【日本市況】株式が反発、米雇用ショック軽微で心理改善-債券は上昇

5日の日本市場では株式が反発。雇用統計ショックの影響から米国株が早期に立ち直り、投資家心理が改善した。非鉄金属や電力など人工知能(AI)・データセンター関連、機械や証券株を中心に幅広い業種が高い。

  債券も前日の米金利低下の流れを受けた買いで上昇し、日米金利差の縮小が意識される中で円は1ドル=147円を挟み堅調に推移した。

  野村アセットマネジメントの石黒英之チーフ・ストラテジストは、過度な米国のリセッション(景気後退)懸念が後退しており、世界的なリスクオフ一巡を好感したと指摘。AI関連株については、昨日の日本株の下げ局面でも影響は限定的で、強さを示していたと述べた。

日本市場の株式・債券・為替相場の動き
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.7%高の2936.54
  • 日経平均株価は0.6%高の4万0549円54銭
  • 長期国債先物9月物の終値は前日比32銭高の138円87銭
  • 新発10年国債利回りは3.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の1.47%
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.04%安の147円16銭-午後3時32分現在

株式

  株式相場は反発。電線など非鉄金属株、電力株などAI・データセンター関連銘柄が上げ、オーストラリア軍の次期フリゲート艦を受注する三菱重工業など機械株も高い。証券や保険など金融セクター、情報・通信株も堅調。

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  業種別33指数は非鉄や電気・ガスを中心に30業種が上昇、下落は海運や倉庫・運輸、小売りの3業種。TOPIXを構成する1680銘柄中、上昇は1191と下落428を大きく上回った。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、きょうは誰もが米国株の上昇に追随したと指摘。投資家は依然として米景気後退のリスクを念頭に置く半面、米ハイテク株に見られる成長の可能性がセンチメントを支えているとみていた。

債券

  債券相場は年内利下げ観測の強まりから米長期金利の低下が続いたことを受け買いが優勢となった。この日実施された10年国債入札については無難な結果との受け止めが多い。

  明治安田アセットマネジメント債券運用部の大﨑秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、米長期金利の低下で日本の10年債利回りは1.4%台まで下がり、米指標が注目を集めていると指摘。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、引き続き10年以下の手前のゾーンは日銀の利上げ先送りを意識して金利が下がりやすいと話していた。

  10年債入札の結果は最低落札価格が100円18銭と、市場予想100円21銭を下回り、小さいと好調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は14銭と前回の3銭から拡大した。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.06倍と、前回の3.51倍から低下した。

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  明治安田アセットの大﨑氏は10年債入札は無難だったが、テールは拡大して応札倍率は低下しており、「年金基金のリバランスなど一部の大手が中心で、他の投資家は価格が高く様子見姿勢になったのではないか」との見方を示した。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.750% 1.010% 1.475% 2.510% 3.085% 不成立 前日比 -1.0bp -1.5bp -3.0bp -4.0bp -2.5bp    -

外国為替

  円相場は1ドル=147円付近で堅調推移。米国の関税政策による景気減速懸念が強まる中、米金融当局が経済支援に向け利下げに踏み切るとの期待で米金利が低下し、日米金利差の縮小を意識した取引が円相場を支えている。

  オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを実施する確率が90%超に上昇。年内2回の利下げも完全に織り込まれている。4日の米10年国債利回りは約1カ月ぶりに4.2%を下回った。

   三井住友信託銀行米州部マーケットビジネスユニットの山本威調査役は、新規材料に乏しい中、「米雇用統計を受けたFRBの利下げ期待の高まりが引き続きドルの上値を抑える」と指摘。ただ、投機筋の円ショート(売り)ポジションが減少するなど、「国内の政治的な不透明感などを背景に円が継続して買われるかは若干疑問がある」とも話した。

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