米政府、故エプスティーン元被告の資料公開を裁判所に申請 トランプ氏はWSJを提訴

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画像説明, トランプ氏(右)とマードック氏(2016年6月、英スコットランド・アバディーンのトランプ・インターナショナル・ゴルフ・リンクス)

米司法省は18日、性犯罪者として登録されていた資産家ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)について、裁判資料の公開を裁判所に請求した。元被告の「顧客リスト」公開について二転三転してきたトランプ政権に対して、ドナルド・トランプ大統領の熱心な支持層が激しく反発し、トランプ氏が支持者を批判するという展開になっている。トランプ氏は同日、元被告と親しかったことをうかがわせる米紙の報道をめぐり、同紙と親会社を提訴。訴えた相手には、最近まで親しかったメディア王ルーパート・マードック氏が含まれる。

司法省は、元被告が起訴された2019年の性的人身売買事件について、大陪審への証言記録の公開を求めている。大陪審への証言は通常、法的に保護され公開されない。

トランプ大統領は前日の17日、パム・ボンディ司法長官に対し、エプスティーン元被告の大陪審証言に関する文書の公開を請求するよう命じていた。これを受けて司法省は事件を審理したニューヨークの裁判所に正式な申し立てを行い、14歳の少女を含む多数の少女を元被告が人身売買したとされる事件の資料公開は「公益に資する」と主張した。司法省はまた、児童の性的人身売買で元被告と共謀した罪で有罪判決を受けたギレイン・マクスウェル受刑者の事件についても、資料の公開を求めている。

大陪審とは、一般市民から選ばれた陪審員で構成され、犯罪の起訴に十分な証拠があるかを審査する。情報提供者の安全を守るため、身元情報などを非公開にしたまま証言を聞くこともある。大陪審が検討する資料は通常非公開だが、非公開にする法的保護の利益より、公開することによる公共の利益が大きいと裁判官が判断した場合は、公開が認められる。

ただし、司法省が今回請求した資料がいつ公開されるのか、あるいはそもそも公開されるかどうかは不明。トランプ支持者たちが求める詳細が含まれているかどうかも、わからない。

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画像説明, 今年2月にホワイトハウスの大統領執務室でトランプ氏と同席したマードック氏(右から2人目)。マードック氏の隣はオラクル創業者のラリー・エリソン氏(2023年2月撮影)

エプスティーン元被告については、トランプ氏とかつて親密だったことをうかがわせる米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道をめぐり、トランプ氏が18日、同紙の親会社ダウ・ジョーンズ、ニューズ・コーポレーションと、同社を所有するマードック氏、記者2人を提訴した。マードック氏は保守系メディアを米英などで多数持つメディア王で、トランプ氏とマードック氏は最近まで親しい関係にあったことが知られている。

ウォール・ストリート・ジャーナルは17日、トランプ氏が2003年にエプスティーン元被告に「下品な」私信を送ったと報じた。

元被告の50歳の誕生日に送ったと同紙が報じたその私信について、トランプ氏は「偽物だ」として、同紙による名誉毀損を主張。100億ドル(約1兆4800億円)の損害賠償を請求した。

エプスティーン元被告は2008年に、未成年女性への性的虐待罪で有罪となり、ニューヨーク州の性犯罪者リストに登録された。

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画像説明, (左から)2000年2月に一緒に撮影されたトランプ氏、この5年後に結婚したメラニア現大統領夫人、故エプスティーン元被告、マクスウェル受刑者

この報道についてトランプ氏は自分のソーシャルメディアで、「あの無意味な『でたらめ新聞』のウォール・ストリート・ジャーナルに、あの虚偽で悪意にまみれて名誉毀損にあたる、あの偽のニュース『記事』を載せたことにかかわった全員に対して、最強の訴えを提出したばかりだ」と書いた。

「ルーパートと彼の『お友達』は、この裁判で何時間も供述したり証言したりすることになる。楽しみにしてくれているといいなと思う」とも、大統領は書いた。

トランプ氏によると、この記事を掲載すれば訴えると、事前にウォール・ストリート・ジャーナルとマードック氏に警告していたという。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、トランプ氏の名前が書かれた2003年の手紙には、「太いマーカーで手書きされたように見える裸の女性の輪郭の中に、タイプされた数行の文章」が含まれていたという。

同紙記事によると、手紙はトランプ氏とエプスティーン元被告の架空の会話形式で書かれたもので、「謎は年を取らない」、「友人とは素晴らしいものだ。誕生日おめでとう——毎日が新たな素晴らしい秘密でありますように」などと書かれていたという。

トランプ氏とマードック氏は何十年にもわたるつきあいがあり、時には親しく、時には対立してきた。13日には米ニュージャージー州で行われたFIFAクラブワールドカップ2025の決勝戦を、両氏は一緒に観戦していたばかり。

FOXニュースなどマードック氏が作り上げた保守派メディア帝国が、トランプ氏の大統領当選を大いに支援したという意見もある。

この一連の動きは、トランプ氏を熱心に支えてきた支持者たちが、エプスティーン元被告の事件について透明性と情報公開を激しく要求する渦中でのもの。

一部の支持者は、関連文書の公開方針を撤回したボンディ司法長官の辞任を求めている。ボンディ長官は今年2月、「エプスティーンの顧客リストは今、私の机の上にある」と述べていたが、今月7日になって「そのようなリストは存在しない」と発表した。

カリフォルニア州知事選に出馬している共和党のチャド・ビアンコ保安官はBBCに対し、トランプ政権によるエプスティーン文書への対応は「予想外だった」と述べ、「何百万人」もの支持者が失望していると話した。

「自分たちは、まるでばかな子ども扱いをされて、見下されているような気分だ」

連邦議会ではこの間、エプスティーン元被告について司法省が保有する多数の資料を公開させようとする動きが進んでいる。この手続きを通じて、これまで激しく対立してきた共和党のマージョリー・テイラー・グリーン議員と民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員が、同じように情報開示に賛成する事態となっている。

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