「アメリカは同盟国の破壊を進めている」エマニュエル・トッド氏が警鐘を鳴らす、日本のアメリカとの向き合い方(文春オンライン)
今年2月28日に始まったアメリカとイスラエルによるイラン攻撃は、世界経済を混乱に陥れた。一度は60日間の暫定停戦の合意に達したものの、7月14日の停戦失効を受け、トランプ米大統領は海上封鎖を再開し、イラン側もホルムズ海峡の再封鎖で対抗。米軍はインフラを標的とした7夜連続の空爆を実施し、イランもヨルダンやバーレーンの米軍基地を攻撃した。そして7月18日、米中央軍は、イランからの攻撃を受けヨルダンで作戦に従事していた米兵2人が死亡、1人が行方不明になったと発表。中東情勢は再び緊迫化している。 【写真】この記事の写真を見る(2枚) 混迷が続く世界情勢に日本はどう対処すべきなのか。フランスの歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏が 月刊「文藝春秋」8月号 (発売中)の取材に応じ、最新の世界情勢を読み解くと同時に、日本とアメリカとの関係見直しについて指摘した。 ◆◆◆
米国は、意識的なのか無意識的なのか、「同盟国を破壊する政策」を推し進めています。すなわち、欧州の破壊、ペルシア湾岸諸国の破壊、そして日本経済と韓国経済の破壊です。台湾は半導体の生産によって異例の活況を呈していますが、米国が思い描く真のシナリオは、「中国との戦争において台湾を駒として使い捨てること」にあるのではないかという疑念が拭えません。 現在の米国の政権中枢には「深い絶望感」のようなものを感じます。「欧州、中東、極東といったユーラシアの支配拠点をいずれ手放さざるを得ないのなら、立ち去る前にいっそすべて破壊してしまおう」「ロシア、中国、イランの手に渡るくらいなら、自らの同盟国ごと焦土化してしまおう」という心理です。米国の真の目的が、もはや「ロシアの台頭の阻止」や「中国の台頭の抑止」ではなく――というのも、中露に対する米国の敗北はすでに明らかなので――、「欧州と日本の破壊」そのものにあるのだとすれば、日本が米国に追従するのは自殺行為です。 私はヨーロッパ人として、米国の指導層が欧州を侮辱する光景を日々、目にしています。米国は欧州を憎悪しているのです。しかも、私たちを最も強く憎んでいるのは、ヴァンス副大統領のような、彼らのなかで「最も理性的」とされる人々なのです。 「東アジアで緊張が高まるなかで、日本は米国に頼るしかない」という「日米同盟不可避論」は、もはや一種の“信仰”と化していますが、いま日本に求められているのは、「戦争は避けられない」という強迫観念から抜け出すことです。「戦争不可避論」は、米国が世界を支配するためのナラティブにすぎないからです。 ◆ 現在発売中の「 文藝春秋 」8月号では、「 現在は第三次世界大戦の渦中である 日本の米追従は自殺行為だ 」と題して、17ページに及ぶトッド氏の論考を掲載。なぜイランはアメリカに事実上の勝利を収めたのか、「エンジニア大国」のロシアとイラン、イランの「離陸(テイクオフ)」の世界史的意味、「理性的な独裁」と「非合理的なリベラル」、ウクライナ支援へと方針転換したドイツと米国など、世界の「今」を分析している(「文藝春秋」の電子版「 文藝春秋PLUS 」にも掲載)。
エマニュエル・トッド/文藝春秋 2026年8月号