歩道に残った「ネズミ形」の謎、真犯人がついに判明 米シカゴの観光名所、専門家が調査
シカゴの歩道に残った「ネズミ穴」。実際に穴にはまった動物の正体は?/E. Jason Wambsgans/Chicago Tribune/Alamy Stock Photo
(CNN) 米シカゴ市内の歩道にくっきりと残ったネズミのような動物の形。「シカゴのネズミ穴」として一躍有名になり、観光名所にもなったこの形を残した「真犯人」が、専門家の調査でついに判明した。
この歩道には、流し込まれたばかりのセメントに飛び込んだ動物の形がはっきり残っていた。しかしこれを残したのは、ネズミとは全く違う動物だった。
ネズミ穴がいつできたのかは不明だが、20~30年前には既に存在していたらしい。しかし2024年1月6日、市内在住のアーティスト、ウィンスロー・デュメイン氏が「シカゴのネズミ穴へ巡礼に行かなければならなかった」とXに書き込んで写真を投稿したことで、一躍脚光を浴びた。
ネズミ穴はたちまちシカゴの自撮り名所になり、硬貨などの供え物が置かれるようになった。ここで結婚の誓いを交わしたカップルまでいたらしい。しかし近隣住民からの苦情を受けてシカゴ交通局は24年4月、ネズミ形を撤去してセメントを入れ替えた。
それでも「あの形を作ったのは本当にネズミだったのか」という疑問は残り続けた。
そこで生態学に詳しいテネシー大学ノックスビル校のマイケル・グラナトスキー助教が調査に乗り出すことにした。
グラナトスキー氏のチームは、足跡の化石から動物の種類を特定する方法にならってネズミ穴を初めて科学的に解析。その結果を14日の生物学誌に発表した。
調査の結果、ネズミだった可能性はほぼ完全に排除された。真犯人として浮かび上がったのは、リスだった。
調査を始めた段階では、この形を残したのは市内でよく見かけるドブネズミだろうと思われていた。しかし歩道のこの部分が既に撤去されていたことから直接調べることはできなかった。
このため調査チームはネズミ穴を撮影した画像を使い、鼻先から尾までの長さ、頭の幅、尾の付け根、識別できる指と爪の長さなどを計測した。
その上で、ドブネズミ、ハツカネズミ、トウブハイイロリス、トウブシマリス、マスクラット、シロアシネズミ、キツネリス、アメリカモモンガの博物館標本を収集。それぞれ体の大きさなどを測定してネズミ穴と比較した。
その結果、前足と後ろ足の長さや指の長さなどから、候補はトウブハイイロリス、マスクラット、キツネリスの3種類に絞り込まれた。
「リスは樹上生活を送る動物なので、指の長さに特徴がある」とグラナトスキー氏は解説する。
ただ、ネズミ形の尾は細長いネズミの尾のように見える。これについて研究チームは、リスの尾のフワフワな毛でできた部分はほとんど痕跡が残らないためだろうと指摘する。
シカゴに生息しているのはマスクラットやキツネリスよりもトウブハイイロリスの方が多い。このため研究チームはネズミ穴を残したのがリスだった確率は98.6%、中でもトウブハイイロリスだった確率は50.67%と判定した。
歩道からコンクリートごと撤去されたネズミ穴については、市がいずれ一般展示する方針。リスは鳥に空から落とされたり木から落ちたりしてコンクリートの上に落下し、その後捕食動物に捕まったか、誰かが放したか、またはそのまま死んだと思われる。