侍ジャパンに現れた“試合をつくる男”。金丸夢斗の異常な安定感(GOETHE)

いよいよ開幕したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2026。大会前から投手陣に故障で離脱者が続出する事態となった侍ジャパンだが、そんなチームで新たな風を吹き込んで切れる存在として期待が高いのが金丸夢斗(中日)だ。 ルーキーイヤーの2025年は、大学4年時に腰を痛めた影響で出遅れたものの、5月以降は先発ローテーションに定着。味方の援護に恵まれず勝敗こそ2勝6敗ながらルーキーでは伊原陵人(阪神)に次ぐ96回2/3を投げ、防御率2.61という成績を残した。 15試合に先発して5イニング未満での降板は1試合もなく、先発投手が責任を果たしたと言われるクォリティースタート(QS・6イニング以上投げて自責点3位内)が12試合というのも新人離れした数字である。

そんな金丸は兵庫県の出身で、高校は神戸市立神港橘高校に進学しているが、2月生まれということもあってか入学当時は体が小さく、注目されるような選手ではなかったという。 高校で徐々に力をつけたものの、3年時には新型コロナウイルス感染拡大の影響で公式戦が中止。脚光を浴びることなく卒業となった。 ようやく金丸の名前が野球関係者の間から聞かれるようになったのは関西大学に入学してからだ。1年秋のリーグ戦で150キロを超えるスピードをマークすると、2年春には先発の一角に定着し、リーグトップとなる防御率0.33を記録したのだ。 初めて現場でピッチングを見ることができたのは2年春のリーグ戦後に行われた「関西オールスター5リーグ対抗戦」という、関西にある5つの大学野球連盟が選抜チームを編成して行われる大会だった。 関西学生野球連盟の代表に選ばれた金丸は初戦の関西六大学野球連盟選抜との試合に先発すると。立ち上がりに2点は失ったものの、2回から4回までの3イニングは0点に抑え、4奪三振を奪う好投でチームの勝利に貢献した。 当時のノートにもその能力の高さが分かるメモが残っている。 「立ち上がりから140キロ台後半を連続してマークするが、少し力みもあってか打者の手元で数字ほどの威力がなく、ストレートをとらえられるシーンが目立つ。 ただ2回以降は上手く修正し、リリースに力を集中してボールの勢いも制球も安定。低めのボールが落ちずにそのままストライクになる。大隣憲司(近畿大→ソフトバンク、ロッテ)とフォームは少し違うが、そこまで全力で腕を振っていないように見えてもボールの勢いがあるところはイメージが重なる。 コーナーにしっかり投げ分ける制球力も本格派左腕としては出色。緩急をつけるカーブ、手元で変化するスライダー、チェンジアップなど変化球もしっかり操る。まだ体つきは少し頼りない印象だけに、しっかり鍛えていけばまだまだスケールアップしそうな雰囲気は十分」


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このメモにもあるように、それ以降の金丸はさらに進化を遂げることとなる。2年秋には6勝0敗でチームを優勝に導きMVPを受賞。初めての全国大会となった明治神宮大会でも初戦の東農大北海道オホーツク戦で7回を投げて無失点、8奪三振の好投で勝利投手となった。 さらに3年時には春、秋ともに1敗も喫することなく、2年時から18連勝を記録。4年春の開幕戦となった京都大戦で味方のエラーで自責点0ながら負け投手となり連勝はストップしたものの、その後も4年秋まで72イニング連続自責点0という驚異的な成績を残したのだ。 ちなみに冒頭でも触れたように、4年春のリーグ戦中に腰を痛めており、それ以降はリリーフでの登板で本来での調子ではなかったものの、それでもここまでの成績を残せるというのは並の投手ではない。

大学時代、金丸の投球を見る機会は多かったが、とにかく驚かされたのがその安定感だ。 本人のなかで調子の良し悪しは当然あったと思われるが、試合を作ることができないというケースは一度もなかった。最後に先発での登板を見た4年春のリーグ戦、立命館大との試合を記録したノートにも以下のように書かれている。 「最初から一人で9回を投げるつもりということもあってか、全体的に抑えて投げているように見えるが、それでも145キロくらいのストレートが低めに決まる。ストレートについてはほとんど投げミスがない。 (中略) 130キロ台後半の直球と120キロ弱のチェンジアップも上手く混ぜて相手に的を縛らせず、投球のバリエーションも豊富。テイクバックで少し左手が下がってもスムーズに肘が高く上がり、フォームのバランスも安定。ここ一番でのボールの勢いもさすが。最後まで危なげなく一人で投げ切る」 故障で侍ジャパンを辞退した松井裕樹(パドレス)の代役として登板した2026年3月3日の阪神との練習試合でも3回を被安打1で無失点と危なげない投球を見せた。実績的には今大会選ばれた選手のなかでも最も少ないと言えるが、大学時代からの安定感を井端弘和監督も高く評価しており、その強みは十分にアピールできたはずだ。 この状態を維持して、侍ジャパン最後のピースとして、連覇に貢献してくれることを期待したい。

TEXT=西尾典文

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