パウエルFRB議長、数カ月以内にバランスシート縮小停止の可能性
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、FRBが数カ月以内にバランスシートの縮小を停止する可能性があると示唆した。
パウエル氏はまた、労働市場の見通しは引き続き悪化しているとの認識も示した。10月の追加利下げを見込む市場の期待を後押しするメッセージとなった。
パウエル議長は14日、フィラデルフィアで開かれた全米企業エコノミスト協会(NABE)のイベントで発言。事前に配布された原稿によれば、「われわれがかねて表明してきた計画は、準備預金が十分(ample)な状況と判断される水準をやや上回る時点でバランスシートのランオフ(償還に伴う保有証券減少)を停止するというものだ」と説明。
「今後数カ月でその水準に近づく可能性がある。この判断を下すため、われわれは幅広い指標を注視している」と述べた。
FRBは2022年以降、量的引き締め(QT)としてバランスシートの縮小を進めている。新型コロナウイルス禍で景気刺激のために行った数兆ドル規模の資産購入を巻き戻す取り組みだ。今年に入ってからはランオフの上限を減額し、縮小ペースを緩めた。
銀行の準備預金減少に伴い、米短期金融市場では資金調達の逼迫(ひっぱく)が長引いており、FRBがランオフ停止のタイミングに近づいている可能性が示唆されている。
パウエル氏はこの日の講演で、徐々に引き締まりつつある「兆候がいくつか見られる」と指摘。「2019年9月に起きたような短期金融市場の混乱を回避するため、連邦公開市場委員会(FOMC)の計画は意図的に慎重なアプローチを取っている」と説明した。
準備預金への付利
パウエル議長はまた、金融政策を実施する上で用いる主要手段の一つである商業銀行の準備預金への付利(IORB)について、効果的に機能しているとの見解を示した。IORBを巡っては、今年に入り一部議員の間で批判が出ている。
パウエル氏は、このツールによってFRBは金融政策スタンスを「適切」に調整することが可能になっていると説明した。
この制度は約20年前、金融システムの安定を支える目的で議会の承認を受け、世界金融危機の際に導入された。現在では、FRBが短期金利をコントロールする上で欠かせない手段となっている。
「もし準備預金やその他の負債への付利ができなくなれば、FRBは金利を制御する力を失うだろう」とパウエル議長。「つまり、われわれの十分な準備預金体制は、金融政策の実施および経済・金融の安定を支える上で極めて効果的なことが証明されているということだ」と語った。
政策見通し
経済情勢については、9月のFOMC会合以降、インフレと雇用の見通しにほとんど変化は見られないとパウエル議長は指摘。労働市場で弱さの兆候が強まっているとの認識を引き続き示した。
講演でパウエル氏は、「雇用に対する下振れリスクは高まっているようだ」と改めて述べた。
連邦政府機関の一部閉鎖により経済統計の公表が停止しているものの、「利用可能なデータによれば、レイオフも採用も低水準にとどまり、仕事の見つけやすさに対する家計の認識と、人材確保の難しさに対する企業の認識は共に低下傾向にある」とパウエル議長は指摘した。
講演後の質疑応答でパウエル議長は、政府閉鎖の影響を補うため、FRBはさまざまな民間データを活用して状況把握に努めていると説明。ただ公式なデータが入手できない状態が続けば、より深刻な問題になりかねないと述べた。
「われわれの立場からすれば、この状況が長引けば、特に10月分に関してデータを欠くことになる」とし、「対応が一段と困難になる可能性もある」と語った。
原題:Powell Says Fed May Stop Shrinking Balance Sheet in Months Ahead(抜粋)