「うさぎ日本語学校」設立計画 ルフィ幹部「詐欺」にこだわり 法廷で明かした組織の内実
「ルフィ」を名乗る指示役らが関与したとされる一連の広域強盗事件で、強盗致傷幇助(ほうじょ)罪などに問われ、23日に東京地裁で懲役20年の判決を受けた小島智信被告(47)。法廷では、フィリピンを拠点に特殊詐欺や強盗を繰り返したルフィグループの内実について自ら口を開いた。明らかになったのは、幹部の関係や高度な組織性、日本語学校設立など、継続的に犯行を行うための計画の数々だった。
高度な組織性
《就業時間 月~金 午前8時~午後5時 7時45分までにはいるように》。就業規則のようなこの一節は、公判で提出された特殊詐欺のかけ子用マニュアルに書かれていたものだ。小島被告も組織をたびたび「会社」と表現。高い組織性が浮かぶ。
小島被告は借金を抱え、平成30年夏にフィリピンに渡航した。肩代わりした渡辺優樹被告(41)=強盗致死罪などで起訴=を「ボス」と忠誠を誓い、組織の庶務などを担った。
組織は「箱」と呼ぶ複数のかけ子グループを傘下に抱え、30年12月には今村磨人(きよと)被告(41)=同=が管理する「K箱」を設立。藤田聖也(としや)被告(41)=同=は令和元年9月ごろ加わって受け子の勧誘を担うなど、強盗事件で指示役となる人物がそろった。
拠点の偽装に
小島被告によると、組織が拡大する中で、渡辺被告にはフィリピンに日本語学校を設立する計画もあったという。日本人が集まっても不自然ではない上、フィリピンでの就労ビザが得られる可能性もあり、拠点の偽装には最適と思われた。校名は「うさぎ日本語学校」。渡辺被告が「詐欺」の入ったその名称にこだわったという。
計画は関係者が逮捕され頓挫する。令和元年8月ごろ、組織は廃ホテルを購入して拠点にしたが11月、現地当局に摘発される。幹部4人は散り散りに逃走し、3年4月までに全員が現地入管施設に収容され、再会する。
賄賂渡しスマホ使用
収容所では、職員に賄賂を渡せばスマートフォンを使うことができたほか、「VIPルーム」と呼ばれるエアコン付き個室に入る権利を売買できた。被告らは脱出のため、担当者に渡す賄賂などの資金を必要としていた。そこで始まったのが一連の強盗事件だった。
検察側によると、今村被告が「ルフィ」などと名乗り、4年3月ごろから独自に日本国内へ向けて強盗を指示。そこに渡辺、藤田両被告が加わったという。小島被告は今村被告とは仲違いしていた
ため、藤田被告を通じ、実行役の募集をしていたと主張する。
奪ったカネは渡辺被告の口座を介して送金した。だが、5年1月の東京都狛江市での強盗致死事件を機に、捜査が進展。2月には4人とも日本に強制送還された。
組織の内実を明かした理由を「贖罪」と語った小島被告。東京地裁は判決で「組織運営の実態解明に相当貢献した」とも認定した。開始時期が決まっていないほかの幹部3人の公判でも証言する意向を示しており、実態の解明が期待される。(橘川玲奈)