英国防相が辞任、防衛費めぐり政府内で対立 スターマー氏の指導力に新たな打撃
画像提供, EPA/Shutterstock
リチャード・ウィーラー政治記者、ジョシュア・ネヴェット政治記者
イギリスのジョン・ヒーリー国防相が11日、辞任した。遅れていた軍事支出計画をめぐる政府内での対立を受けての辞任で、キア・スターマー首相には大きな打撃となる。
スターマー氏に宛てた辞意表明の書簡の中でヒーリー氏は、防衛投資計画(DIP)の決着として提示された内容が、「この危険な時期において、防衛と国家に必要とされる水準を大きく下回っている」と述べた。
また、脅威が高まるこの時期に、国を守るために必要な資源を「首相は確保できず」、財務省は「確保する意思がない」として、「国家が必要とする資源を確保することにコミットしていない」と厳しく言及した。
これに対しスターマー首相は、政府の決定は、「持続可能で公正な」方法で、「無責任な借り入れ」に依存することなく、「前例のない防衛支出の増加」を実現するものだと擁護した。
11日夜には、アル・カーンズ軍務担当閣外相も辞任を表明。政府が「任務を遂行するための装備」で軍を支援することに「失敗している」と述べた。
カーンズ氏は、「私は政府にいる間ずっと、その必要性を訴えてきた」が、「首相官邸は耳を傾けようとしないため、軍務相を辞任する」と語った。
さらに、ヒーリー氏の議院内私設秘書官(PPS)を務めていたパメラ・ナッシュ議員も、同職を辞任した。
英首相官邸は11日夜、元軍人のダン・ジャーヴィス安全保障担当相を、ヒーリー氏の後任に任命した。
BBCの取材では、ヒーリー氏は他の国防関係の内閣メンバーらに、役職にとどまるよう要請していたとみられる。
ヒーリー氏は、ウェス・ストリーティング前保健相に続き、ここ数週間でスターマー政権を離脱した2人目の閣僚となった。
スターマー氏に最も忠実な閣僚の一人だったヒーリー氏の衝撃的な辞任は、政府に衝撃を与え、すでに首相としての長期的な将来に疑問が持たれていたスターマー氏の立場をさらに弱めた。
スターマー氏は、党首選が行われれば立候補する考えを示している。
防衛支出をめぐる内部の対立は、本来は昨年秋に公表される予定だったDIPが複数回延期されたのを受け、数カ月にわたってくすぶり続けてきた。DIPは、昨年発表されたイギリスの新防衛計画「戦略的防衛レビュー(SDR)」の財源を示すもの。
スターマー氏は、来月トルコで開かれる北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議までに、この計画の青写真を発表するとしているが、ここにきて緊迫した局面を迎えている。
ヒーリー氏は、中東での紛争や、北極圏およびウクライナへのイギリスの新たな関与により、今年1月以降、防衛に対する要求が増大していると述べた。
報道によると、政府は今後4年間で国防省に対し135億ポンド(約2兆7000億円)の予算増額を発表する準備を進めていたとされるが、これは同省が求めていた280億ポンドを大きく下回るものだった。
書簡の中でヒーリー氏は、9日に受け取ったDIPの財政的決着について、「配分が後ろ倒しになっている」との懸念を示し、その理由として「作戦上の圧力や戦闘準備を加速する必要性は、最初の2年間に集中している」と指摘した。
これに対しスターマー首相は、ヒーリー氏への返信書簡の中で、DIPが「我々の安全を守るために軍が必要とする資源」と「イギリスの防衛産業が計画を立てるために必要な明確性」を提供するものだと強調した。
スターマー氏は、「この計画を支える支出の増加は持続可能で公正なものとなる」と述べ、「それは政府各省全体からの資金の大幅な再配分と、国家を守るための適切な選択を意味する」と説明。さらに、「無責任な借り入れはそれを危険にさらすだけだ。こうした決定を下すことは決して容易ではない」と付け加えた。
イギリス政府は、2035年までに国内総生産(GDP)の3.5%を国防に充てると約束しているが、その財源についてはまだ明らかにしていない。
削減の詳細は確認されていないが、報道によるとスターマー氏は、60億ポンドの防衛費を捻出するため、すべての政府部門に対し資本予算を1%削減するよう求めているとされる。
ヒーリー氏は、イギリスはより早い2030年までに防衛支出を3%にするべきだと述べるとともに、今週提示された計画では進行が遅すぎると警告した。
また、スターマー氏が先週、イギリスが直面している脅威について説明しており、その中にはロシアが早ければ2030年にもNATOに攻撃を仕掛ける可能性が含まれていると述べた。
ヒーリー氏は書簡で、「我が軍の即応性を低下させる決定を強いられている」と首相に伝え、自分には辞任する「ほかに選択肢がなかった」とした。
戦略的防衛レビューは、脅威を抑止するために「戦闘即応体制」への移行を打ち出し、追加の弾薬、次世代戦闘機、ドローン、新型潜水艦のために数十億ポンド規模の追加支出を約束していた。
ヒーリー氏はここ数カ月、イギリス軍に対する要求が高まっているとの認識に基づき、追加投資を確保する必要性について警告してきた。
最大野党・保守党のジェイムズ・カートリッジ影の防衛相は、スターマー首相が「これほどわずかな資金」しか提示しなかったため、ヒーリー氏には「選択の余地がなかった」と述べた。
野党リフォームUKのリチャード・タイス副党首は、ヒーリー氏の辞任が「首相の真の優先順位を露呈した」とし、「事実上、キア・スターマーがイギリス国民の安全性を低下させていることを認めたことになる」と付け加えた。
防衛産業団体ADSのケヴィン・クレイヴン最高経営責任者(CEO)は、ヒーリー氏の辞任は「現在の状況を真に厳しく映し出すものだ」と述べ、「国家の安全保障と国防は会計係の仕事ではない」と付け加えた。