絶叫朝礼、叱責、炎上…それでも「ずっと楽しそう」な若者たち 『ザ・ノンフィクション』取材Dが問いかける「働くとは何か」
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フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、22日に放送された「今どきじゃない会社で夢みる僕と私の新入社員物語 前編」。東京・池袋のベンチャー企業「グローバルパートナーズ」に飛び込んだ新入社員たちの1年を追った作品で、29日に「後編」が放送される。
絶叫する朝礼、叱責が飛び交う職場、そして“炎上もお構いなし”という価値観…一見すると“今どきじゃない”会社で、なぜ若者たちは笑いながら働いているのか。鳥居稔太ディレクター(テレビマンユニオン)が見たのは、“ブラックかホワイトか”では語れない、「働くことの本質」だった――。
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仕事中に涙する新入社員 (C)フジテレビ
外から見れば“ブラック”にも映るが…
『ザ・ノンフィクション』で24年9月に放送された「ほめる人とほめられる人 ~褒めますおじさん 令和の路上物語~」でディレクターデビューを飾り、「第41回ATP賞テレビグランプリ」で優秀新人賞に輝いた鳥居D。それ以来となる今回の企画を立てるにあたり、当初は「会社をすぐ辞めた若者」を取材したいと考えていた。近年、入社後すぐに退職する若者のニュースを目にする機会が増える中で、「なぜ、同世代の若者たちが、すぐ辞めてしまうのか」を知りたいという興味があった。
しかし、実際にそうした対象を見つけるのに苦戦する中で出会ったのが、グローバルパートナーズ。「ゾス!」という大きな掛け声が飛び交い、上司からの厳しい叱責、同僚との激しい競争、残業、会社での飲み会と、かつて昭和の日本企業さながらの光景が今も残る会社に、若者たちが夢を抱え飛び込んでいた。
その社風は、外から見れば“ブラック”にも映るが、表面的なイメージだけでなく、そこで働く社員たちが何を思い、なぜその環境を選ぶのかに目を向けることで、別の角度から「働くとは何か」を描けるのではないかと考えた。
ただ取材前は、この会社に対して「正直、見ていて抵抗がありました」と率直に振り返る。主な業務はテレアポで、上司から厳しく詰められる場面も。とても“楽しそうな仕事”には見えず、なぜ若者たちがそこまで熱量を持って働けるのか、最初は理解できなかったという。
なぜ「炎上なんてお構いなし」になれるのか
だが、取材を重ねる中で、その見方は大きく変わっていった。社員たちは会社を単なる職場としてではなく、仲間と時間を共有する居場所のように捉えていたのだ。休みの日にも同僚に会うために会社へ来たり、特に用事がなくてもその場に残っていたりする。仕事そのものだけではなく、会社という空間や人間関係を含めて愛着を持っている様子が見えてきた。
鳥居Dはその空気を「高校の部活のような感覚」と表現。自身も高校まで野球部だったこともあり、つらい練習や苦しい時も、仲間と一緒なら目標に向かって乗り越えられる…そうした連帯感が、この会社には色濃く存在するのを感じた。世間一般がイメージする“会社で働く”姿とは異なり、彼らは「ずっと楽しそうに働いていたんです」と驚かされたという。
離職率は低いといい、新入社員15人のうち、辞めたのは2人。「SNSなどで会社のスタイルをオープンにしているから、皆さん社風をある程度理解した上で入ってきていることも大きいと思います」と推察した。
しかし、そのSNSでは、全員で絶叫しながら社訓を叫ぶ朝礼や、結果を出せない者に上司が厳しい言葉で指導する場面を発信して炎上することも。それでも、本人たちは「炎上なんてお構いなし」と、どこ吹く風だ。
今や多くの企業がSNSの炎上対策に腐心する中、なぜこのように捉えることができるのか。
「社長を筆頭に、このスタイルで突き進むんだという信念に、社員一人ひとりが賛同しているんです。自分たちが楽しいんだから、周りの意見を気にする必要はないんだという社長の思いに共感しているのが、大きいと思います」
※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。
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現在25歳の鳥居Dは、グローバルパートナーズの社員たちと自身の共通点にも気づかされた。同世代には「仕事はほどほどにして、プライベートを大事にしたい」と考える人も多い中、自分は夜遅くまで取材をしたり、休みがない時期が続くなど、仕事に大きく比重を置く側の人間だった。そのため取材中には、社員から「鳥居さんのほうがブラックですよね」と言われることもあったという。
ただ、「ゾス飲み」と呼ばれる飲み会で社員が皆ダンスする様子を撮影していた時、「鳥居さんも!」とカメラを奪われ、ダンスに参加させられたことには、「本当にああいうノリが得意じゃないので、正直きつかったです。でも、取材している立場なので、断るわけにもいかなくて…(笑)」と本音も漏らした。
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全員が絶叫しながら行う円陣の様子 (C)フジテレビ
会社で楽しむ姿に「うらやましい」思いも
取材を通じて見えてきたのは、この会社が単純な“昭和的企業”ではないということ。見た目は体育会系で厳しい上下関係があるように映る一方で、実際には外国籍の社員や女性、子どもを持つ社員、中卒から有名大学卒まで、さまざまな背景を持つ人材を受け入れている。やる気がある人であれば広く門戸を開くという、その柔軟さと多様性は、むしろ“今どき”とも言えるかもしれない。
部下を厳しく叱る上司は社員たちからの信頼が厚く、ランチを共にし、日常的なコミュニケーションを重ねているという。「怒られて受け入れられる人と、そうでない人はやっぱりいると思います。そこはお互いの信頼関係だったり、その相手を尊敬しているかどうか、普段の関わり方だったりで変わってくる。パワハラになるかならないかも、結局そこなのかなと思いました」と、改めて感じたそうだ。
当初は「なぜこんな会社で働くのか」「早く辞めればいいのに」と思っていたが、「気づけば彼らのほうが、僕らよりもずっと楽しそうに働いているんです。会社に行くことを楽しんでいて、人生をすごく楽しんでいるように見えてきました」と、鳥居Dの見方は大きく変わった。
「今回の放送を見て、彼らのことを面白がる人もいるかもしれない。でも、多くの人が翌日からまた会社に行って、楽しくない日常を送っているのではないでしょうか。そう考えると、会社で楽しんでいる彼らのほうが、うらやましいなと思ったりもします」
番組で「なぜ彼らはそこで働くのか」を問い続ける中で、鳥居D自身もまた「なぜ今の会社で働いているのか」を考えさせられたという。それだけに、視聴者にとっても「“自分はどうなんだろう”と考えるきっかけになってくれたら」と願っている。
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