危険ウイルスをもつコウモリが住む洞窟に人間が入っていた
ウガンダの国立公園にある小さな洞窟で、危険なウイルスを持つコウモリが、野生動物や人間と日常的に接触していることが確認されました。
学術誌Current Biologyに掲載された研究を、IFLSが報じています。
危険ウイルスを持つコウモリの洞窟
問題の場所は、ウガンダ西部のクイーン・エリザベス国立公園にある「Python Cave(パイソン洞窟)」です。
ここにはマールブルグウイルスを保有するコウモリが大量に生息しています。このウイルスはエボラ出血熱と同じフィロウイルス科に属し、重症の出血熱を引き起こします。
潜伏期間は2〜21日。突然の発熱や頭痛、筋肉痛に始まり、重症化すると下痢や嘔吐、出血症状へと進行します。特効薬や承認ワクチンはなく、致死率は平均で約50%とされています。
研究チームは洞窟にカメラトラップを設置し、368夜にわたり観察しました。その結果、少なくとも14種・300回以上の野生動物の出入りが確認されました。
つまりここは、単なるコウモリの住処ではなく、多くの動物が集まる交差点だったのです。
捕食者がウイルス源に接触している
記録された動物には、ヒョウ、ヒヒ、ブルーモンキー、ナイルオオトカゲ、猛禽類などが含まれていました。特に注目されたのがヒョウで、コウモリを捕食して持ち去る様子が43回も撮影されています。
ここで重要なのは、コウモリ自身は病気にならないという点です。コウモリは「自然宿主」と呼ばれ、症状を出さずにウイルスを保持し続けます。排泄物や体液を通じてウイルスは環境中へ放出され、洞窟内で長期間循環する可能性があります。
その結果、捕食者や死肉食動物がウイルスに触れる機会が増え、感染が別の動物へ広がる可能性が生まれます。これは、人獣共通感染症が起きやすい典型的な環境です。
人間も洞窟に近づいている
そして、この洞窟には人間も訪れています。本来、洞窟の入口には「30メートル以上離れる」という指示があります。しかしカメラには、観光客や研究者、学生団体など214人が記録されていました。
しかもこの洞窟は、すでに人間の感染例と関連しています。2008年には洞窟を訪れた旅行者が帰国後に発症し、死亡しました。
捕食者・死肉食動物・人間が同じウイルス源に接触するたび、新たな感染の機会が生まれるので、研究者はこの状況を「ウイルスにとって、種の壁を越える理想的な舞台」と表現しています。
クイーン・エリザベス国立公園は観光地で、入園料を支払えば訪れることができます。もっとも、野生動物が生息するためガイド付きツアーが基本で、洞窟への接近も制限されています。それでも、実際には人が近づいてしまっていることが今回の研究で問題視されています。
人間が自然環境へ入り続ける限り、こうした接触は増えていくため、研究者は、危険な接触の監視と制限がパンデミック予防に不可欠だと警告しています。
Source: IFLS