火災報知器そっくり… 小学校内に隠しカメラ 校長ら「防犯目的」
愛知県江南市立の小学校で2022年、当時の男性教頭が校長の指示を受け、児童や保護者に無断で隠しカメラを校内に設置し、児童の様子を撮影していたことが市教育委員会などへの取材で判明した。
「盗撮ではないか」批判の声
元教頭は「(頻発していた)いたずらに速やかに対応したい思いがあった」などと説明するが、保護者からは「知らぬ間に撮影され気持ち悪い。盗撮ではないか」と批判の声が上がっている。
Advertisement市教委などによると、元教頭は22年6月、火災報知器の形状をした隠しカメラを、特定の児童の靴入れや廊下が映る画角で天井に設置した。
児童や保護者への事前説明はなく、「トラブルの状況がつかめた」として同年10月に取り外すまで無断で撮影していた。
市教委が確認したところ、学校側は「特定の児童の靴へのいたずらが頻発していたため、防犯目的で設置した」と説明。校長の指示で教頭がカメラを購入し、設置したという。
ただ、設置の許可や、映像の保管方法や保管期間を明確にした文書は作成されておらず、校長と教頭が内輪で決定、管理していた。
市教委「事前説明すべきだった」
市教委教育課の担当者は「児童や保護者に目的や期間などを事前説明すべきで、適切ではなかった」と対応に問題があったことを認めた。
また、カメラの設置を伏せていたことから「(防犯目的ではなく)監視目的だけになっていた」とした。
一方、無断撮影については「校長からの指示があり、個人的な使用ではないので『盗撮』とは認識していない」との見解を示した。
当時の校長は既に退職している。
元教頭は現在、市教委職員として勤務しており、毎日新聞の取材に「校長と相談してカメラを購入した。『ばれないように』との思いはなく、操作性や使いやすさで決めた」と釈明。カメラは自腹購入した私物で、「とにかく速やかに対応したい思いがあった」と述べた。
保護者の一人が情報開示請求で入手した映像には、複数の児童が廊下を歩く様子や靴を取り出す様子などが音声入りで映っていた。
現在も市教委が映像の一部を保管しており、市教委は「まだ調査する可能性があり、必要がなくなれば削除する」としている。
カメラで撮影されていたことを知ったある元児童は「すごく気持ち悪い」と嫌悪感を示す。
また、保護者からは「別の場所にもカメラが設置されているのではないか」と疑念の声も上がった。
高田和明教育長は「まずは経緯を把握し、(市教委として)どう説明するかなどを考えたい」と話している。
校内での盗撮を巡っては、女児の盗撮画像を交流サイト(SNS)のグループチャットで共有したとして、これまでに名古屋市や神奈川県の小中学校の教員らが逮捕されている。
また、長崎県佐世保市では市立小教員が、パソコンのカメラで授業中の児童を無断撮影した事案も起きている。
識者「学校への信頼が損なわれる」
名古屋大の中嶋哲彦名誉教授(教育行政学・教育法学)は、個人情報保護などの観点から設置目的や映像の取り扱いなどについて事前の説明と周知が不可欠とした上で、「同意なく不特定多数の児童を撮影して個人情報を収集しており、学校への信頼も損なわれる。児童に説明していない以上、いたずら抑止にもなっていない。別の目的で使っていたと疑われても仕方ない」と指摘している。【川瀬慎一朗】