藤井聡太名人 大人な雰囲気の羽織まとい、見事な手順で熱戦制す
第83期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催)の第1局で先勝した藤井聡太名人(22)が、対局から一夜明けた11日朝、東京都文京区のホテル椿山荘東京で取材に応じた。
対局内容もさることながら、これまでとは違った雰囲気の羽織にも注目が集まった。
藤井名人は「ファンから頂いたもので、これまで持っているものと雰囲気が違って新鮮な感じがした」と、開幕局で新たな羽織を着用した理由を明かした。
Advertisement一層気が引き締まった
9日の対局開始前、対局室に現れた藤井名人の黒地に朱色のぼかしが入った斬新なデザインの羽織姿が目を引いた。さらに羽織を脱ぐ時には、駒をあしらっている裏地も見えた。「おしゃれ」「大人でかっこいい」とネット上でも話題になっていた。
藤井名人は羽織を見たときの第一印象をこう語る。
「今回の羽織はファンの方から頂いたもの。色合いも含めてこれまで持っているものとも雰囲気が結構違い、新鮮な感じがしました」
新たなシリーズが始まるタイミングでこの羽織を着ることを決め、「一層、気持ちが引き締まるところはありました」。
長手数の詰み手順「複雑ではなかった」
本局は終盤、9七金(112手目)から長手数の詰みに討ち取り、3月末の詰将棋解答選手権で6度目の優勝をさらった終盤力を見せつけた。
記者が手元の将棋ソフトで調べると41手詰めで、歩以外の持ち駒を使い切って詰む見事な手順だった。
この詰み手順を視野に入れていたのは12手前。
「8一飛(100手目)の段階で、桂馬を2枚持ったら選択肢に入ってくると思っていました」
2四桂(107手目)で2枚目の桂馬が手に入ることが確定し、「2四桂のところで改めて考えて、9七金まで進めば詰みそうだと考えていました」。
ただ、9六桂(110手目)と打つ直前は、自玉に詰めろ(放置すると玉を詰まされる状態)がかかっていた。
一歩間違えると負けになる紙一重の局面だったが、読みは正確だった。
「自玉が詰むかどうか際どい形でした。9六桂に7八玉なら飛車を取りに行って(詰めろを解消し)、9六同香なら詰ましに行こうと考えました」
検討室では、この詰み手順に気付いた棋士はいなかった。
だが、藤井名人は「長手数で結構読むべき変化も少なくないので、それを何回か読み直して慎重に確認しました」と万全を期して実戦の手順に踏み込んだ。
詰みの難易度を尋ねられると、涼しげな顔で説明した。
「持ち駒が増えて(盤上の駒が減って)局面がさっぱりしてきたので、詰み手順そのものはものすごく複雑ということはないと思います」【丸山進】