カナダの長距離空対空ミサイル取得、実質的な候補はAIM
カナダは戦闘機で運用する「長距離空対空ミサイル=LRAAM取得」の運用要件を策定中で、LRAAMの実質的な候補はAIM-260 JATMとミーティアしかないのだが、様々な条件や要因を加味すれば現実的にLRAAMの初期ニーズを満たすのはミーティアしかない。
参考:NORAD modernization project timelines 参考:Canada reveals first requirements for future long-range air-to-air missile
米国は中国とのミサイルギャップを解消するためAIM-260 JATM(AIM-120の射程を大きく上回る長射程を実現した空対空ミサイルで、PL-15と同じデュアルパルスロケットモーターを採用している可能性が高い)を開発中で、オーストラリアのマールズ国防相は6日「AIM-260 JATMを調達するため7億豪ドルを超える投資を行う」と、豪国防省も「AIM-260 JATMはF/A-18Fに搭載され、その後にF-35AとEA-18Gにも搭載する予定だ」と発表し、オーストラリアは米国以外でAIM-260 JATMを運用する初めての国となる。
出典:Australian Defence Force/LACW Annika Smit
国防総省が3月17日に発行した武器売却通知(Transmittal No.26-03)では「オーストラリアに対するAIM-260 JATM×最大450発、AIM-260 JATM ITV×最大5基、AIM-260 JATM GTV×最大30基、各種関連費用を含む売却額は31.6億ドル」「AIM-260 JATMはMコードを使用した精密測位技術によって既存の兵器より射程と効果が向上している」「この潜在的な売却の機密区分は最高機密級だ」と言及しているため、マールズ国防相が言及した7億豪ドルの投資はAIM-260 JATM調達に必要な資金の一部でしかない。
そしてAIM-260 JATMを調達する次の国がどこになるのかだが、カナダは2022年6月に発表した北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)近代化計画の中で「カナダの戦闘機が長距離からの脅威に対応できる能力を維持できるよう、我々は新型の高性能空対空ミサイルを調達する」と言及し、公式に「長距離空対空ミサイル=LRAAM取得」を明記していたが、対米関係の悪化やF-35A調達見直しの影響を受けて「将来の戦闘機が運用する長距離空対空ミサイルの調達」に関する先行きは不透明になっていたものの、LRAAMの運用要件策定が近代化計画に明記された2026年に決定されるらしい。
出典:NAVAIR
カナダ国防省から独占的に公式説明を受けた英シェパードは5日「極めて高いステルス性を備え、先進的なレーダー技術によって誘導され、敵のジャミングに対してより高い耐性を持つシステムの調達を意図している」「LRAAMは高度な視程外射程戦闘に投入され、超長距離からの脅威に対抗することを目的としている」「カナダ政府は防衛産業戦略を発表し、防衛調達費の70%をカナダ国内産業に振り向ける方針を決定したが、海外製システムの購入にも門戸を開いている」「このような条件からLRAAMの初期要求を満たす潜在的な候補の絞り込みは簡単でAIM-260 JATM、ミーティア、PL-15だ」と報じた。
カナダは米国の同盟国で中国を潜在的な敵対国と見なしているためPL-15を取得する可能性は極めて低く、幾つかの国で開発が進められている次世代空対空ミサイルは初期運用能力の2030年獲得に間に合わないため、LRAAMの実質的な候補はAIM-260 JATMとミーティアに絞り込まれ、シェパードは「AIM-260 JATMの方がカナダの技術的要求に合致しているかもしれないが、現実的な選択肢として浮上するのはミーティアの方だ」と予想している。
出典:SAAB
カナダは米国の中間選挙後にF-35A調達見直しの結果を発表する可能性が高く、現地の報道によれば「F-35Aのみの調達」ではなく「F-35A×30機とグリペンE×60機もしくはF-35A×72機から88機とグリペンE×72機といった混成戦力」になりそうで、グリペンEへのAIM-260 JATM統合を短期的に認める可能性は限りなくゼロに近く、F-35A Block4が完成すればミーティアの運用が可能になるため運用維持のコストを最適化するならLRAAMをミーティアに絞った方が賢い。
ただし、F-35Aを72機から88機も調達するならAIM-260 JATMを導入するだけのボリュームもあるように見えるため、結局のところはF-35A調達見直し結果次第で、仮にAIM-260 JATMを導入するにしても初期運用能力の獲得時期を守るより、政治的な意向でトランプ大統領の任期が切れてから導入に動くことを選ぶだろう。
出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee
そもそもF-35AへのAIM-260 JATM統合は2030年初頭にならないと完成しないBlock4に依存しているため、何らかの魔法か奇跡でも起きない限り、カナダ軍が要求している初期運用能力の2030年獲得に間に合わず、グリペンEを並行導入するなら高確率でミーティアも導入することになるため、現実的にもLRAAMの初期ニーズを満たすのはミーティアしかない。
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※アイキャッチ画像の出典:MBDA