放置すればコンテンツが氾濫する? GoogleのAI動画生成ツール「Veo 3」

Image: Min Choi via X

もはや人間が見分ける方法はないかも。

日々進化する生成AI。中でもAIが生成する動画は、以前からそのすごさが語られてきましたが、今回Google I/O(グーグルアイオー /年次開発者会議)で発表されたVeo 3は、特に注目すべき内容が含まれていました。

コンテンツの洪水を巻き起こすかも

Google I/Oで発表されたのは、YouTubeで思わずスワイプしてしまうような動画を、Veo 3がかなり高い水準で作成しているというものでした。

人間が生成AI製の動画と判断できないレベルで作り出しています。YouTubeでよく見るiPhoneの開封動画…

You can barely tell this iPhone unboxing isn't real pic.twitter.com/vfZ2lUoliZ

— Matt Shumer (@mattshumer_) May 21, 2025

たいていの人は、これがAIによって作られた動画か、あるいは人間が作ったのかどうかなんて気づくことができません。

なぜなら、それは考えるよりも先にタイムラインをスクロールしてしまうから。タイムラインにそんな動画が溶け込んでいき、開封動画に飽きたら、次は街頭インタビュー風の動画も用意されています。

Google Veo 3 realism just broke the Internet yesterday.This is 100% AI10 wild examples:1. Street interview that never happened pic.twitter.com/qdxZVhOO3G

— Min Choi (@minchoi) May 22, 2025

ネットミームを傍目に、テクノロジーのシンギュラリティ(技術的特異点)が一気に人々の話題をかっさらう日が、もう目の前まで来ているのです。

完璧ではないが説得力はある

Uhhh... I don't think Veo 3 is supposed to be generating Fortnite gameplay pic.twitter.com/bWKruQ5Nox

— Matt Shumer (@mattshumer_) May 21, 2025

さらにTwitch(ツイッチ:ゲーム配信に特化したプラットフォーム)風コンテンツでは、『フォートナイト』のような配信映像でプレイしている様子が完全に再現されています。

ここで注意してもらいたいのが、これは本物の『フォートナイト』ではなく、「『フォートナイト』っぽいもの」をAIが描いているということです。

つまり架空のゲーム配信ということであり、「シミュレーションのシミュレーション」を見せられています。何だか想像するだけで頭が痛くなりそうです。

だからといって別に大げさに騒ぎたいわけではありません。

大局的に見れば、生成AIによるYouTube、Twitch、TikTok(ティックトック)に存在する中身のないコンテンツは誰かを傷つけるわけではありません。ただ、それが生成AIが描く未来の姿だとすれば、ちょっと寒気がします。

情報が氾濫する前の対策を

余白を埋めるコンテンツは果たしてこれ以上必要なんでしょうか?

AIがこの領域に入ってこなくとも、SNSの大部分はすでにジャンクなコンテンツです。

だからこそ、この生成動画の大量普及の末路はどうなるのかを考えずにはいられません。もしかしたら、私が間違っていて、Flow や Googleの「AI映画製作ツール」などのビデオジェネレーターが、本物のクリエイターにとって画期的な製品になるかもしれません。しかし、現状のAIの姿には疑問を抱かざるを得ません。

少なくとも、生成動画が主流になるのであれば何らかの安全対策は必要ではないでしょうか。

AIが生成するコンテンツが無害だとしても、「かなり本物っぽく見える動画」を生成する能力は軽視すべきではありません。それは誤った情報の発信や、プロパガンダに使われる可能性が大いにあるわけですから。

もしそのリスクを緩和する手段が、「Veo 3で作られた動画に透かし(ウォーターマーク)を入れる」ことだとすれば、それは始めの一歩になるはずです。

Veo 3 によるコンテンツの爆発的な増加は止めることができない以上、私たちはこの状況に少しずつ向き合っていくしかありません。生成AIによるコンテンツ透かし(SynthID)をGoogleは開発中と発表しています。

これは今後のためにも絶対入れるべきではないかと私は思っています。本当に情報は氾濫してしまうので。

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