再建断念し破産“夢の電池”再スタート決意 解任CEO「特許取り戻す」新会社設立

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 “夢の電池”と言われる次世代技術を開発していた福井県の会社が破産しました。これまで蓄積したデータや技術はどうなるのか、番組が取材すると、解雇された従業員を集めて新会社を立ち上げる動きがあることが分かりました。

■再建図るはずが「連絡ない」5カ月給与未払い

APB社 元社員 「何も説明がないので、いきなり破産と聞いてびっくりしました。経営陣から何一つ連絡もなくて、急に民事再生から破産になるという」
APB社 元社員 山内達也さん(61) 「我々もニュースの記事を見て、破産の手続きを開始したことを知った。3月の従業員に対してのコメントとは(経営陣が)全然違う方向で動いていた。5カ月間、給与は支払われていません」

 世界初となる次世代電池の開発を目指していた会社が、4月下旬に突然破産。社員にとっても「寝耳に水」のことでした。

 APB社を巡っては、設備の先行投資などがかさみ赤字が続くなか、経営権を巡る対立もあり、資金繰りが悪化。それでも経営陣は3月の時点では、社員に対して破産ではなく民事再生法の適用を申請し、「経営再建を図る」と説明していました。

 関係者から入手した、その時の説明会の映像です。

APB社 社長 「民事再生の道を最大限探れるように、これからも推進していく。お手上げで全部投げ売ります、諦めましたという話ではなくて、会社が生きる道としての民事再生の道を推進していく」

 通常の2倍の蓄電能力と発火や爆発リスクの低さから、“夢の電池”とも言われる「全樹脂電池」。開発していたAPB社には、経産省が所管する「NEDO」が75億円を、福井県と越前市も合わせて5億円の補助金を支出していました。

 経営再建から一転、破産に至った経緯とは?番組がAPB社の社長を取材しました。

APB社 社長 「破産については、私の立場からは公式コメントを出せません。私には力が何もなくなりましたので、すべて破産管財人が対応となります。民事再生には、多額の費用が必要になりますので、それを含めた最終的な判断に至りました」

 元々APB社を立ち上げたのは、日産自動車で世界初の量産型EV「リーフ」の車載用電池を開発し、日産のレジェンドの1人にも数えられる堀江英明氏(68)です。

 しかし、社内で対立があり、去年8月にCEOを解任されました。日本中から集めた技術者や開発中の技術はどうなるのでしょうか?

 前CEOの堀江氏と、先月までに退職した社員らが取材に応じました。

堀江氏 「突然破産申し立てがされて、しかも受理されたという話を聞いたので、大変驚愕(きょうがく)をしました」

「(Q.きょう集まった人たちは?)元APBの方で、私と一緒にやっていきたいと強く思っている方に、ここにご参集を頂いていて。そもそも私も経営者として、APBを作ったわけでありますから、まさかこんな事態になって、放っておくということは絶対ないわけでありますので。新しい会社をしっかり立ち上げて、そこに入って頂くという選択をしました。これは私の選択というよりか、皆様からの強いご要望を頂いた結果でもあります」

 行き場がなくなった社員を救うため、APB社と同じ福井県に新しい会社を立ち上げたといいます。今回、堀江氏の会社に入ることを決めた社員はこう話します。

APB社 元社員 「(堀江さんに)ついていくのは、非常にエキサイティングなことだと思いますので。一緒に仕事していきたいと強く思っています」
APB社 元社員 「今までやってきたことが無駄にならず、また続けられるのはすごく感謝しています。これ(全樹脂電池)を世の中に出して、世の中が変わっていくのをみんなで協力してやっていけるということが、これからの楽しみです」

 一方で、堀江氏が最も懸念しているのが、自ら開発し、APB社に帰属している「全樹脂電池」の特許の行方です。

堀江氏 「特許自身、私がほぼ100%考えて作ってきた特許になります。実際に今、五十数件の特許は登録をされているものになります。発明者からすると、発明者が特許にさわれないなんてありえない。これは、私はぜひ強く言いたい」

 APB社が破産し特許などの知的財産は、破産管財人の弁護士に管理・処分できる権利があります。

堀江氏 「我々が(特許を)しっかり受け取らせて頂くことができるように強く願っている。技術、全樹脂電池という誰も考えたこともない。絶対に熱暴走が起きない電池というものを実際に大きく立ち上げていくことの非常に大事なポイントになってくる」

「(Q.特許が戻ってこないと難しい?)そうですね。これは非常に大事だと考えています」

 新会社で“夢の電池”は実現できるのでしょうか?

堀江氏 「2年間のうちに大量生産技術を現実のものとして作っていきたい。これを作っていくことが、我々の世界に対しての使命だし、日本に対しても非常に大事な使命だと考えていますし、この電池を巨大な輸出産業にして日本をこれからも豊かにしながら、世界にしかもエネルギーという点に貢献をする。これが我々の使命。このミッションを必ず実現を絶対にさせてまいります」

(「グッド!モーニング」2025年5月6日放送分より)

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