ホワイトハウス東棟に「極秘」の地下壕を再建、計画の中身に迫る
2001年9月の米同時多発テロを受け、大統領危機管理センターで対策を協議するジョージ・W・ブッシュ大統領(机奥の左から2人目)ら/Eric Draper/The White House
(CNN) 米国の大統領はかつて、ホワイトハウスにおける安全な地下施設を秘密裏に建設するよう命じた。その施設の上には、イーストウィング(東棟)の増築部分を新設した。
話は1941年に遡(さかのぼ)る。同年の真珠湾攻撃の後、フランクリン・D・ルーズベルト大統領はホワイトハウスに防空壕(ごう)を建設するよう進言を受けていた。
ホワイトハウス歴史協会の歴史家ビル・シール氏によれば、当時「防空壕が建設中であることは公表されず、イーストウィングの建設だけが伝えられた」。
80年以上の時を経て、イーストウィングでは再び工事が行われている。これはトランプ大統領による広大なボールルーム(大広間)新設に向けた準備だ。この結果、古い歴史を持ちながらも時代遅れとなった地下施設は解体された。しかしここへ来て、多くの秘密事項が存在する中で、地下壕を再建する計画が浮上している。
現在行われている建設について、公に分かっていることはほとんどない。かつての施設は潜水艦を彷彿(ほうふつ)させる秘密の防空壕であり、大統領危機管理センター(PEOC)やその周辺の地下インフラが備わっていた。その空間はあらゆることに利用されてきた。ニクソン政権がポルノとみなして上映中止を求めたパロディー映画を鑑賞したのもここなら、バイデン前大統領のウクライナへの秘密訪問を計画したのもここだ。2001年9月11日の国防総省攻撃直前には、当時のチェイニー副大統領がこの施設へ避難してきた。
事情に詳しい情報筋によれば、進化する脅威に対抗するため、この施設は現在、新たな技術で再構築・更新されている可能性が高い。
とはいえ現時点では、このプロジェクトの存在自体ほとんど認識されていないのが実情だ。
国家首都計画委員会の最近の会合でボールルームが議題となった際、ホワイトハウスの管理・行政担当責任者を務めるジョシュア・フィッシャー氏は、ボールルームのプロジェクト全体が「重要な任務の遂行機能を高め」、「必要なセキュリティーを強化する」ことになると指摘。「将来の任務のニーズに沿った、強靭(きょうじん)で適応性のあるインフラを提供する」と、概括的に述べた。
委員会の承認なしに解体作業を開始した前例のない手法について追及されると、フィッシャー氏は地下で行われている「極秘」作業がその動機だと示唆した。
ホワイトハウスはCNNのコメント要請への回答を控えた。しかし先週、イーストウィングの工事中止を求める訴訟で提出された法廷文書で、ホワイトハウスは工事のプロセスを擁護。地下工事の中止は「国家安全保障を危険に晒(さら)し、ひいては公共の利益を損なう」と主張した。その根拠は訴訟に添付された「機密宣誓書」に記載されているとした。
その場所に以前何があったのか、また現在は何が行われているのか。これまで分かっていることを以下に挙げる。
「墓穴さながら」のシェルター
ルーズベルト時代の建設当初は防空壕を構想していたが、イーストウィングの地下施設は時を経て複数の機能を果たすように進化した。
イーストウィングから入る者は数階分下りた後、巨大な防護金庫室式の扉を通り抜け、天井の低い独立型の壕へと至る。この空間にはベッド、長期保存食品、水、その他の物資に加え、外部との安全な通信手段が備わっていると、内部に立ち入ったことがある情報筋が明かした。ただしこの人物は公式発言の許可を得ていない。
地下施設には上記のPEOCも含まれていた。ここは大統領とそのスタッフのための集中指揮統制施設として、核爆発やその他の大規模攻撃に耐えられるよう強化された。
シークレットサービス(大統領警護隊)の元要員でCNNコメンテーターのジョナサン・ワックロウ氏によれば、PEOCはシチュエーションルーム(危機管理室) と連携して機能する。
「シチュエーションルームは特に監視機能に注力したセンターでPEOCへ情報を提供するが、施設自体はウェストウィング(西棟)に位置する。ある程度は安全だが、堅牢な施設ではない」とワックロウ氏は説明する。
これに対し「PEOCが使用されるのは緊急時で、誰もが利用する場所ではない」という。「シチュエーションルームは政府のほぼ全機関が24時間体制で使用する」
歴史家のシール氏によれば、この「墓穴さながら」の空間をルーズベルトが訪れたのは一度きりだった。その後「この防空壕の視察は歴代大統領の就任初日の慣例となったが、過去20年でその重要性は低下した」。シール氏は11年にそう記している。
この空間に詳しい別の情報筋は、自由に発言できるよう匿名を条件に取材に応じ、当該の地下施設について「1940年代に建設された極めて複雑な潜水艦のようなもので、独立したユニットに個別の電源バックアップ、個別の給水システム、個別の空気浄化装置を備えている」と説明した。
「しかし全てのインフラは1940年代のものだ」と、この情報筋は付け加えた。
一人目の情報筋によれば、この施設には安全な避難経路も備わっていた。 大統領はこの経路を通って、ホワイトハウスの敷地内から別の場所へと移動できる仕組みだ。
イーストウィングは昨年10月に解体が始まった。二人目の情報筋は「全ての地下構造物が消失したようだ」と説明。これにはPEOCや冷暖房設備、ホワイトハウス警護室およびシークレットサービス制服部隊の地下施設が含まれるという。
地下壕が失われた場合の大統領の警護態勢について懸念する向きに対し、同情報筋は「緊急時でも大統領の安全を確保する余剰の設備は豊富にある」と述べた。
公費で賄われる高額な事業
計画が近いうちに公表される可能性は低いものの、詳細は時を経て明らかになるかもしれない。トランプ氏は米軍がボールルームの建設に「深く関与している」と示唆する。プロジェクトは複数の主体が一定の連携を取りながら遂行している公算が大きい。具体的には軍関係者やシークレットサービス、大統領府、高度なセキュリティー施設建設に豊富な経験を持つ請負業者クラーク・コンストラクション、そしてボールルーム建設を主導するシャローム・バラネス・アーキテクツといった事業者だ。シャロームは2001年9月11日の同時多発テロ後の国防総省再建・強化プロジェクトも率いた。
現在リスク管理のコンサルタントを務めるワックロウ氏の見通しによると、これまでの地下空間に代わるものは核爆発や航空機墜落といった物理的脅威の他、化学・生物兵器、電磁パルスなど潜在的な脅威への予測・対応が可能であり、かつその詳細を潜在的な敵対者に漏らさずに実行できるものになるという。
「極秘裏に建設可能な、最高機密扱いの施設を構想する必要がある。それは現在および将来の国家規模での脅威環境に対して持ちこたえられるものでなければならない」と同氏は述べた。
こうした側面を念頭に置いた建設コストがどれくらいの水準になるのかを把握するのは、事実上不可能だろう。トランプ氏がプロジェクトのボールルーム部分について提示したコストは、当初の2億ドル(約316億円)から現在は4億ドルへと膨れ上がった。そこに地下部分の費用は含まれていない。ボールルームは民間寄付で賄われるとトランプ氏は明言しているが、地下のあらゆるセキュリティーインフラに関しては最終的に米国納税者の負担になるとみられる。
「今日の脅威と明日の脅威を軽減しようと考える場合は、事実上新興の技術やインフラについて議論することになる。それらは現時点で恐らく商業的に入手不可能なものであり、実際の費用がどれほどになるのかは全く見通しが立たないだろう」とワックロウ氏は述べた。