「イラン政府は外交的に頑張ってた」「アメリカの経済制裁は国民を苦しめ続けた」陽気な在日イラン人店主が沈鬱な表情で語った“イラン人の本音”

NEWSポストセブン

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 トランプ米大統領の指示によって始まった米軍とイスラエル軍による対イラン軍事作戦。各メディアの報道によると、イラン国民は、この軍事作戦を歓迎する人と批判する人で二分化しているようだ。

【写真】沈鬱な表情で「イラン人の本音」を語ったマンスールさん。来日した際は58キロだったという若かりし頃の写真なども

 日本に住むイラン人は、事態をどうみているのか。東京・上板橋で居酒屋「花門」を営むコルドバッチェ・マンスールさん(62)もイラン出身だ。冗談を交えて爆盛りメニューを紹介する明るい姿に見覚えがある人もいるのではないだろうか。

 しかし、この日の彼は沈鬱な表情を浮かべていた。【前後編の前編】

「2月28日の土曜日でした。テヘランにいる妹からメッセージが届きました。『イスラエル軍がイランを空爆しました』『私たちのいる所は大丈夫』『私たちは元気です。ただネットが遮断されると思うので、心配しないで』と。それから毎日電話をかけているんですけど、出ないんですよね」

 これまでもデモや短期間のイスラエル側からの攻撃などで、ネットが遮断されることはあったという。しかし今回は米軍も参加しており、攻撃の規模は大きい。

「妹はテヘランにいて、とても仲が良いです。これまでLINEやWhatsApp、Facebookといろんなサービスを使って話していました。ひどい時は晩御飯まで見せられたりとかさ、『今ゆでています』みたいな。『そこまで(しなくて)いいです』って言ってもね。そんな感じだった。

 イラン人は家族を大切にするんです。離れていても毎日のようにやりとりしますよ。妹とも、妹の娘とも、妹の旦那ともね。だから今のように2週間近く連絡取れないだけで、本当にストレスです」

 遠く離れた場所の情報が当たり前に得られる現代において、インターネットの遮断は一番のストレスになっているようだ。

「みんな自分の携帯で映像いっぱい撮ってると思うんで、ネットに繋がったら、みんなSNSにアップするから、また情報がたくさん入ってくると思う。でも、いま現在は何も情報ないんですよ」

 そう言ってマンスールさんは肩を落とした。これまで苦境に立たされてきたイラン国民を思い、こう吐露する。

アメリカは何十年も前からイランに経済制裁をしています。自分の国だけじゃなく、自分の言うことを聞く国たちにも。日本もそうですよね。『イランには物を売るな』『イランからものを買うな』ってね。言うことを聞くまで制裁を続けるってことなんです。イランの石油は政府が管理しているから、政権に対して経済制裁の打撃ってそんなにないんですよ。でも国民はどうやって生活するんですか。国民を苦しめ続けてきただけなんですよ。

 外交的には、政府も頑張っているとは言えるんです。自分たちの仲間を増やすために、アメリカと仲良くない国と友達になっています。そういう国はアメリカが制裁に協力しろと言っても言うことを聞かないですから。中国、ロシア、北朝鮮です。政府がなぜそんなことをするかというと、国民のためなんです。国民は自分の子供と同じで、ご飯を食べさせなくちゃいけない」

 マンスールさんは、日本のメディアが批判してきたイランの体制側にも一定の理解を示している。ただしその感情は単純なものではなさそうだ。

イランを攻撃したアメリカへの怒りはあります。ただ『助けに来てくれた』と信じている国民もいるんですよ。アメリカは『イラン国民が大変だから、私たちは独裁者を倒しに来ている』『イランの石油が欲しいとか資源が欲しいとかじゃなくて、あくまで助けに来てるんですよ』というスタンスですから。

 もし『助けにきた』のが本当だったにせよ、アメリカは空爆じゃなくて別の方法はあったんじゃないかなと思います。いきなり空爆したら、イラン側は追い払わなきゃいけない。どこの国でも売られた喧嘩は買ってしまうのではないでしょうか。ましてや最高指導者をやられてしまったので……」

 マンスールさんの感情は揺れ動いているように感じた。米軍を諸手を挙げて歓迎することはできないようだ。

アメリカはやりすぎです。軍事施設をピンポイントに攻撃したって周りには民間人がいるじゃないですか。攻撃音の振動でガラスが割れたり、耳が聞こえなくなったり。その人たちについてこれからどうしてくれますかっていう思いがあります」

 アメリカイラン政府への思いは、周囲の在日イラン人の中でもそれぞれだという。しかし共通しているのは、「家族への思い」だ。

「周りに話を聞くと、まずみんな今回のことにびっくりしています。そして自分たちの家族の安否が気になって仕方ない。みんな家族がイランにいます。イラン人は家族をとても大切にします。

 しかし私たちはイランではなく、日本にいる。自分たちには何もできない。野球を応援しているのと同じです。外にいて、応援しているだけです」

 後編ではマンスールさんがイラン革命に参加した過去、現在爆盛りメニューを格安で提供する理由についても聞いた。

(後編につづく)

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