発達障害を公表したら“職場いじめ”の対象に…県庁勤務の男性(45歳)が激白「あなたが悪いと一蹴され」
発達障害という言葉は知られてきたが、職場において発達障害者が合理的配慮を受けられているかということについては、発達障害者を100人近く取材してきた筆者からするとまだまだじゅうぶんでない印象がある。 今回紹介するのは、ASD(自閉スペクトラム症)の山本貴文さん(仮名・45歳)。山本さんは某県庁に務めているが、職場でのコミュニケーションがうまくいかず、上司にASDであることを公表したところ、パワハラの日々が始まり、現在は適応障害で休職中だ。 「発達障害の診断が降りたのは4年ほど前です。それまでも小学生の頃からずっといじめられていたので20代後半の頃に自分は発達障害なのではないかと疑っていました。何を言っても人に嫌われてしまうんです。小学生の頃、何かにつまずいて転んで怪我をした際、教師から転ぶほうが悪いと言われたり、クラスメイトから『これから山本君の裁判を行います』と言われてクラスメイト全員から吊し上げられたりしました。信じられないかもしれませんが、小学校の卒業アルバムに寄せ書きを載せてもらえなかったんです。 進路は、本当は大学院に進んで研究職に就きたかったのですが、途中で挫折して院を中退。第二新卒という形で県庁に勤務することになりました。県庁では研究職の部署に配属されたのですが、ASDの特性から上司が怒っていること自体に気付けなくて、どんどん職場で孤立していきました」 そこで、山本さんはクリニックに行って正式にASDの診断を取り、上司に発達障害をカミングアウトした。発達障害について理解のある職場だと、発達障害をオープンにした場合、合理的配慮を受けられる場合もあるが、山本さんの場合は違った。 「半年に一度、所属長面談があり、その際に発達障害を診断書を添えて公表したのですが、所属長の対応は『とりあえず預かっておく』とのことでした。後日、診断書は突き返されました。そして、以降の私の仕事がごく簡単なものだけになり、そのうえで私が言っていないことが言ったことになっていたり、これ以上誰かに相談するとあなたの立場が悪くなると脅されたりして、職場内でのいじめがひどくなりました。パワハラの内容を文書にして上司に渡したのですが、問題があると認めてもらえず2年以上パワハラに耐え続けてきました」 職場には相談窓口があり、そこにも相談したり、上司にも相談したりしたが「あなたが悪い」の一言で一蹴されてしまった。産業医にも相談したが、内科が専門の医師だったため、解決に繋がるようなアドバイスはもらえなかった。 また、公務員が差別をした場合、加害者に懲戒処分がくだされたり、刑事責任が負わされることもある。だからこそ、それが発覚した場合、職員の大量処分(不祥事)に繋がることから上の人たちがもみ消していると山本さんは語る。ASDの特性をもつ人の中には、気になったことがあると徹底的に調べ上げる人がいる。山本さんもそのような特性を持っており、職場の不祥事について調べたという。 「パワハラの他にもセクハラ、マタハラ、介護ハラ、カスハラももみ消され体制になっていることがわかりました。なんせ、カラスは白だと言われたらみんな白だと言わないといけないような職場だったので、どうにもこうにもいかなくなってしまいました。不祥事があったとしても基本、黙認なんです」
診断書を受け取ってもらえなかった
山本貴文さん