【地球に接近する危険な小惑星を新発見と思ったら...】まさかの人工物だった(スペースチャンネル)
近年の観測技術の向上から、地球の近くまで接近する危険な小惑星を事前に検知する例(アポフィスや2024YR4)が増えてきています。
そんな中、2025年1月、ハーバード=スミソニアン天体物理学センターの小惑星センター(MPC)は、新しい小惑星「2018 CN41」を発見したと発表しました。月よりも地球に近い軌道を通る“要注意”の天体として登録され、天文学界が"一瞬だけ"ざわついた事件をご紹介します。
宇宙に漂う“赤いスポーツカー”
ファルコンヘビーロケットで打ち上げられたロードスター 出典:SpaceXしかしその登録からわずか17時間後、MPCは異例の訂正通知を発表。「2018 CN41」は小惑星ではなく、なんとイーロン・マスク氏の愛車テスラ・ロードスターだったのです。
問題のロードスターは、2018年2月にスペースXの大型ロケット「ファルコン・ヘビー」初打ち上げの試験ペイロードとして宇宙に放たれたもの。車内には宇宙服を着たマネキン「スターマン」が座っており、“宇宙を走る車”として世界中で話題を呼びました。
今回、それが再び地球近傍を通過した際、望遠鏡の観測データから小惑星と誤認されてしまったのです。
通常、人工物の軌道情報はある程度共有されていますが、深宇宙を漂う物体については透明性が低く、記録の更新も不十分。MPCのチェックシステムも今回はすり抜けてしまいました。
「最悪の場合、本当に探査機を送り込んで初めて“ただの宇宙ゴミ”だと気づく恐れもある」と、ハーバード大の天体物理学者ジョナサン・マクダウェル氏は警鐘を鳴らしています。
“がっかり”した発見者、それでも前向き
宇宙ゴミのイメージ 出典:スペースチャンネル(AI)地球低軌道ではアメリカ宇宙軍などが詳細に監視していますが、月より遠い「深宇宙」は規制や情報共有がほとんどなく、“無法地帯”に近い状況です。今回のように人工物が小惑星と取り違えられる事態は今後さらに増えるとみられ、科学者たちは国や企業に対して「深宇宙の飛行計画を公開すべき」と訴えています。
この誤認を最初に報告したのはトルコのアマチュア天文家。自身のソフトで観測データを解析し「新天体発見!」と喜んだ矢先、まさかの「中古車」認定に肩を落としました。
それでも本人は「残念だけど、MPCのデータ精度向上に貢献できたのは良かった」と前向き。現在も新たな小惑星探しに挑戦を続けています。
もし、みなさんが苦労の末に見つけた新天体が、人工物や宇宙ゴミだったらどのように思いますか?ぜひコメントお待ちしています。
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