性感染症の情報源は9割が“ネット検索” 学校や家庭の性教育が届かぬ実態 クリニック指摘「梅毒は初期であれば注射1回で治ることも知られていない」
性感染症を早期発見・早期治療するために必要なのは?(takasu/stock.adobe.com)
性感染症のクリニックを訪れた男女に「性感染症についての情報源」を尋ねたところ、約9割が「WEB検索」と回答しました。「学校からの教育」は1割程度、「家族からの情報提供」はわずか2%にとどまり、性に関する知識が家庭や教育現場ではほとんど共有されていない実態が明らかになりました。
この調査は、性感染症内科ペアライフクリニックが2025年2月〜3月にかけて実施したものです。対象は、同クリニックの横浜・渋谷・名古屋・札幌・大阪梅田の各院を受診した男女274人(男性183人、女性91人)で、任意のアンケートに回答した内容を集計しました。
同クリニックによると、昨今のSNSの普及などの影響で「『不特定多数の人と性的関係を持つ』ことも比較的安易となり、性病の感染者数が年々増加している」といいます。
性感染症についての知識の情報源(提供画像)
「性感染症について、どこで情報を得ていますか?」という質問に対し、最も多かったのが「WEB検索」(88.7%)でした。次いで「本・書籍」(24.5%)、「SNS」(17.9%)、「YouTubeなどの動画」(12.4%)が続き、「学校からの教育」は10.2%、「家族からの情報提供」は2.2%にとどまりました。
同クリニックは、「性感染症に関する知識が自己判断による断片的な情報に依存している現状を示しており、家庭や教育現場での性教育が“機能していない”ことを明確に浮き彫りにしています」と述べています。
来院前から知っていた性感染症の病名(提供画像)
「来院前に知っていた性感染症を教えてください」という質問では、「クラミジア」(90.9%)、「梅毒」(80.7%)、「淋病」(78.1%)、「HIV」(76.3%)といった主要な性感染症の認知度が高い一方、「カンジダ」(55.8%)、「ヘルペス」(46.0%)、「尖圭コンジローマ」(40.9%)、「マイコプラズマ」(27.4%)、「トリコモナス」(25.9%)、「ウレアプラズマ」(13.1%)などの認知度は半数以下にとどまりました。
同クリニックは、「クラミジア・梅毒の認知率は8割を超える一方、マイコプラズマは2割程度と、見過ごされやすい性感染症もある」としています。性感染症にはさまざまな種類があり、それぞれ感染経路・症状・治療法が異なることから「予防・早期発見・適切な治療には、『どのような種類の性感染症があるのか』を知ることが第一歩」だと説明しています。
梅毒に関する知識について(提供画像)
近年、感染者数が急増しているのが「梅毒」だといいます。「梅毒についての知識はどのくらいありますか?」と聞いたところ、「一通り理解している」と回答したのは22.3%でした。「感染経路は知っている」(20.4%)、「症状は知っている」(25.2%)といった部分的な理解も合わせても過半数には届かず、「名前は聞いたことがある程度」(21.5%)、「ほとんど知らない」(6.2%)、「全く知らない」(4.4%)という回答も一定数見られました。
同クリニックによると、梅毒は、初期には無症状だったり、軽いしこり程度だったりすることが多く、気づかずに放置されやすい疾患だといいます。
「梅毒の流行に知識が追いついておらず、正しく理解していない人が多い現状が判明した」と述べるとともに、「梅毒は初期であれば筋肉注射一回で治療できるが、進行すると皮膚・粘膜・内臓・神経に深刻な合併症を引き起こす可能性がある。早期発見と正しい知識の普及が急務です」と警鐘を鳴らしています。
同クリニックは今回の調査結果について、「『性病=クラミジア・HIV』といった限られた知識に偏っている実態と、その情報源が自己検索にほぼ依存しているという事実が判明した」としています。
さらに、「様々な病気と同じように、性感染症も早期発見・早期治療が非常に重要」であり、「そのためには正しい知識を信頼できる情報源から得る必要がある」としたうえで、「不安を感じた際には迷わず医療機関を受診できる仕組みづくりが求められている」と訴えています。
【出典】▽ペアライフクリニック/<第2弾>性感染症に関する意識調査
▽ペアライフクリニックPage 2