郵便配達員の小さな親切に称賛の声、防犯カメラに洗濯物取り込む姿映る 豪

SNS上の評判を受けて対面した郵便配達員のG・シンさん(左)とV・ワンデルさん/Courtesy Verrity Wandel

豪ブリスベン(CNN) 一人の郵便配達員が、並外れた行動に出た「ヒーロー」として称賛を浴びている。もっともその素晴らしさを十分に理解できるのは、ベッドシーツを外で天日干しする人たちだけかもしれないが。

郵便配達員のグルプリート・シンさんは今月14日、ブリスベン南郊ローガンにある住宅へ配達に訪れた。その姿を家の防犯カメラが捉えていた。

あまりプロ意識の高くない一部の配達員とは異なり、シンさんは荷物をドアに向かって放り投げるようなことはしない。防犯カメラに映ったシンさんは、庭の物干しロープからシーツを外し、屋根の下へ運んでいる。

ちょうど雨が降り始めていた頃だった。

雨が降り始める中、配達先の家の洗濯物を取り込むシンさん/Verrity Wandel

家主のベリティ・ワンデルさんは驚きのあまり、今週、この動画をソーシャルメディアに投稿。「これは100万回に1回の出来事。帰宅したら洗濯物がびしょ濡れになっていると思っていたのに、そうではなかった」と綴(つづ)った。

ソーシャルメディアでは配達への不満を訴える苦情が散見されるが、シンさんのこの心遣いはネット上で瞬く間に拡散した。インドのメディアもこれを取り上げ、あるメディアはシンさんを「洗濯ヒーロー」と呼んだ。

オンラインでの知名度が上がったことで、シンさんとワンデルさんはオーストラリアの朝のテレビ番組にも出演。洗濯物を取り込んだ理由を聞かれると、注目を浴びていることに心底戸惑っている様子のシンさんは、「できるかどうか」迷ったものの、結局やってみたと答えた。かかった時間は「1分」だという。

ブリスベンのシーク教徒コミュニティーの一員であるシンさんは、地元の寺院ではお馴染みの顔であり、シーク教の信仰に基づいた奉仕活動を行うことで知られている。コミュニティーの一人がCNNに語った。

「この行動を見た時、彼が宣伝のためなどではなく、ただ彼らしく振る舞っているのだと分かった」と、コミュニティーの一人は振り返った。

あるラジオパーソナリティーはワンデルさんについて、国営企業オーストラリア郵政公社の巧妙なマーケティング戦略の一環だと示唆したが、本人はこれを否定した。

営利事業として運営されているオーストラリア郵政公社は近年、郵便物の取扱量の減少と配送業者との競争により、赤字に苦しんでいる。

配達ドライバーのシンさんは、契約社員として4年間働いている。オーストラリア郵政公社はシンさんに関する情報提供の問い合わせが殺到していると述べた。同社の広報担当者はシンさんについて「できる限り顧客の力になろうとしている」と説明した。

ワンデルさんの最初の投稿には、シンさんを称賛する数千件のコメントが寄せられたが、一連の中傷的なコメントを受け、ワンデルさんはフォローアップ動画を投稿した。

動画の中でワンデルさんは「世界はもっと優しくなるべき」と訴え、「もし完全に無私無欲の行為ができる機会があるなら、とにかくそうしてみてほしい。頭で考える必要はない。誰かに挨拶(あいさつ)をし、微笑みかけよう。それで世の中は変わる」と語った。

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