今夏E-1経由で30年W杯狙う新潟22歳DF稲村隼翔「高い目標ではあるけど実現できると思っている」初勝利のために決意の先発復帰

途中交代したDF稲村隼翔

[4.6 J1第9節 神戸 0-1 新潟 国立]

 コンディションは決して万全ではなかったはず。それでも決意を胸に国立のピッチに立ち、最高の結果を出した。アルビレックス新潟DF稲村隼翔(22)はJ1第9節・神戸戦で4試合ぶりに先発復帰。DFリーダーとして攻守に圧倒的なパフォーマンスを見せ、チームに今季初白星をもたらした。

 J1リーグ2連覇王者との国立競技場決戦。直近の3試合を負傷欠場していた稲村はこの大一番に照準を合わせていた。「国立で、相手も神戸で、自分たちが勝つにはふさわしい相手だった」。自身が出場した5試合も、離脱していた3試合も、チームの勝利はなし。初白星への決意をたぎらせながらリハビリに取り組んできた。 「自分が出ていた5試合も思うように結果が出ず、個人的にも納得のいくパフォーマンスではなかった。離脱した中でも選手たちが頑張ってくれていたし、復帰してからしっかり勝てるようにリハビリの期間を過ごしていた」

 離脱中に試合を外から見ることで学ぶこともあった。「千葉(和彦)さんが出ていた試合を上から見ていて、ラインコントロールのところだったり、ボールのさばきのところであらためて勉強になった。そこを意識して今日はピッチに立った」。この日はDFジェイソン・ゲリアと初めてCBコンビを組み、FW大迫勇也やFW武藤嘉紀といった強烈なストライカーに対し、きめ細かいラインコントロールで攻撃の威力を削いでいった。

 またビルドアップでもさすがのクオリティーを見せた。ボールホルダーを担う自身が相手選手のプレッシャーを引き受け、パスの受け手をフリーにするというだけでなく、受け手に寄っていくマーカーの重心も確認し、逆を取るのはもはやおなじみの光景。この日も稲村の配球力により、神戸のプレスが「奪えそうで奪えない」という場面が何度も見られた。 「自分たちのチームは(プレスに)“来てくれている”という捉え方をしていて、“来させて空けさせる”というイメージでやっている。そこはある程度自分たちでプレッシャーを受けて、リスクはあるけど、それを承知でプレーするのが新潟のCB。もっとできたという思いはあるけど、これまでの試合よりはいい形が多かったと思う」  後半28分にはこれまで痛めていた箇所の状態を見て大事を取って交代したが、約70分間で見せたパフォーマンスは圧巻そのもの。稲村自身は「1回、前半に(武藤に)競り負けたシーンがあったので、ああいうところで100%勝っていかないといけない」と前半38分のシーンを挙げて反省していたが、近年のJリーグを牽引する攻撃陣を相手に「一つもやらせない」という高い基準で戦っていることを印象付ける一戦となった。  東洋大4年次の昨季から特別指定選手としてJ1リーグ戦12試合とルヴァン杯も決勝を含む7試合などに出場し、インカレ制覇を経て今季から正式にプロ入りした稲村。早くも絶対的な主力に君臨しているが、同時に大迫、武藤のような対戦相手からも「プレーしていて駆け引きの多さ、選手同士のコミュニケーションの量が多いと感じた」と積極的に吸収し、経験を積み重ねているさなかにある。  そうした向上心を持ちつつ、高い目標も掲げている。J1リーグ戦の出場が続いていた昨年以降、稲村は今年7月に予定されているEAFF E-1選手権での代表入りという野心をたびたび公言。また目標を口にするだけでなく、その言葉にふさわしいプレーをピッチ上で見せ続けることを自身に課してきた。 「(日本代表は)プロに入った時点で目指すべきところだと思うし、この年代で入っていないとこれから先に厳しくなると思う。自分が口に出すことで周りからの見られ方もそういう目になるし、チームメートからもすごく信頼してくれているので、高い目標ではあるけど実現できると思っている」  その先には2030年のスペイン、ポルトガル、モロッコ共催W杯も現実的な目標として見据えている。「自分の中で目標を立てながら逆算して考えることが大切ということを中高で学んできたので、そうするようにしている」。大きな野心を抱きながらも地に足をつけ、プロサッカーキャリアを歩んでいく構えだ。  今季の前半戦はそうした明るい未来への足がかりを掴むためにも大事な時期となる。「それは個人の目標よりもチームの順位を上げていかないと叶わないことだと思うので、チームのためにプレーしたい。その中でも自分のパフォーマンスをもっと上げて、90分間を何試合も続けられるフィジカルもそうだし、頭の中を整理することもやっていきたい」。まずは身体の状態を整え、新潟のために奮闘を誓う。 (取材・文 竹内達也)★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!●2025シーズンJリーグ特集

関連記事: