IAEA理事会、イラン非難決議採択 イランは対抗措置通告
[ウィーン/ドバイ 12日 ロイター] - 国際原子力機関(IAEA)は12日の定例理事会で、イランが核不拡散義務に違反しているとして同国を非難する決議を採択した。これに対しイランは対抗措置を発表し、中東情勢の緊張が高まっている。
決議は米英仏独が提出した。理事会に出席した外交筋によると、賛成19カ国、棄権11カ国、反対3カ国(ロシア、中国、ブルキナファソ)で採択された。
IAEAは5月31日に加盟国に送付した報告書で、イランが未申告の核施設について、タイムリーに十分な説明をしておらず、IAEAとの保障措置協定の下で同国が負う義務を順守していないと指摘していた。
IAEA理事会がイランの核不拡散義務違反を正式に認定するのは約20年ぶり。これにより国連安全保障理事会への報告の可能性が高まっている。
IAEA当局者は、イランが対抗措置として新たなウラン濃縮施設を開設する計画を通告してきたと明らかにした。イランは施設の場所など、それ以上の詳細は明らかにしていないという。
イラン国営テレビは、これはIAEAの決議を受けて講じられた複数の措置の一つだと報じた。
イラン原子力庁のカマルバンディ報道官は国営テレビに対し、イランは2つの対抗措置をIAEAに通告したと述べた。同国中部フォルドウのウラン濃縮施設の遠心分離機を第1世代から第6世代に改良し、「濃縮ウランの生産を大幅に増加させる」計画がそのうちの一つだと説明した。
オマーンのバドル外相は12日、イランの核開発問題を巡る米イラン高官による6回目の協議が15日にオマーンで開催されると発表した。
イスラエルのメディアによると、イスラエルのデルメル戦略問題相と対外特務機関モサドのバルネア長官が米国とイランの協議に先立ちオマーンを訪問し、トランプ米政権のウィトコフ中東担当特使と会談する。イスラエルは会談で自国の立場を改めて米国に伝えるとみられる。
イラン国営メディアによると、イランのアラグチ外相は、IAEAが決議を採択したことで15日に予定されている米国との協議は「一段と複雑になる」と指摘。「われわれはイラン国民の権利を守るため、オマーンでの協議に参加する」と述べた。
IAEAの決議採択を受け、イスラエル外務省は、イランは核不拡散条約(NPT)を損ない、地域、国際的な安全に差し迫った脅威をもたらしているとの見解を示した。イランはNPTに署名しているが、イスラエルは署名していない。
米国はイスラエルがイランに対する軍事行動を起こす可能性を懸念。米国の情報機関によると、イスラエルはイランの核施設を攻撃する準備を進めている。ただ、米当局者はイスラエルはまだ最終決定を下していないとの見方を示している。
トランプ米大統領は、イランとの核協議で合意が得られなければイランを攻撃すると警告。国営メディアによると、イランのペゼシュキアン大統領は12日、イランの核施設が爆撃で破壊されても再建すると表明した。
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