求む、投資の新トリセツ-第2次トランプ政権は関税砲除き予測不能
先週の市場はトランプ米大統領が得意とする関税砲に右往左往させられた。株式ポートフォリオの運用において、第1次トランプ政権の取扱説明書は今回通用しない。トランプ氏は大胆な関税措置で貿易相手国を脅しておいて、すぐにそれを遅らせたり撤回したりする。前回と変わらないのはその戦略だけで、後はまったく予測ができない。
提案されている関税は第1次トランプ政権よりも幅広い品目に影響する。何よりも投資家を巡るパラダイムは一変している。ボラティリティーは上昇。S&P500種株価指数は2023年と24年の2年間で53%上げ、絶好調の強気相場の中でバリュエーションを押し上げている。17年を振り返るとS&P500種は過去2年間の上昇率がわずか8.7%と、今よりはるかに大幅な上昇余地があった。
ネッド・デービス・リサーチの世界投資戦略責任者ティム・ヘイズ氏は、リスク資産においてはディフェンシブなアプローチを指摘する。「関税が貿易戦争につながり、債券利回りの上昇とマクロ環境の悪化が起こり」、ハイテクセクターや米市場全般からの「脱出」が促されれば、株式配分の縮小が投資モデルで示唆される可能性が高くなるという。
インフレ率の高止まりや金利上昇、連邦財政赤字の大幅拡大など、8年前からマクロ環境も変わった。景気が巡航速度で推移したとしても、株式の環境は著しく不安定だ。
ストラテガス・セキュリティーズの上場投資信託(ETF)&テクニカルストラテジスト、トッド・ソーン氏は「現状では強気相場3年目への期待が本当に高い。2017年当時は弱気相場を抜け出そうとする段階にあった」と指摘。「何らかのぜい弱性が出現すれば、どんな材料で市場がひっくり返ってもおかしくない」と述べた。
JPモルガン・チェースの世界株式戦略責任者ミスラフ・マテイカ氏によれば、株式先物に対する資産運用会社のエクスポージャーは40パーセンタイルを上回っている。17年当時は10パーセンタイルに満たなかった。つまり第1次トランプ政権当時よりも、今の投資家には向こう数カ月に株式を購入する余力が少ないことを意味する。
Metric 2017 2025 Average forward P/E ratio for S&P 500 17 22 S&P 500 previous two-year gains/losses 8.7% 53% S&P 500 earnings growth y/y, previous year -0.8% 6.9% VIX Index aka Wall Street’s ‘Fear Gauge’ 11 16 GDP growth, previous year 1.8% 2.8% 10-year US Treasury yield 2.5% 4.48% Inflation, previous year 2.1% 2.9% Fed Funds Rate 0.5%-0.75% 4.25%-4.5%景気循環の調整を加えた株価収益率(PER)であるCAPEレシオは、1月下旬の時点で38付近と「極端に高い水準」だとクリエーティブ・プランニングの市場戦略責任者、チャーリー・ビレロ氏は指摘。
「向こう10年の株式リターンは平均を下回ることが、過去の例から示唆される」と述べた。
10-12月(第4四半期)決算からは、不安にならざるを得ないトレンドが見受けられる。業績見通しを上回った企業の数は減少しており、アナリストとの電話会議では関税が話題の中心となった。影響はすでに今年の業績見通しに出始めている。
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サーチュイティのスコット・ウェルチ最高投資責任者(CIO)のように、株式市場のニッチな分野に目を向ける投資家もいる。中型株への投資配分を増やしている同氏は「大型ハイテク株は強い業績とキャッシュフローがあるため、押されても戻してきた。しかし何事も永遠に続かない」と述べた。
今の投資家にとって最大の試練は、トランプ政権の関税と貿易政策がどの方向に行くのか、政治の風向きを判断することだ。視界不良のためにあらゆる事象をレーダーで捉えようとしながらも、まだ行動には移さないウォール街のプロは多い。
「政治に集中し過ぎないよう、投資家には常に助言している。株価に即影響することはまれだからだ」とファンドストラットのテクニカル戦略責任者マーク・ニュートン氏は話す。「どんな年にも投資家が心配しなくてはならない要素が一定ある。しかし株式市場全般は底堅さを見せてきた」と述べた。
原題:Trump’s Second Term Requires a New Playbook for Equity Investors(抜粋)