「AI振興」の陰で見落とされる“基礎科学”…韓国大統領選の盲点 [韓国記者コラム]

【06月03日 KOREA WAVE】韓国大統領選挙では、すべての候補者がこぞって人工知能(AI)の振興を掲げた。AIデータセンターの電源確保策にまで踏み込み、具体的な議論が進められた。 しかし、それを支える基礎科学の育成策についてはほとんど言及がなかった。昨年の研究開発(R&D)予算削減の影響を「回復する」といった程度にとどまり、根本的な議論はなされていない。 この状況に対し、ある物理学科の教授は5月、ソウル・江南で開かれた「科学・保健分野公約討論会」で強い懸念を表明した。与野党候補ともにAIや半導体といった戦略技術の育成を叫ぶが、基礎科学への理解度は極めて乏しいという。 教授は「AIを振興すると言うが、アルゴリズムを設計する人材を育てる数学・物理学科が次々と消えている現実を知っているのか」と問いかけ、「知識を創るために“使うべき金”としての科学と、金儲けにつながる技術を一緒にしている」と批判した。 これは単なる「自分の分野が冷遇されている」という利害関係者の不満ではない。科学技術の「基礎体力」を担う自然科学系人材が枯渇しつつあるなか、政治の側に解決する意思が見られないという深刻な警告だ。 2024年に断行された大幅なR&D予算削減は、基礎科学分野に甚大な打撃を与えた。基礎研究プロジェクトの廃止により、多くの若手研究者はキャリアの第一歩すら踏み出せなくなった。 一過性の問題にとどまらず、医学部偏重や少子化の影響も重なり、理工系(STEM)は複合的な危機に直面している。 華やかな戦略技術の公約は、国民に夢を与え、産業界の支持も得られるだろう。だが、その背後で見えない科学者たちにもまた希望が必要だ。 この点を見落とせば、将来いくら予算を投じてAIや量子技術のプロジェクトを立ち上げても、それを担う人材がいないという深刻な状況に陥りかねない。【news1 ユン・ジュヨン】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News

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