“一気に評価アップ! Jリーグ“ブレイク”ランキング1~10位。2024年、最も市場価値を上げたのは?

2024シーズンの明治安田Jリーグが幕を閉じた。台頭した選手もいれば、大きく成績を落とした選手もいるが、同シーズンに最もブレイクした選手は誰のなのだろうか。今回は、データサイト『transfermarkt』が算出したJリーガーの市場価値上昇額ランキングを紹介する。※2024年1月1日と2025年1月2日の市場価格を比較。価格が並んだ場合の順位はサイトに準拠。本文中のスタッツはJリーグ公式サイトを参照

10位:鈴木章斗(湘南ベルマーレ)

【写真:Getty Images】

生年月日:2003年7月30日(21歳) 市場価値の上昇額:60万ユーロ(約9600万円/400%UP) 市場価値の変動:15万ユーロ(約2400万円)→75万ユーロ(約1億2000万円)

2024リーグ戦成績:34試合10得点1アシスト

 Jリーグ“ブレイク”ランキングでトップ10に食い込んだのは、2022シーズンに湘南ベルマーレへと加入した鈴木章斗。加入3年目の2024シーズンに自身初のJリーグ2桁得点をマークした21歳のアタッカーは、驚異的なペースで市場価値を上げている。

 鈴木は中学時代にガンバ大阪のジュニアユースでプレーしていたが、当時の主戦場はサイドバックやサイドハーフだった。同ジュニアユースでレギュラーの座を掴むことができずにユース昇格を逃した鈴木は、阪南大学高等学校に進学する。

 そして2年時にアタッカーへコンバートされると、得点能力が一気に開花した。第100回全国高校サッカー選手権大会では同校のストライカーとして7得点をあげ、得点王に輝いている。

 湘南加入初年度の2022シーズンは、J1リーグで2試合に出場したのみ。0得点0アシストに終わったものの、翌2023シーズンに出場機会を増やし、リーグ戦27試合でピッチに立った。それでも個人成績は3得点0アシスト。まだ“爆発”の気配はそこまで漂わせていなかったと言える。

 迎えた2024シーズン、鈴木はリーグ戦34試合に出場して10得点1アシストをマーク。湘南の攻撃陣を力強くけん引した。1試合平均シュート数は「1.8」でチームトップタイ、枠内シュート総数は「25」でこちらもチームトップタイと、シュートへの積極性と精度が共に高いレベルにあったのは高く評価できるポイントだ。

 約1年間の市場価値上昇額は60万ユーロ(約9600万円)。上昇率にして400%と、鈴木の急成長ぶりは目を見張るものがある。2024シーズンのリーグ戦を15位でフィニッシュした湘南は、新シーズンでさらに上の順位を目指して戦っていくことになる。攻撃陣の「軸」と言える存在になった鈴木は、湘南躍進のカギを握るキーマンだ。


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 FC東京の若き守護神・野澤大志ブランドンが、短期間で市場価値を上昇させてJリーグ“ブレイク”ランキングの9位に入った。

 FC琉球とFC東京のユースで育成を受けた野澤は、FC東京U-18所属時の2018年9月にトップチーム2種登録を受けると、翌2019シーズンにはFC東京U-23の一員として、6月1日のJ3第10節・ザスパクサツ群馬(現:ザスパ群馬)戦でJリーグデビュー。その後、2020シーズンにトップチーム昇格を勝ち取った。

 いわてグルージャ盛岡への期限付き移籍(2021〜2022シーズン)を経験して逞しさを増した野澤は、2023シーズンにFC東京へ復帰。その直後は当時の正GKヤクブ・スウォビィクの控えだったものの、シーズン途中にレギュラーポジションを奪取すると、リーグ戦10試合でゴールマウスを守った(12失点)。

 2024シーズンはさらなる飛躍の1年となり、J1リーグで27試合に出場(32失点)。FC東京のゴールにカギをかける大役を担った。

 野澤の最大の持ち味は、抜群の反射神経を生かしたセービング技術。ペナルティエリア内シュートセーブ率はリーグ10位の「66.3%」だった。

 さらに秀逸なのは「38.8%」を記録したペナルティエリア内シュートパンチング率で、これはリーグ2位の数字だ。絶体絶命のピンチを救うシュートストップが冴えわたっていたことの表れである。

 約1年前、野澤の市場価値は20万ユーロ(約3200万円)だったが、現在は80万ユーロ(約1億2800万円)まで上昇。上昇率300%と、自身の市場価値を急激に高めている。

 2024シーズンの躍進を踏まえれば納得の伸び率だが、より一層の上昇曲線を描くためには何らかのタイトルをFC東京にもたらすような活躍が必要だろう。野澤はまだ22歳。より個人能力を高め、クラブを栄冠に導くための時間はたっぷりと残されている。


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 2024シーズンのFC町田ゼルビアは、クラブ史上初の舞台となったJ1リーグで優勝争いを演じ、多くの人を驚かせた。その町田を最後方から支えたのが、絶対的守護神の谷晃生である。

 退場処分による出場停止1試合を除くリーグ戦全試合でゴールマウスを守った男は、クラブの価値上昇に貢献しただけでなく自身の市場価値も大きく引き上げ、Jリーグ“ブレイク”ランキングで8位に食い込んだ。

 ガンバ大阪ユース出身の谷は、2016年4月に当時高校1年生ながらトップチームに2種登録された。2018シーズンには正式にトップチーム昇格。だが、G大阪では正ゴールキーパーの座を掴みきることができず、湘南ベルマーレやデンデル(当時ベルギー2部リーグ所属)への期限付き移籍を経験した。

 谷にとって潮目が変わったのは、2024シーズンに期限付き移籍した町田との巡り合わせだろう。前シーズンにJ2優勝を果たしてJ1初昇格を勝ち取ったクラブに活躍の場を求めた谷は、リーグ戦37試合に出場(32失点)。3位と大躍進を遂げた町田のゴールを守り続けた。

 クリーンシート総数は「18試合」で、堂々のリーグ1位。J1最少失点を誇った町田の守備力は、安定したセービングを披露し続けた谷の存在なくして実現しなかっただろう。

 2024シーズンの活躍に後押しされる形で、谷の市場価値は大台の100万ユーロ(約1億6000万円)に到達した。約1年前の金額が40万ユーロ(約6400万円)だったため、上昇率は150%にのぼる。谷の存在感は、自陣ゴール前だけでなく市場においても大きくなっていることが分かる。

 町田が悲願のJ1初制覇を達成するためには、2025シーズンから町田との契約が完全移籍に移行する谷がこれまで以上のパフォーマンスを見せる必要があるだろう。躍進を続けるクラブと共に、24歳の谷もより一層の進化を遂げる余地を十分に残している。


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 柏レイソルの絶対的エースとして多くの期待を背負う細谷真大が、Jリーグ“ブレイク”ランキングの7位に入った。

 2024シーズンの柏は、最終節でJ1残留を確定させる綱渡りの戦いぶり。細谷もチームの不振に引きずられるように本来の輝きを発揮しきれなかったが、それでも自身の市場価値を引き上げることに成功している。

 柏ユース出身の細谷にとって、2024シーズンは重い責任がのしかかる1年だった。チームはJ1リーグ開幕からの10試合で3勝5分2敗とスタートダッシュに失敗。その後も勝ち点を落とし続け、残留争いに巻き込まれた。

 前シーズンに34試合で14得点をあげてJリーグ優秀選手賞を受賞した細谷も、なかなかゴールに恵まれず。個人成績は32試合6得点5アシストに留まり、得点数は前シーズンの半分以下に落ち込んだ。

 それでも、市場における細谷の存在感は増すばかり。約1年間の市場価値上昇額は60万ユーロ(約9600万円)で、上昇率は60%を記録。現在の市場価値は160万ユーロ(約2億5600万円)に達した。スタッツに表れないチームへの貢献度が、細谷の市場価値を押し上げたのかもしれない。

 前線の選手を評価する上での最も明確な基準は依然として得点数である。しかし、現代サッカーのストライカーは得点を奪う“だけ”で高い評価を得られるわけではない。最前線から仕掛ける精力的な守備や、スペースを作るオフザボールなどの能力はFWが備えるべき必須事項となっており、2024シーズンの細谷は得点以外の要素を高いレベルでこなしていたと言える。

 市場価値上昇を裏付ける良質なプレーを見せた23歳の若きエースは、2025シーズンこそ“心のクラブ”の柏をタイトル獲得に導くことができるだろうか。


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 現代サッカーにおいて、サイドバック(SB)に求められる役割は多岐にわたっている。相手のサイド攻撃を封じる守備力はもちろん、攻撃参加時のオーバーラップ/インナーラップやクロスの質、フィニッシュの精度も重要な評価ポイントとなる。

 2024シーズンに鹿島アントラーズへと加入した濃野公人は、加入初年度にして絶対的な主力として活躍。SBながら高い得点力を見せ、市場における存在感を急速に高めている。

 J1リーグでは、鹿島の大卒新人として1993年の秋田豊、奥野僚右以来となる開幕スタメンを飾った。シーズンが進むにつれて、鹿島の右SBは完全に濃野のポジションに。大学3年生まで攻撃的なポジションでプレーしていた経験を生かした“超攻撃的右SB”として活躍を続け、31試合で9得点を叩き出した。

 それに伴い、濃野は移籍市場における新星として輝きを放った。大卒ルーキーだったため約1年前はゼロベースだったが、今や市場価値は75万ユーロ(約1億2000万円)に。やはり、デビューシーズンにSBらしからぬ決定力で9得点をマークしたインパクトの大きさは、自身の評価額の上昇と密接に関係しているものと思われる。

 シーズン終盤、濃野は右ひざ外側半月板損傷の影響で戦列を離れた。この離脱期間がなければ、個人成績はさらに高い数値を記録していた可能性が高い。一方、華々しいデビューを飾ったことで、今後は今まで以上の重圧がのしかかってくるかもしれない。

 鹿島は2024シーズンのリーグ戦を5位でフィニッシュ。2018シーズンのAFCチャンピオンズリーグ制覇以来、タイトルから遠ざかっている。新シーズンの濃野は「チームを勝たせる」選手になることを強く求められるはずだ。


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 Jリーグ“ブレイク”ランキングの5位に食い込んだのは、右サイドバック(SB)のポジションで圧倒的な存在感を誇る柏レイソルの関根大輝だ。この1年間における市場価値の伸び率は驚異の1500%。22歳の若武者が描く進化の上昇曲線は、留まることを知らない。

 拓殖大学在学中の2023年5月、関根は2025シーズンから柏へと加入することが内定した。同年5月に特別指定選手に登録されるも、2023シーズンはJリーグYBCルヴァンカップの1試合に出場したのみ。だが、クラブ側は関根のポテンシャルを高く評価し、2025シーズンからの加入予定を前倒しして、2024シーズンから正式にチームへ迎える決断を下した。

 そして同シーズン、関根はJ1リーグで開幕スタメンを飾ると、そのまま一気にレギュラーへと定着。無尽蔵のスタミナを武器に右サイドを幾度となく上下動するSBとして、一躍知名度を上げた。

 最終的に、関根はリーグ戦31試合に出場。攻守にわたる積極性はスタッツにも表れており、総スプリント回数はリーグ10位タイの「526回」、1試合平均クロス数はリーグ9位の「3.5本」を記録している。

 そして、関根の短期間での成長ぶりを如実に映し出しているのが市場価値の推移である。約1年前の評価額はわずか5万ユーロ(約800万円)だったものの、現在は80万ユーロ(約1億2800万円)まで上昇。伸び率1500%という数字には、今後のさらなる進化を予感させるには十分過ぎるインパクトがある。大台の2億円を突破する日もそう遠い未来ではないだろう。

 新シーズンに柏をタイトル獲得に導くような活躍ができれば、1年後の“ブレイク”ランキングではさらに上の位置で関根の名前を紹介することができるはずだ。


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 2024シーズンの川崎フロンターレは、J1リーグの戦いを8位で終えた。近年の川崎Fは鬼木達監督の下で圧倒的な強さを見せつけてきたが、2024シーズンは序盤戦から低迷。一時は16位とJ2降格圏寸前にまで順位を落としたこともあった。

 そのような1年間を通して苦しんだチームの中で、一筋の希望の光となったのが山田新。ユース出身の24歳は、最終的に得点ランキング3位タイの19得点をマークし、エースとしてチームをけん引し続けた。

 2022年6月に特別指定選手として川崎Fのトップチームに登録された山田は、同年8月3日のJリーグYBCルヴァンカップ・準々決勝第1戦のセレッソ大阪戦で先発デビュー。新型コロナウイルス拡大の影響でフィールドプレーヤーが足りず、緊急で巡ってきた出番だった。

 2023シーズンにはリーグ戦でも本格的に出場機会を得られるようになり、27試合で4得点1アシストをマーク。そして翌2024シーズンに、先述した通り覚醒のときを迎える。ゴール+アシスト「22」という成績は、チーム内でダントツの数字だ。

 市場価値の変動幅も凄まじいものがある。約1年前、山田の評価額は15万ユーロ(約2400万円)だったものの、現在は500%アップの90万ユーロ(約1億4400万円)。短期間で1億円の壁を悠々と超えていった。

 個人成績のインパクトを踏まえればさらに高値がついていてもおかしくなかったが、チームの低迷が若干のブレーキとなった可能性もある。「チームを勝たせる」ところまで山田の決定力が昇華していれば、市場価値の伸び率は異次元の数値を叩き出していたかもしれない。

 山田という男はどこまで進化を続けていくのだろうか。世界にその名を轟かせるようなストライカーにのし上がるためには、新シーズンの出来がカギを握っている。

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