ジャガイモの起源が判明、なんとトマトの交雑がイモに必須だった
研究者たちは、ジャガイモの系統に関する新たな知見を利用して、より健康なジャガイモを作りたいと考えている。(PHOTOGRAPH BY MARK THIESSEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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私たちが愛してやまないジャガイモはトマトから生まれていたことが明らかになった。学術誌「セル」に7月31日付けで掲載された論文によると、現代のジャガイモの遺伝的起源を追跡した結果、900万〜800万年前に古代のトマトの仲間と別の植物との間で交雑が起きて誕生したことが分かったという。この交雑で、地下茎が肥大したデンプン質のイモ(塊茎)を作る遺伝子の組み合わせが生じたのだ。
おいしい副菜にもなるのはもちろん、ジャガイモは世界で3番目に重要な主食作物だ。だが実は、現在のジャガイモの遺伝子には、この植物をデリケートなものにするおそれのある変異が多く含まれている。
「私たちは、こうした変異を除去したいのです」と、論文の最終著者である中国、深圳(しんせん)農業ゲノム研究所のゲノム生物学者である黄三文(ホアン・サンウェン)氏は言う。
ジャガイモを育てるには、種子ではなく塊茎の一部(種芋)を地面に植えて、クローンを成長させる方法をとるのが一般的だ。氏は、今のジャガイモより悪い変異が少なく、種子からも栽培できる、新しい交雑ジャガイモを開発したいと考えている。
より多くのジャガイモを種子から栽培できるようになれば、科学者たちは悪い変異を除去できるだけでなく、クローン繁殖のジャガイモがかかりやすい病気のリスクも取り除くことができる。19世紀半ばにアイルランドを襲ったジャガイモ飢饉の再来は誰も望んでいないのだ。(参考記事:「ハロウィーンといえばカボチャ…ではなくあの野菜だった 」)
トマトとエトゥベロスム
ジャガイモはトマトやナスと同じナス属の植物だ。この研究に携わった英ロンドン自然史博物館の植物分類学者のサンドラ・ナップ氏は、「ナス属は顕花植物の属の1つで、1000種以上から構成されています」と説明する。(参考記事:「ナスのヘタに含まれる成分、子宮頸がん細胞を抑える効果を発見」)
ナップ氏はナス属の植物の関係に興味があったので、ジャガイモに興味がある黄氏とチームを組んだという。「私たちは、ここに非常に興味深いものがあることに気づきました」
ナップ氏らはジャガイモの系統(Petota、ペトタ)の6種と、他のナス属の植物21種の全ゲノム配列を使って系統樹を見直した。次に、さらに128のゲノムを比較して、ペトタと近縁種との系統関係を調べた。
その結果、ペトタはトマトとエトゥベロスム(Etuberosum)というナス属の別の系統との交雑によってできたことが分かった。「エトゥベロスムは非常に小さな系統で、3種しかありません」とナップ氏。
エトゥベロスムは、地上部はジャガイモによく似ているが、トマトと同様、塊茎を作らない点でジャガイモとは異なっている。しかし、トマトとエトゥベロスムが交雑したとき、ペトタという系統が新たに形成され、塊茎を生み出したのだ。
イモの科学
古代のトマトもエトゥベロスムもおいしい塊茎を作ることができなかったのに、交雑によって生まれたペトタはなぜ塊茎を作ることができたのだろう?