身が表に出て話すことで日産が本来あるべき姿として見られるようになることを目指していると述べた。
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