「朝4時起き」は本当に生産的なのか?科学が示す早起きのメリット・デメリット(Forbes JAPAN)
アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)やヴォーグのアナ・ウィンター編集長など、各業界で成功している人は早起きで知られている。だが、毎日午前4時に起きることで実際に生産性は向上するのだろうか。調査によると、答えはそれほど単純ではないようだ。 早起きのメリットとデメリット、そしてパフォーマンスが最高のものとなり、仕事で成果を出せる睡眠スケジュールのコツをおさらいしよう。 ■早起きが生産性向上に貢献する仕組み 研究によると、早起きには下記のような利点がある。 1.積極性と問題解決能力の向上 米ハーバード大学の生物学者クリストフ・ランドラーによると、早起きの人には積極的である傾向がみられるという。問題を予測し、効率的に解決するのが得意で、これはビジネスの世界で役に立つ。朝型の人は指示を待つのではなく率先して行動することが多く、生産性が高い。そして、キャリアの成功につながるかもしれない起業家的な考え方をする。 2.メンタルヘルスの向上 カナダ・トロント大学の研究で、朝型の人は夜型の人よりも幸福度が高いことが示されている。研究によると、朝型の人の幸福感が強い傾向は、科学者が「社会的時差ボケ」と呼ぶものに起因している可能性があるという。夜型の場合、体内時計が午前9時〜午後5時という標準的な勤務時間と合わない。そのため、無理のない時間に目覚め、生産性向上というメリットを享受している朝型の人に比べて元気がなく、活力に欠ける傾向がある。 3.睡眠の質の向上 睡眠の質が悪いと、心臓病や高血圧、肥満、脳卒中のリスクが高まると言われている。複数の研究において、遅い就寝時間が多くの健康問題につながっていることが示唆されている。一方、早寝早起きでは睡眠パターンが一定になることが多い。規則正しい生活では体内時計が最適化され、睡眠の質を高めて適切な睡眠時間がとれるようになる。眠りの質が良いと認知機能や免疫反応などが改善され、生産性を高める。 ■早起きが生産性に及ぼす悪影響 午前4時に目覚ましをかける前に、早起きの潜在的なデメリットを考えてみよう。 1.ストレスホルモンの上昇 結局のところ、早起きはストレスになり得る。科学者によると早起きの人は遅く起きる人に比べて、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが高いという。慢性的に高いコルチゾール値は不安やうつ、心臓病など多くの心身の健康問題と関連している。 2.睡眠負債の危険性 もともと夜型の人が就寝時間を調整せず、無理に早起きすると、睡眠負債を生む可能性がある。睡眠負債とは、睡眠不足が慢性化している状態のことだ。Sleep Council(スリープ・カウンシル)元トップのリサ・アーティスは「忙しい現代社会では、睡眠時間を1時間減らせば効率が上がると考えがちだが、実際には逆効果になる可能性が高い」と警告する。科学者たちは一貫して、望ましい睡眠時間は成人で7〜9時間としている。アマゾン創業者のジェフ・ベゾスでさえ、8時間の睡眠を優先している。ベゾスいわく、8時間眠るとエネルギーがみなぎり、思考能力も向上するとのことだ。 3.体内時計とのミスマッチ 覚醒と睡眠に対する身体の自然な好みのことを指すクロノタイプは、遺伝の影響を受けている。誰もが、生物学的なクロノタイプを持っている。生まれつき朝型の人もいれば、夜型の人もいる。睡眠と覚醒のパターンを総合的にサポートすることで、生産性を高められる。サポートしなければ、情緒不安定や疲労、生産性の低下といった悪影響が出るかもしれない。