ジェット推進爆弾に飛行機を改造したミサイル、ロシアとウクライナが即興と革新で知恵比べ

ウクライナのドローン(無人機)によって被害を受けたモスクワ郊外のアパート/Olesya Kurpyayeva/AFP/Getty Images

(CNN) ロシアとウクライナの軍隊は陸海空で互いを出し抜こう取り組んでおり、そこでは即興と革新が合言葉となっている。

最近の事例は、戦術と兵器の絶え間ない進化を如実に示している。そこには、ロシアの新型ジェット推進爆弾や、ウクライナによる長距離の「自爆爆弾」としての軽飛行機の使用、新たな海上無人機が含まれる。

両国は人工知能(AI)やロボット工学、無人システムの活用を急速に進めている。

だが、一部の技術革新は驚くほどローテクだ。

今月、ウクライナのある飛行場に夜が訪れると、少人数の男たちがロシア奥地2000キロを目指す飛行任務のために無人の軽飛行機を組み立てた。標的は、ロシア首都モスクワの東約370キロに位置する工業都市ジェルジンスクだ。

機体の着陸装置には、ごく簡素な爆弾が取り付けられていた。

軽飛行機が夜空に飛び立ってから数時間後、砲弾を製造しているジェルジンスクの工場で大規模な爆発が発生したと報告があった。

無人軽飛行機がウクライナから離陸し、ロシア奥地まで2000キロメートルの飛行任務に就く(Babel)

このプログラムは、コールサイン「ゴロニチ」を持つ航空愛好家によって考案されたもので、単座機を原始的ながらも効果的な長距離ミサイルに改造する。ウクライナメディア「バベル」の報道によれば、操縦席の代わりに追加の燃料タンクと、航法・通信システムに電力を供給するバッテリーが搭載されているという。

ゴロニチ氏とそのグループは現在、ウクライナ軍特殊部隊第14連隊に編入されており、CNNに対して部隊の活動について語った。ウクライナ軍によれば、同部隊は22日、ウクライナ国境から約800キロ離れたロシア・サランスク市にある工場への攻撃に関与した。

ゴロニチ氏の計画は、紛争の長期化に伴い両国が行ったいくつもの適応の一つであり、特に軽飛行機やドローン(無人機)の活用が顕著だ。

ウクライナ軍のシルスキー司令官は9月、機関銃を搭載した軽飛行機がロシアのドローンの迎撃に効果的であることが証明されており、軍は追加購入を検討すると述べた。

ロシアは最近、占領地に機関銃を搭載した小型飛行機を配備し、ロシア国内の目標に向かうウクライナの無人機を撃墜し始めた。

ロシアの失敗は、こうした取り組みをテレビで紹介したことだ。

ウクライナ保安庁(SBU)は、こうした航空機の拠点を特定。21日には、ロシア軍が飛行場に駐機してウクライナの長距離ドローンを迎撃するために使用していた2機の小型航空機を無力化したと発表した。

ウクライナ保安庁が公開したロシアの小型航空機の破壊を示す動画(Security Service of Ukraine)

すべての技術革新が基本的なものではない。

ウクライナの情報機関によれば、ロシアはここ数週間、保有する旧式の「自由落下型」爆弾を改造した新型の「ジェット推進誘導爆弾」の配備を開始した。

情報機関幹部によれば、この爆弾の射程と戦闘半径は約200キロだという。

ロシアはすでに旧ソ連時代の爆弾を射程約80キロの「滑空爆弾」に改造しており、航空機がウクライナの防空網から十分に離れた位置から発射できるようにしていた。先週は1日だけで、ウクライナに向けて約300発の滑空爆弾が発射された。ウクライナ軍参謀本部によると、1日の平均の発射数は100発余りとなっている。

「UMPB―5」と呼ばれる射程を延伸した新型滑空爆弾はここ数日、ウクライナ北東部ハルキウ州で使われている。

ウクライナは海上ドローン開発の先駆者で、特にロシアの黒海艦隊に対して成果をあげてきた。SBUは先ごろ、新世代のドローンを公開した。

ウクライナ保安庁が公開した新世代の海洋無人ドローン(Security Service of Ukraine)

SBUによれば、こうした海上ドローンのうち1台は6月にロシアとクリミア半島を結ぶ橋への攻撃に使われた。最新型の海上ドローンは1500キロ以上を移動でき、最大2000キロの爆弾を搭載できる。多連装ロケットランチャーシステムの装備も可能だ。

戦争が始まったころ、ウクライナ軍は戦術と装備の適応においてロシア軍よりもはるかに機敏だった。だが、時間がたつにつれて、ロシア軍は車両に防護用の装甲を取りつけ、新たな迷彩スタイルを習得し、小規模な部隊による突撃戦術を採用するなど、さまざまな対応を行ってきた。防衛アナリストのダラ・マシコット氏が指摘した。

ロシア国防省は、「ルビコン」と呼ばれる精鋭の無人機部隊を創設した。マシコット氏はフォーリン・アフェアーズ誌への寄稿で、ルビコンについて、さまざまな戦術を実験しており、他の武人機部隊での訓練方法に影響を与えていると述べた。

ウクライナは革新性に富んでおり、無人機やミサイルの国内生産が急増しているにものの、同盟国からの継続的な武器供給を必要としている。ロシアによるミサイルと無人機の集中攻撃は一晩で数百発におよぶこともあり、ウクライナの防空態勢の不備を改めて浮き彫りにしている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は24日夜から25日にかけて行われた首都キーウに対する攻撃を受けて、西側諸国の防衛装備の導入を改めて訴えた。

ウクライナがより射程の長いミサイルを求める理由の一つは、ロシア奥地のドローン工場といった標的への攻撃を可能にするためだ。しかし、トランプ米大統領は、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の供与は今のところ検討されていないと述べている。

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