「日本型リベラル」政党の終焉 蜘蛛の糸だった選挙協力 大手町の片隅から 乾正人

中道改革連合の野田佳彦共同代表(左)と斉藤鉄夫共同代表 =1月25日、東京・永田町(梶山裕生撮影)

「火事は最初の5分、選挙は最後の5分」。昭和から平成にかけて活躍し、総理大臣の椅子まであと一歩に迫りながら病魔に倒れたミッチーこと元外相・渡辺美智雄は、選挙ともなると派閥の子分たちをこう叱咤激励していた。

「一歩リード」の落とし穴

世論調査を基にした新聞の情勢記事で、「○○、一歩リード」と書かれて陣営がゆるみ、最終盤で逆転された候補者は1人や2人ではない。

当時も今も選挙に関する世論調査は、カネと人手がかかっている割に外れることがままある。というのも回答した時点から実際に投票するまで何日かあり、それまでに心変わりする有権者も結構いるからである。

「一歩リード」という見出しが躍ると、世論調査の数字上はかなり差がついている場合がほとんど。リードした側はどうしても気が緩み、判官びいきで負けている候補に投票する有権者も少なくない。

ちなみに、「互角」「横一線」と表現している場合でも、先に名前が書かれている方が、わずかながらリードしている、というのが新聞各社が守っている暗黙のルールだ。

今回の衆院選では、各紙とも「自民圧勝」を予想しているが、波乱要素もある。最終盤になって公明党の支持母体である創価学会がフル回転し、多くの選挙区で中道改革連合が追い上げている。ただし、高市・自民党の「勝利」は動かないだろう。

前回の小欄で予測したように、立憲民主党と公明党が合体した新党の得票は、1+1=2にならないのが確実な情勢となったからだ。

「蜘蛛の糸」だった選挙協力

なによりも立民を緩やかに支持していたリベラル系無党派層にソッポを向かれたのが痛い。

新党結成を急ぐあまり、立民の十八番だった「辺野古への米軍普天間飛行場移設反対」も「原発ゼロ」もあっさり引っ込めてしまったのが大きな要因だ。辺野古問題に至っては、沖縄のリベラル派が強く反発、共同代表の野田佳彦が「選挙が終わった後に結論を出したい」と取り繕ったが、後の祭り。

「当選するためには主義主張まで捨てるのか」と支持者は落胆し、過去の衆院選で、自民候補を圧倒してきたあの大物も大苦戦している。

選挙後、中道の構成は、激変必至だ。公明出身者が、衆院解散前を上回る28人も当選確実なのに対し、立民出身の前議員は、選挙区でかなり苦戦している。しかも比例代表で公明出身者を優遇したため、選挙区で敗れた場合、復活当選できる候補者は、前回より大幅に減る。

何やら芥川龍之介の「蜘蛛(くも)の糸」のような展開になってきた。

血の池地獄で苦しんでいたカンダタは、お釈迦様が垂らした蜘蛛の糸を頼って極楽目指して必死に登り始めるが、無数の罪人たちもしがみつき、糸は切れてしまった。新党を全面支援する創価学会が垂らした蜘蛛の糸(票)だけでは、極楽(当選圏)に行けないようなのである。

選挙後、新党の中核は、公明出身者が握る可能性が高い。共同代表の斉藤鉄夫は、「日本型リベラル」政党だった立民に引導を渡した功労者として長く記憶されよう。

さらば「日本型リベラル」。万感の思いを込めて。=敬称略(コラムニスト)

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