判断しながら試合を進め、タフさ、走り切る力も表現。FC東京U-18が青森山田とのプレミアEAST開幕戦を制す
[4.5 プレミアリーグEAST第1節 FC東京U-18 2-1 青森山田高 東京ガス武蔵野苑多目的グランド]
“高校年代最高峰のリーグ戦”高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2025 EASTが5日に開幕し、ともに優勝経験を持つFC東京U-18と青森山田高が対戦した。FC東京U-18がU-18日本代表MF菅原悠太(3年)とFW江口海渡(3年)のゴールによって2-1で勝利。目標の優勝へ向け、好スタートを切った。
昨年10位で8年ぶり2回目の優勝を目指すFC東京U-18の先発はGK渡邊麻舟(2年)、右から小島颯来(3年)、鈴木楓(3年)、ゲーム主将の佐々木将英(3年/U-18日本代表)、高橋裕哉(3年)の4バック、中盤は二階堂凛太郎(3年)、田邊晴大(3年)が中央に入り、右に菅原、左に友松祐貴(2年)、そして田中希和(3年/U-18日本代表)と江口が前線に構えた。
一方、昨年8位で2年ぶり5回目の優勝を狙う青森山田は、GK松田駿主将(3年/U-17日本高校選抜)、右SB菱田一清(3年)、CB月舘汰壱アブーバクル(3年/U-18日本代表)、CB大場光翔(3年)、左SB福井史弥(3年)、中盤中央に長谷川滉亮(3年)と小山田蓮(3年)が入り、右SH杉山大起(3年)、左SH今田匠(3年)、そして桑原唯斗(3年と井上愼太(3年が2トップを組んだ。
前半5分、FC東京が先制する。左サイドから押し込むと、中央でボールを受けた菅原が前方の田中につける。そこからテンポ良くボールを動かし、江口のヒールパスで菅原が抜け出す。最後はGKとの1対1をから菅原が左足シュートを決め、1-0とした。
前半5分、FC東京U-18のU-18日本代表MF菅原悠太が左足で先制ゴール
青森山田は課題の立ち上がりに失点。その後、前からボールを取りに行くが、FC東京は佐藤由紀彦監督が「技術のところはもうほんとに妥協なしでやっているので。1人1人の個人がどれぐらい前を向けるか、どれぐらい相手の嫌な位置に立てるか、そこにどれぐらい差せるか、その中にはラインブレイクやライン間があったりしてっていうところも、ずっとやっているところです」と説明するように、相手に追い込まれかけても田邊らが個々の技術力や立ち位置によってボールをキープし続け、田中や菅原が空いたスペースを狙ってPA付近まで前進する。 15分には佐々木が最終ラインからドリブルで大きく前へ出ると、左サイドで鋭い動きを見せていた友松がクロスへ持ち込む。また、蹴ってくる相手への守備で飛び込みすぎるのではなく、ミドルゾーンでボールを奪い、カウンターを打ち込むという狙いも選手たちは目線を合わせながら表現していた。 だが、失点後、徐々にギアを上げていった青森山田も前線の桑原、井上からオールプレスで相手に圧力をかける。22分には今田のインターセプトから桑原が右へ繋ぎ、繰り返し仕掛けていた杉山が右足シュート。29分にも長谷川の回収から速攻へ持ち込み、32分には今田と小山田が連続シュートを放った。 また、GK松田が左の島津や右の菱田へ正確なロングキックを通して攻撃の起点に。FC東京は二階堂が落ちてビルドアップに参加するなど、ボールの運び方を変えながら前線までボールを繋いでいたが、青森山田はCB月舘が非常に力強い前へのアプローチでボールを奪い返していた。
青森山田のU-18日本代表CB月舘汰壱アブーバクルが抜群の高さを発揮する
FC東京は3分、カウンターから友松が抜け出すが、追走した青森山田SB菱田がタックルを決める。12分にも速攻から菅原がPAへ侵入したものの、青森山田GK松田がビッグセーブ。青森山田も井上が左サイドを突破したほか、島津がクロスへ持ち込むも、小島や鈴木ら各選手が味方のミスをカバーするFC東京DF陣にゴール前で跳ね返されてしまう。 逆に17分、FC東京が追加点を奪う。相手GKのキックを跳ね返すと、田中が左の友松へ展開する。そして、友松がクロスを上げ切ると、江口が左足ダイレクトで決めて2-0。ホームサポーターの前で喜びを爆発させた。FC東京はこのプレーで足を攣らせた江口をFW尾谷ディヴァインチネドゥ(3年)へスイッチ。青森山田も杉山、井上をMF麓莱凛(3年)とMF藤原栄之郎(3年)へ交代した。
後半17分、FC東京U-18のFW江口海渡が左足で追加点
青森山田は24分に1点を返す。セットプレーの流れからGK松田が前線へフィード。これを大場が頭でPAへ落とすと、桑原がドライブ気味の右足シュートでGK頭上を破る。再び1点差。青森山田は敵陣でボールを奪い返す回数を増やし、小山田のクロスなどでゴールに迫った。
青森山田は後半24分、FW桑原唯斗の右足シュートで1点差に迫る
青森山田は33分に小山田をFW深瀬幹太(3年)へ、39分には桑原をCB島津亮太(3年)と入れ替え、大場を前線へ上げた。FC東京も35分に鈴木をCB松野泰知(2年)へ交代。青森山田が前線、ハイサイドへ徹底してロングボールを入れてきていたが、FC東京は佐々木や高橋が空中戦で奮闘し、田邊や二階堂がセカンドボールを回収し続ける。そして、尾谷を起点とした速攻にチャレンジ。耐えるべき時間帯で耐えることに集中しながら、最後までゴールも目指し続けていた。 青森山田は42分、左CKの流れから長谷川が右足を振り抜くも、わずかに枠外。また、要所でミスも出てしまい、GK渡邊やDF陣を中心にゴール前でタフに戦うFC東京を飲み込むことができなかった。青森山田は優勢に試合を進める時間帯も多かったが、正木昌宣監督は2失点したこと、セットプレーで圧力を掛けながら取り切れなかったことを指摘。「本来、ウチが唯一プレミアで勝負できる2つのポイントが対応されてしまった時に、それを越すだけのパワーが足りていない」と引き締めていた。 また、足を攣らせるまで走っていたFC東京に走ること、競り合うこと、声を出すことも劣っていたことを選手たちに伝え、青森山田がベースとしてやるべきことを求めていた。一方、白星への執念でも上回ったFC東京の選手たちは試合後、素直に喜びを表現。目標達成のため、また次節以降へ向けても大きな1勝となった。
相手の反撃を凌いだFC東京U-18の選手たちが勝利を喜ぶ
注目CB佐々木は競り合いの勝率で圧倒できなかったことを悔しがっていたが、「開幕戦は絶対落とす訳にはいかないんで、そこは全員気合入って行けたんじゃないかなって思います。今年から走りが始まって、やっぱ高体連のチームは走れるチームが多いっていうのがあるので、そこはJクラブですけど、そこでも負けちゃいけないと思っているんで、走っている量については自信持って自分たちの方が走ったなっていうのは言えると思います」と頷いた。 また、佐藤監督も「去年、(2敗した)彼ら(青森山田)の強みっていうのは本当に痛いほど……自分も監督1年目で、こういうチームに本当に勝ちたいなって思わせるチームだったので、自分自身もモチベーションは非常に高かったです」と振り返り、「こういうフィジカルの強いとか、あとゲームコントロールに長けた相手に凌ぐところと行くところの部分が出たのは良かったと思います。あと、選手が考えて判断したっていうのが一番良かったです」と微笑んだ。 大事な開幕戦を制したが、シーズンはまだまだ始まったばかりだ。佐々木は「去年、最初ちょっと落とす試合が多くて、自ずと下(の順位)で戦うことになっちゃったので、今年ははっきり上で優勝争いを目標にして、EASTを制覇できるチーム、そして最後のファイナルを勝って、日本で一番強いチームにしないといけないと思っています」とコメント。佐藤監督が「深く心の部分に入らないと両者の意図は繋がらない」というように、時に、選手同士で言い合いすることもありながら、FC東京は本気でチームを作ってきている。目標を実現するための取り組みを続け、白星を重ねて日本一に一歩一歩近づく。 (取材・文 吉田太郎) ●高円宮杯プレミアリーグ2025特集