奈良県吉野町にて2時間だけオープンする『ラーメン河』に行ってみた
奈良県の吉野町菜摘というところに、2時間だけオープンするラーメン店がある。お世辞にもアクセスが良いとは言えないが、そこにしかない味を求めて連日、開店前から長蛇の列ができる。
メニューは「ラーメン(税込1000円)」と「ラーメンまぐろ丼セット(2000円)」のみ。そんな『ラーメン河』にお邪魔してみた。
・開店1時間前に到着
大阪市内や奈良市内から車で約1時間半、国道169号線から小道に入った吉野川のほとりに『ラーメン河』はぽつんと建っている。
奈良県で暮らす記者にとっては吉野の入口くらいな感じの見慣れた風景だが、都会から来る人は周囲の山や道の細さに少し驚くかもしれない。
開店は午前10時で、正午まで。1日の提供数が決まっているので、閉店前に売り切れることもざらだ。遅くとも開店1時間前には行っておいた方がいいという話を、ラーメン河経験者に聞いていたのでその心づもりで家を出た。
ジムニーを走らせ、店に着いたのは午前8時55分。すでに駐車場は、県内外のナンバーを付けた車やバイクでそこそこ埋まっていた。空いているところを探し、急ぎ店頭の順番待ちの表に名前を書き込みに向かう。
どうやら12番目のよう。もう少し早く家を出た方が良かったかと後悔しつつ、しかし無事にラーメンにありつけそうでホッと一息だ。
まだ1時間ほど余裕があったので、吉野川の様子を眺めたり木陰で鳥たちの声を聞くなどして過ごした。川では鮎釣りがはじまっている模様。
その日はとても暑い日だったからか、時折厨房から店主が出て来ては待っている人たちの体調などを気遣ってくれた。店主は元寿司職人の80代男性。きびきびと仕事をこなしていく姿に圧倒される。
陽が完全に昇り、本格的に暑くなってきたところでいよいよオープンだ。この段階で、すでに当日分のラーメンは売り切れ。まぐろ丼セットに至っては、9時半には完売となっていた。
名前を呼ばれた人から順番に、吉野川を眼下に望む特等席に着く。1人ひとテーブルで、味に集中できそう。美味しそうに食べ終えては颯爽(さっそう)と帰っていくお客さんを眺めていると午前11時頃、ついに順番が回って来た。
「ラーメンまぐろ丼セット」を頼み、席に着く。
・とにかく美味しい
しばらくすると、店主がお盆に乗せて運んできてくれた。そこには奇麗に透き通ったスープのラーメンが。塩ラーメンである。なかなかほかでは見ない厚みの豚肉とメンマ、そして煮卵とネギが乗った一杯だ。
お隣のまぐろ丼も、とっても美味しそう。ごろっとしたサイコロ状のまぐろで、わさびが和えられているようだ。今か今かと待っていたこともあって、思い切りお腹が鳴ってしまった。
記事のための写真を撮るのもそこそこに、さっそくいただく。まずはラーメン、スープは見たまんまの、とてもすっきりとした味わい。極限まで雑味を取り除いたかのような、洗練された滋味深いスープである。
トッピングの豚は先に書いたように、非常に肉厚。豚の脂がじわっとスープに染み出しているところもまた、旨味の秘密であるように感じた。
また、その豚が美味しいのだ。こてこてに味付けされているわけでもなく、塩味がほのかにするくらいのシンプルさ。故に豚の旨味がしっかり感じられて良い。
肉厚メンマも歯ごたえがありながら、程よい柔らかさがあって、噛めば噛むほど美味しい。鮮やかなオレンジ色の卵にも、こだわりを感じる。一体、この一杯にどれだけの手間暇がかけられているのだろうか。
衝撃のラーメンに続き、まぐろ丼にも手を伸ばす。すると、これまたびっくり。さすがは元寿司職人、まずモッチリとしたマグロが美味しい。
全体にわさびが絡めてあるが、まぐろの脂身のおかげか、ツンとすることもなく程よいアクセントになっている。そして米は酢飯なのだが、酢の加減が絶妙だ。まぐろとの相性は言うまでもない。
量が結構多いので食べられるかなと思っていたが、ラーメンと丼と交互に食べ進めていたところ、あっという間に皿が空になってしまった。
まさか吉野にて、こんなにも美味しいラーメンとまぐろ丼を食べられるだなんて。時間をかけて、そして朝早く起きて来る価値は有り余るほどある。
この美味しさを一人でも多くの人が体験できるよう、長くその場所で『ラーメン河』が提供されることを願わずにはいられない。記者も近い内に再び足を運ぼうと心に決めながら、帰路に就いた。
・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 ラーメン河 住所 奈良県吉野郡吉野町菜摘470 時間 10:00~12:00 ※売り切れ次第終了 定休日 水曜日、木曜日(夏季休業・冬季休業あり)
執筆:K.Masami Photo:Rocketnews24.
▼吉野川を眺めながらいただける、最高のロケーション
▼ユーモアがあって気を使ってくださって、素敵な店主さんでした
▼また食べに行きます!